独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、平成25年度末現在、1,711団地、約74万戸の賃貸住宅団地を管理している。そして、機構は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減に向けた取組の一環として、23年1月に「UR賃貸住宅における環境への取組みについて」を公表し、32年度までの10年間に、賃貸住宅団地内の廊下、階段等の共用部分の照明器具(以下「共用灯」という。)及び屋外灯計約100万台について、順次、従来の蛍光管を使用した照明器具からLED照明器具に交換(以下「LED化」という。)するとしている。
LED化に際して、機構本社は、23年6月に「電気設備工事特記仕様書(LED照明器具編)」を制定して支社等に通知している。これによれば、共用灯のLED照明器具には、使用可能時間の目安とされる定格寿命が40,000時間以上のものを使用することなどとされていて、これは、従来の共用灯に多く使用されている20W型の蛍光管の定格寿命が8,500時間程度とされているのに比べて大幅に長くなっている。
また、機構の支社等は、おおむね10年ごとに行っている照明器具の定期修繕工事において、照明器具全体を交換している。そして、賃貸住宅団地の建替工事や照明器具の定期修繕工事等の際に、上記の特記仕様書等に基づき、非常用の照明装置を除く共用灯について、LED化を行っている。
機構は、賃貸住宅団地の一般清掃等業務を、民間業者との間で一般清掃等業務請負契約(以下「清掃等契約」という。)を締結して実施している。
機構本社が定めて支社等に通知している清掃等契約に関する作業項目等の標準的な仕様(以下「標準仕様」という。)によれば、共用灯の不点灯時には、その都度蛍光管等を取り替えることとされている(以下、これを「管球交換」という。)。また、機構本社は、清掃等契約の予定価格の算定について、団地内一般清掃等業務積算基準(以下「積算基準」という。)を定めて支社等に通知している。
そして、支社等は、標準仕様等に基づき、民間業者との間で2年から5年の複数年にわたる清掃等契約を締結している。また、清掃等契約の予定価格の積算に当たり、管球交換の作業に係る費用については、積算基準等に基づき、管球交換の予定作業量に一定の単価を乗ずるなどして算定している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
機構は、賃貸住宅の建替工事や照明器具の定期修繕工事等に併せて順次LED化を行っており、LED照明器具の設置数は今後も増加することが見込まれる。
そこで、本院は、経済性等の観点から、賃貸住宅団地における清掃等契約の予定価格の積算等はLED化後における管球交換の作業量を適切に反映したものになっているかなどに着眼して、機構本社及び6支社等(注)において、24、25両年度における清掃等契約のうち、契約の締結前又は契約の履行期間中に共用灯のLED化が行われた174団地に係る154契約(契約金額計103億7601万余円)を対象に、契約書、仕様書等の関係書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、上記の154契約(予定価格の積算額計144億4983万余円)に係る管球交換の作業(これに係る積算額計1億9188万余円)について、次のような事態が見受けられた(ア及びイの事態には重複しているものがある。)。
しかし、前記のとおり、LED照明器具の定格寿命は40,000時間以上とされていて、仮に1日当たり10時間点灯したとしても使用時間は10年余りとなる。そして、機構は、おおむね10年ごとに行う照明器具の定期修繕工事等の際に照明器具全体を交換するとしていることなどから、清掃等契約においてLED照明器具について管球交換の作業を行う必要はなく、管球交換の作業量はLED化前に比べて減少すると認められた。現に、LED化が行われた賃貸住宅団地についてみると、清掃等契約においてLED照明器具の管球交換の作業は行われていなかった。
このように、清掃等契約を締結する前に共用灯のLED化が行われたのに管球交換の作業量の減少を考慮せずに予定価格を積算していた事態や、契約の履行期間中に管球交換の作業量が減少したのにこれを考慮せず契約に反映させていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(低減できた積算額)
前記の154契約について、LED化に伴う管球交換の作業量の減少を考慮して、照明器具の管球交換の作業に係る費用を修正計算すると計1億1467万余円となり、前記の積算額計1億9188万余円に比べて約7720万円低減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、機構本社において、支社等に対し、LED化された共用灯については管球交換の作業の必要がないことを周知していなかったこと、清掃等契約に際して共用灯のLED化に伴う管球交換の作業量の減少を考慮することについての指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、26年7月に支社等に対して通知を発して、賃貸住宅団地における清掃等契約が、共用灯のLED化に伴う管球交換の作業量の減少を反映した適切なものとなるよう、次のような処置を講じた。