独立行政法人防災科学技術研究所(以下「研究所」という。)は、平成25年9月に、大空間建築物実験試験体の製作・設置等工事を一般競争契約により前川建設株式会社に113,400,000円で請け負わせている。
この工事は、学校施設における大空間建築物を対象として天井の脱落被害の軽減につながる技術や対策を提案するために、小中学校の体育館を想定した鉄骨造りの実験試験体を製作して加振実験を実施するための震動台に設置し、実験終了後に解体して撤去する工事を施行するものである。
研究所は、本件工事の予定価格について、公共建築工事積算基準(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)、市販の積算参考資料(以下「積算参考資料」という。)等に基づいて積算していた。このうち、実験試験体の製作に用いる鉄骨を現場で組み立てる現場建方費については、鉄骨の1t当たりの単価に使用数量を乗ずるなどして、直接工事費を96,136,000円と算定していた。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、研究所において、契約書、仕様書、予定価格の積算内訳書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、研究所は、鉄骨の現場建方費について、積算参考資料に基づいて、鉄骨の1t当たりの単価を64,800円とし、これに使用数量210tを乗じて13,608,000円と算定していた。しかし、研究所は、積算内訳書に単価を記載する際に積算参考資料の単価6,480円を誤って64,800円と転記するなどしたため、鉄骨の現場建方費12,117,600円が過大に積算されていた。
したがって、正しい鉄骨の1t当たりの単価を用いるなどして本件工事費を修正計算すると、積算過小となっていた鋼材費等を考慮しても、直接工事費は83,792,000円となり、これに共通費等を含めた工事費の総額は106,155,000円となることから、本件契約額113,400,000円はこれに比べて約720万円割高になっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究所において、予定価格の積算を適切に行うことの認識が欠けていたこと、予定価格の積算における審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。