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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第2節 団体別の検査結果|第31 独立行政法人国立印刷局|本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

不要財産となっている貸付土地について、国庫納付に向けた処分計画を策定し、具体的な手続に着手するよう改善させたもの


科目
賃貸資産
部局等
独立行政法人国立印刷局本局
処分計画が策定されていない貸付土地の概要
静岡市に貸し付けている土地362.07m2
上記に係る平成26年3月31日現在の帳簿価額
2451万円

1 保有資産の概要等

(1)保有資産の概要

独立行政法人国立印刷局(以下「国立印刷局」という。)は、従前は財務省の特別の機関として、印刷局特別会計によって運営されていたが、独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号)に基づき、平成15年4月に、通貨制度の安定に寄与することなどを目的として日本銀行券の製造、官報の編集、印刷等の事業を行う独立行政法人に移行した。

国立印刷局は、土地(事業用地、貸付土地等。帳簿価額(26年3月31日現在。以下同じ。)計1539億7127万余円)を保有しており、そのほとんどが独立行政法人に移行した際に業務を確実に実施するために必要な資産であるとして国から承継した資産である。

(2)保有資産の見直しと不要財産の処分

独立行政法人は、22年の独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)の改正により、中期目標期間の途中であっても、通則法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととなっているほか、通則法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとなっている。

そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人の保有する施設等について、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては、速やかに国庫に納付することや、各独立行政法人が、貸付資産も含めた幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどを掲げている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

国立印刷局は、上記のとおり、基本方針において、保有する施設等の必要性について厳しく検証すること、貸付資産を含めた幅広い資産を対象に自主的な見直しを不断に行うことなどが求められている。

本院は、合規性、有効性等の観点から、国立印刷局が国から承継し保有している貸付土地に不要財産と認められるものはないか、不要財産を速やかに国庫に納付しているかなどに着眼して、前記の保有している土地のうち貸付土地を対象として、国立印刷局本局及び静岡工場において、貸付土地に係る契約書等の関係書類及び貸付土地の現況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

国立印刷局は、15年4月に、静岡市駿河区国吉田に所在する土地922.69m2を国から承継して、震災時における防災用機材等の倉庫を建設するための用地として保有していた。

国立印刷局は、上記土地のうち560.62m2の土地については、更地で国から承継してそのまま保有していたが、17年度に静岡工場の敷地内に上記の倉庫用地を確保できることとなったことから19年4月に売却していた。そして、22年の通則法の改正に基づき、これを不要財産の譲渡とみなして、この売却金額相当額を23年1月に国庫に納付していた。

一方、前記土地922.69m2のうち残りの362.07m2の土地(帳簿価額2451万余円。以下「本件貸付土地」という。)については、13年11月に財務省印刷局が静岡市に対して児童クラブの建物の敷地として貸し付けていたものであり、国から承継した後においても国立印刷局は、15年8月から20年間の借地期間、年額80万余円(15年度は37万余円)の貸付料により引き続き貸し付けて利用させている。

しかし、国立印刷局は、本件貸付土地については、前記の売却した土地560.62m2と同様に不要財産に該当することから処分の必要性を認識し、22年4月に静岡市に対して購入計画の有無を打診するなどしていたが、その後も保有を続け、26年7月の会計実地検査時点においても、国庫納付に向けた処分計画を策定していなかった。

このように、国立印刷局において、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる本件貸付土地を保有していて、国庫納付に向けた処分計画を策定していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、国立印刷局において、本件貸付土地について速やかに国庫納付に向けた処分計画を策定することの必要性についての理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国立印刷局は、26年8月に、本件貸付土地について、国庫納付に向けた処分計画を策定し、同年9月に測量等の契約を締結して、国庫納付に向けた具体的な手続を開始する処置を講じた。