独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)に基づき、医療の提供、医療に関する調査及び研究等を行っており、平成25年度末現在で143病院を設置している。各病院は、患者の診療等に必要な診療材料及び業務全般に必要な事務用消耗品(以下、これらを合わせて「診療材料等」という。)を多数使用している。そして、一部の病院においては、業務の効率化を図ることなどを目的として、診療材料等の調達及び在庫管理等業務(以下、これらを合わせて「管理等業務」という。)の全部又は一部を、一般競争入札等を実施して締結した契約(以下「管理等業務契約」という。)により外部に委託している。
管理等業務を外部に委託している病院は、診療材料等を個々の販売業者から直接購入せずに、管理等業務契約の相手方から一元的に購入しているため、管理等業務を実施する上で必要となる人件費等の費用(以下「労務費相当分」という。)のほかに、診療材料等の購入費(以下「材料費等相当分」という。)を当該契約の相手方に支払うこととなる。
独立行政法人国立病院機構会計規程(平成16年規程第34号)によれば、機構は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合には、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないこととされている。また、機構は、これらの契約に関する事務の適正かつ効率的な運営を図ることを目的として、独立行政法人国立病院機構契約事務取扱細則(平成16年細則第6号)を定めており、これによれば、予定価格は契約する事項の総額について定めなければならないこととされている。ただし、一定期間継続して行う売買等の契約の場合においては、予定価格は単価によることができることとされている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、管理等業務契約に係る契約手続は適正に行われているかなどに着眼して、9病院(注1)における21年6月から25年3月までの間に締結した管理等業務契約計14契約(契約期間に24年度又は25年度を含む契約。24年4月から26年3月までの支払額計82億4214万余円)を対象として、契約書、仕様書、予定価格調書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
検査の対象とした9病院のうち4病院(注2)は、労務費相当分及び材料費等相当分を合わせた総額の予定価格を算定した上で、これにより競争に付して管理等業務契約を6契約締結していたが、6病院(注3)(このうち北海道医療センターは、締結した契約により契約手続が異なっていたため、上記の4病院と重複している。)は、次のとおり、契約する事項の一部については予定価格を算定していたものの、総額の予定価格を算定することなく競争に付して管理等業務契約を8契約締結していた。
すなわち、6病院は、管理等業務契約が診療材料等の調達業務と在庫管理等業務という複合的な契約内容となっており、材料費等相当分は、毎月、定額となっている労務費相当分とは異なり、購入した診療材料等の数量等を基に算定した額を支払うこととなっているため、予定価格については、材料費等相当分を含めずに労務費相当分のみを算定すれば足りると判断するなどして、これにより競争に付して契約を締結していた。その後、競争に付していない材料費等相当分については、当該契約の相手方と別途に協議を行い品目ごとの単価を決定していた。そして、8管理等業務契約の24年4月から26年3月までの支払額は、労務費相当分として計7691万余円、材料費等相当分として計55億4987万余円、合計56億2678万余円となっていたが、このうち競争に付すことなく協議して決定した単価により支払われていた材料費等相当分は計24億8279万余円となっていた。
しかし、前記のとおり、予定価格は契約する事項の総額について定めなければならないこととされており、6病院において締結した8管理等業務契約は、診療材料等の調達業務を含む契約内容となっていることから、診療材料等の品目ごとの単価を算定して、これらの単価に購入予定数量を乗じて材料費等相当分を算定するなどして、これと労務費相当分を合わせた総額の予定価格を算定した上で、これにより競争に付すべきであったと認められた。
このように、材料費等相当分の全部又は一部を含めずに予定価格を算定して、これにより競争に付して管理等業務契約を締結していた事態は、契約手続の適正性及び透明性が確保されておらず、競争による利益を十分に享受できないものとなっていて適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、6病院において、管理等業務契約の締結に当たり、契約手続の適正性及び透明性を確保することについての理解が十分でなかったこと、また、機構本部において、各病院における管理等業務契約の契約手続について、実態の把握及び指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、26年8月に各病院に対して通知を発して、今後、管理等業務契約を締結する場合には、労務費相当分のみならず材料費等相当分を合わせた総額により予定価格を算定した上で、これにより競争に付すよう周知徹底する処置を講じた。