独立行政法人の運営の基本その他制度の基本となる共通の事項については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)において定められており、各独立行政法人の目的及び業務の範囲については、各法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)等において定められている。
そして、政府は、独立行政法人の業務を確実に実施させるために必要があると認めるときは、個別法で定めるところにより、各独立行政法人に出資することができることとなっており、独立行政法人は、業務を確実に実施するために必要な資産として、設立時等に国、特殊法人等から承継した現金預金(以下「預金等」という。)、土地等を政府等からの出資等に見合う資産として保有している。
独立行政法人の利益の処分及び損失の処理については、通則法第44条第1項の規定により、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額を、積立金として整理しなければならないこととなっている。そして、同条第2項の規定により、毎年度、損益計算において損失を生じたときは、上記の積立金を減額して整理して、なお不足があるときは、その不足額を、繰越欠損金として整理しなければならないこととなっている。
また、積立金の処分については、個別法により、中期目標期間の最終年度において上記積立金の整理を行った後、当該積立金の額から次の中期目標期間の業務の財源に充てるために主務大臣の承認を受けた額を繰り越すことができるとともに、繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫に納付しなければならないこととなっている。
独立行政法人は、平成22年の通則法の改正を受けて、中期目標期間の途中であっても、通則法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととなっており、通則法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとなっている。
そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、独立行政法人の保有する施設等について、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫に納付すること、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどを掲げている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
独立行政法人は、上記のとおり、基本方針において、保有する幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどが求められている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構及び独立行政法人国際観光振興機構が保有する資産のうち、不要財産と認定すべき資産がないかなどに着眼して、両独立行政法人の本部において、保有する資産を対象として、財務諸表等の関係書類、不要財産の認定等の状況について提出を求めた調書等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(以下、両独立行政法人の名称中、「独立行政法人」については、記載を省略した。)
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、政府からの出資に見合う固定資産を譲渡して得た収入や、譲渡した際に生じた固定資産売却損を計上した結果、積立金として整理されなかった資金等を、24年度末においても預金等として留保しているが、中期目標期間に係る中期計画において今後の使用計画が定められていないなど、業務の財源に充てることが想定されていない預金等が、1583万余円見受けられた。
国際観光振興機構は、設立された際に政府からの出資に見合う資産として承継した預金等を、24年度末においても預金等として保有しているが、中期目標期間に係る中期計画において今後の使用計画が定められていないなど、業務の財源に充てることが想定されていない預金等が、4億3918万余円見受けられた。
このように、両独立行政法人において業務の財源に充てることを想定していない預金等を保有していることは、将来にわたり当該独立行政法人の業務を確実に実施するために必要とは認められない財産を保有しているものと認められ、通則法の改正の趣旨及び基本方針にのっとっていない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、両独立行政法人において、通則法の改正の趣旨及び基本方針にのっとって資産の見直しを行い、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる財産を不要財産と認定することについての理解が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、25年10月に経済産業大臣に対して、また、国際観光振興機構は、26年3月に国土交通大臣に対して、前記のそれぞれの預金等について、不要財産と認定して国庫納付に係る認可申請書を提出して、国庫に納付することとなるよう処置を講じた。