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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第56 独立行政法人住宅金融支援機構 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

有効に活用されていない証券化支援勘定における政府出資金の運用益を住宅ローン債権の金利の引下げ等に要する費用に充当するなどして補助金の交付申請額等に反映するとともに、今後発生する運用益について同様に取り扱うよう改善させたもの


科目
(証券化支援勘定)有価証券利息配当金
部局等
独立行政法人住宅金融支援機構本店
証券化支援勘定における政府出資金の概要
政策として実施する住宅ローン金利の引下げ等に要する費用をその運用益で賄うことを目的とする出資金及び事業を安定的に運営していくため通常予測される範囲を超える損失に備えることを目的とする出資金
証券化支援勘定におけるリスク対応出資金の額
3351億3757万円(平成25年度末現在)
上記に係る運用益のうち有効に活用されていない額
9465万円(平成24、25両年度)

1 制度の概要

(1)証券化支援勘定における政府出資金の概要

独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号)に基づき、民間金融機関から長期・固定金利の住宅ローン債権を買い取り、当該債権を信託銀行等に信託した上で、これを担保とした資産担保証券を発行するなどの事業(以下「証券化支援事業」という。)を実施しており、この証券化支援事業の経理について証券化支援勘定を設けて整理している。そして、国は、機構の証券化支援事業を円滑に実施させるために機構に出資を行っており、機構はこれを同勘定で経理している。

証券化支援勘定における政府出資金は、政策として実施する住宅ローン金利の引下げ等に要する費用(以下「金利引下げ費」という。)を、その運用益で賄うことを目的とする出資金(以下「運用益対応出資金」という。)と、事業を安定的に運営していくため、通常予測される範囲を超える損失に備えることを目的とする出資金(以下「リスク対応出資金」という。)の2種類から成っている。

このうち運用益対応出資金については、平成22年2月15日以降に買い取る住宅ローン債権の金利引下げ費は、運用益対応出資金により措置するのではなく、優良住宅整備促進事業等補助金(以下「補助金」という。)等により措置することに変更された。

また、機構は、リスク対応出資金について、通常予測される範囲を超える損失に備えるという本来の目的のほか、資金繰りに支障のない範囲で国債等の有価証券により運用している。

(2)リスク対応出資金の運用益の取扱い

本院は、機構の証券化支援勘定等における政府出資金について、その運用益で金利引下げ費を賄うという運用益対応出資金の役割が、リスク対応出資金においても果たせることなどを考慮して、出資金を適切な規模とするよう、23年10月に国土交通大臣及び独立行政法人住宅金融支援機構理事長に対して、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。

機構は、これを受けて、リスク対応出資金から生ずる運用益を金利引下げ費に充当して、これにより不要となった運用益対応出資金を国庫に返納するなどしている。そして、上記運用益対応出資金の国庫への返納に当たり、機構は、東日本大震災(23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害等をいう。)の影響により延滞が大幅に増加したり貸倒損失が多額に上ったりするなどの事態を考慮して、リスク対応出資金のうち108億円(以下「震災対策資金」という。)を、同大震災に伴う貸倒れが発生した場合の資金繰りに充てるために、震災対策資金から運用益は生ずることはないと見込んで国庫への返納額を算定していた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、有効性等の観点から、リスク対応出資金の運用益は適切に活用されているかなどに着眼して、証券化支援勘定におけるリスク対応出資金(25年度末現在額3351億3757万円)を対象として、国土交通本省及び機構本店において、その運用状況及び運用益の活用状況等について取引明細書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、機構は、震災対策資金については、東日本大震災に伴う貸倒れが発生した場合の資金繰りに充てることとしていたため、運用益が生ずることはないと見込んでいた。

しかし、実際には、東日本大震災の影響により延滞が大幅に増加したり貸倒損失が多額に上ったりするなどの事態は見受けられず、震災対策資金についても、24年度に3257万余円、25年度に6208万余円、計9465万余円の運用益が生じていた。そして、今後も同様に運用益が生ずると見込まれていたのに、機構は、これらを金利引下げ費に充当して、それにより不要となる運用益対応出資金を国庫に返納したり、補助金の交付申請額等に反映したりするなど有効に活用していなかった。

このように、震災対策資金の運用益が有効に活用されていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、震災対策資金の運用状況及びその取扱いに関して関係部門が十分に連携していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、前記のとおり、金利引下げ費は補助金により措置することに変更されたことを踏まえて、機構は、26年6月に震災対策資金の24、25両年度の運用益を25年度の金利引下げ費に充当して補助金の交付申請額等に反映する処置を講ずるとともに、今後発生する震災対策資金の運用益についても同様に取り扱うことについて、26年7月に文書を発して関係部門への周知徹底を図る処置を講じた。