独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人都市再生機構法(平成15年法律第100号)に基づき、その前身である都市基盤整備公団等から土地、建物、構築物、機械装置等を承継し、これらの資産について管理等を行っている。そして、機構は、賃貸住宅団地の維持管理を行うために、建物、構築物及び機械装置(以下、これらを「償却資産」という。)に対して修繕、改良等の保全工事を行い新たに資産を取得して、これらの償却資産について、減価償却等の会計処理を行っている。
独立行政法人の会計については、「独立行政法人会計基準」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。平成23年6月改訂)に従うこととなっており、また、独立行政法人会計基準に定められていない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計原則に従うこととなっている(以下、これらを合わせて「会計基準等」という。)。
機構は、会計基準等に基づく会計処理を行うために、独立行政法人都市再生機構会計規程(平成16年7月1日規程第4号)等(以下「会計規程等」という。)を定め、これに基づき会計処理を行うとともに、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)に基づき、毎年度、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成している。
独立行政法人における償却資産の耐用年数については、会計基準等において、各法人が自主的に決定することを基本としている。そして、機構は、会計規程等により、建物と設備等を一体として原則70年の耐用年数を適用して減価償却を行うこととしており、賃貸住宅団地において保全工事により取得した償却資産(以下「追加設備等」という。)については、当該賃貸住宅団地の既存建物の残存耐用年数を適用して減価償却を行うこととしている。
また、機構は、原則として、オンライン端末を利用した経理システム及び保全工事に係るシステム(以下、これらを合わせて「経理システム等」という。)により償却資産に係る会計処理を行っており、各支社等は、保全工事を実施した際に、経理システム等に追加設備等に係る情報を入力している。
各支社等は、追加設備等に係る情報の入力に当たって、当該保全工事の内容に応じた分類コードを経理システム等に入力することによって、会計規程等に定められた財産区分ごとに、既設の設備等の帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を除いた額。以下同じ。)に追加設備等の取得価額を加算することとしており、これにより、追加設備等については、当該賃貸住宅団地の既存建物の残存耐用年数に基づき減価償却が行われることとなる。
そして、平成16年7月の機構設立以降、25年3月までに保全工事により取得した追加設備等の取得価額は、約3300億円となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
機構は、上記のとおり、機構設立以降、保全工事の実施に伴い、多額の追加設備等を取得している。
そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、追加設備等の資産計上及び費用処理が会計規程等に基づき適切に行われているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、7支社等(注)の賃貸住宅団地における16年7月から25年3月までの追加設備等の取得価額約3300億円を対象として、機構本社及び7支社等において、資産台帳、工事発注登録書、経理システム等への入力データ等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、前記のとおり、会計規程等により、賃貸住宅団地において追加設備等を取得したときは、当該賃貸住宅団地の既存建物の残存耐用年数を適用して減価償却を行うこととしている。
しかし、機構設立以降の16年7月から25年3月までに7支社等が取得した追加設備等のうち5,169件(24年度末の帳簿価額218億3559万余円)については、追加設備等を取得した賃貸住宅団地に同一の分類コードの既設の設備等がなかったり、追加設備等に係る分類コードを誤って入力したりしたため、経理システム等において、既存の設備等の帳簿価額に追加設備等の取得価額が加算されておらず、これらの追加設備等については、耐用年数70年が適用されて減価償却が行われていた。そして、これらの追加設備等については、既存建物と一体として建物の残存耐用年数の期間内で維持管理されるものであることから、既存建物の残存耐用年数を適用した減価償却を行うべきであると認められる。
<事例>
九州支社は、福岡県に所在するA団地において、平成22年度に昇降機設備を設置する保全工事を行い、追加設備等の取得価額として3億1452万余円を計上していた。そして、同団地には、当該保全工事を行う前は昇降機設備がなかったことから、経理システム等において耐用年数70年が適用されて減価償却が行われていた。
しかし、同団地の建物等の残存耐用年数は29年であり、会計処理に当たっては、当該残存耐用年数を適用して減価償却を行うべきであった。
このように、追加設備等について、既存建物の残存耐用年数を適用せず減価償却を行っていたため、機構の24年度末の貸借対照表において、減価償却累計額が18億2904万余円過小に計上され、また、帳簿価額が同額過大に計上されている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、機構において、追加設備等に係る会計処理に当たり、経理システム等において、当該賃貸住宅団地に追加設備等と同一の分類コードの設備等がない場合における減価償却の取扱いを十分検討していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、賃貸住宅団地の追加設備等のうち、当該賃貸住宅団地の残存耐用年数を適用しないで減価償却が行われているものについて、減価償却累計額及び帳簿価額を修正するなどして、25年度の財務諸表に反映させるとともに、経理システム等の改修を行って、賃貸住宅団地の追加設備等の会計処理において、追加設備等と同一の分類コードがない場合でも当該賃貸住宅団地の残存耐用年数を超える減価償却期間を適用できないようにするなどの処置を講じた。