独立行政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)は、平成21年7月以降、横浜事業所(25年3月31日以前は横浜研究所)の電子計算機等の電子機器等を設置するスペース(以下「サーバ室」という。)、研究スペース等を確保するために、公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団(25年3月31日以前は財団法人木原記念横浜生命科学振興財団。以下「賃貸人」という。)との間で不動産賃貸借契約を締結し、賃貸人が所有する横浜バイオ産業センター(以下「センター」という。)内に横浜事業所が専有して使用するスペース(以下「専有スペース」という。)計1,577.0m2を借り受けている。
上記の不動産賃貸借契約は、毎年度、同一内容で自動更新されており、賃料については、21年7月から25年3月までの間は本所(同年4月1日以降は本部)が、同年4月以降は横浜事業所が、毎月、支払っている。
研究所は、センターの設計が完了した20年1月に、賃貸人から電子機器、コンセント等を定格消費電力で使用した場合等の電源容量(以下「最大電源容量」という。)について、専有スペースに係る分として1,647.9kVAを割り当てられている。専有スペースの最大電源容量は、電灯、コンセント等を使用するための標準的な電源容量(以下「標準電源容量」という。)として割り当てられた576.5kVAと、標準電源容量とは別に、電子機器等を使用するために追加した電源容量(以下「追加電源容量」という。)として割り当てられた1,071.4kVAとの合計となっている。
そして、専有スペースに係る電気料金については、不動産賃貸借契約書によれば、賃料とは別に賃貸人が研究所に請求することとされており、研究所は、賃貸人によって算定された基本料金及び電力使用量に応じた電力量料金の合計額を専有スペースに係る電気料金として支払っている。
このうち、専有スペースに係る基本料金は、賃貸人において、次のとおり算定されている。
これによれば、21年7月から26年3月までの間のセンター全体の最大電源容量は、3,052.8kVAから3,060.6kVAとなっていて、センター全体の基本料金に対する専有スペースの基本料金の負担割合は53.8%から53.9%となっている。
前記の不動産賃貸借契約書等においては、最大電源容量が増減した場合の電気料金のうち基本料金の負担割合の見直しに関する協議等の手続が具体的に定められていない。
そして、研究所は、21年7月から26年3月までの間に、前記により算定された基本料金計2564万余円及び電力量料金計6717万余円の合計9282万余円を電気料金として賃貸人に支払っている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、研究所が負担する電気料金は適切に算定されているか、特に最大電源容量が増減した場合に基本料金の負担割合が適時適切に見直されているかなどに着眼して、上記の支払額計9282万余円を対象として、研究所本部及び横浜事業所において、契約書、請求書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
研究所は、20年1月に賃貸人から最大電源容量1,647.9kVAを割り当てられた後、横浜事業所内でサーバ室の一部をセミナー室として利用したい旨の要望があったことなどから、21年7月に不動産賃貸借契約を締結するまでの間に、サーバ室の面積を縮小する見直しを行っていた。そして、これによりサーバ室に設置する電子計算機等の電子機器等の数が減少したため、標準電源容量は変わらないものの、追加電源容量が1,071.4kVAから420.4kVAに低減することとなり、これに伴って、専有スペースの最大電源容量は1,647.9kVAから996.9kVAに低減していた。
そこで、21年7月から26年3月までの間の低減した専有スペースの最大電源容量996.9 kVAに基づいてセンター全体の基本料金に対する専有スペースの基本料金の負担割合を算出すると、53.8%から53.9%であったものが、41.4%から41.5%に低減することになる。
しかし、研究所は、追加電源容量が1,071.4kVAから420.4kVAに低減することにより生ずる余剰分については将来的に必要となる場合もあると考えていたこと、基本料金の負担割合の見直しに関する賃貸人との協議等の手続が具体的に定められていなかったことなどから、低減した専有スペースの最大電源容量に基づくことなく、基本料金について、20年1月に割り当てられた専有スペースの最大電源容量を基に算定された額を支払っていた。
このように、研究所において、専有スペースの最大電源容量が低減していたことにより、センター全体の最大電源容量に対する専有スペースの最大電源容量の割合も低減していて、余剰分が必要となっているわけではないのに、基本料金について、20年1月に割り当てられた専有スペースの最大電源容量を基に算定された額を支払っていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた電気料金の支払額)
上記の低減したセンター全体の最大電源容量に対する専有スペースの最大電源容量の割合に基づいて研究所が負担すべき電気料金を修正計算すると、前記の電気料金支払額計9282万余円(うち基本料金計2564万余円)は計8688万余円(うち基本料金計1971万余円)となり、支払額が計593万余円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、研究所において、次のことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、研究所は、26年9月に、専有スペースに係る電気料金の算定に当たり、センター全体の最大電源容量に対する専有スペースの最大電源容量の割合が増減した場合の基本料金の負担割合の見直しに関する協議等の手続について賃貸人との間で具体的に定め、当該手続に基づき協議等を行い、電気料金のうち基本料金について、同年10月分から最大電源容量の実態に即して算定された額を支払うこととする処置を講じた。