首都高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、高速道路のトンネル内に換気装置等の各種設備を設置しており、高速道路の維持管理業務の一環として、これら設備の管理、運用を行っている。
そして、東京港トンネルを管理している東東京管理局は、大井受電所において、同トンネル内に設置されている換気装置等を稼働させるための電気の供給を受けるために、一般競争契約により、平成25年3月に、契約期間を2年間(25年4月から27年3月まで)とする電気需給契約を特定規模電気事業者である丸紅株式会社と締結しており、同契約に基づく電気料金の支払額は25年4月から26年7月までの間で計122,727,576円となっている。
上記の契約に当たり、会社が準用している東京電力株式会社の電気需給約款(特定規模需要(特別高圧)。平成24年9月1日)によれば、電気料金は基本料金と電力量料金等で構成されていて、このうち、基本料金については、契約電力に契約電力1kW当たりの基本料金単価を乗ずるなどして算定することとされている。そして、契約電力の設定に当たっては、1年間を通じての最大の負荷(以下「最大需要電力」という。)を基準とすることとされている。
東東京管理局は、25年3月の契約締結に当たって予定価格の積算等を含む契約手続の期間を考慮して、23年10月から24年9月までの1年間の最大需要電力1,208kWに5%の余裕を見込んだ1,269kWを契約電力として設定していた。そして、上記の契約電力と基本料金単価に基づくなどして算定された25年4月から26年7月までの間の各月の電気料金のうち基本料金は1,817,639円から1,877,561円となっており、その計は29,524,736円となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、電気料金が適切なものとなっているかなどに着眼して、大井受電所における電気需給契約を対象として、本社及び東東京管理局において契約書、設計書等の書類を基に、基本料金の内容や設備の運用方法を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
東東京管理局が契約電力の設定の基礎とした最大需要電力1,208kWは、23年10月4日夜から5日朝までにかけて東京港トンネル内において実施した年1回の防災設備の総合点検(以下「総合点検」という。)の際に、スプリンクラーの稼働によってぬれた路面を交通規制時間内に乾かす必要があるため、換気装置の稼働台数を通常時よりも増やしていたことなどによるものであった。
しかし、総合点検を実施した日を除いた通常期間における最大の使用電力は824kWであり、総合点検の実施による最大需要電力1,208kWはこれに比べて1.47倍と大幅に上回った値となっていた。このため、総合点検における使用電力を抑制することができれば、契約電力を低く設定して電気料金の節減を図ることも可能と思料された。
そこで、総合点検の実施方法を調査したところ、作業工程を見直すことなどにより、換気装置の稼働台数を削減する代わりに路面の乾燥に充てる時間を今までより長くすることにしたり、点検作業に支障のない範囲で照明設備の出力を調整したりすれば、交通規制時間を延長せずに、総合点検における使用電力は1,208kWから少なくとも400kW程度抑制されて800kW程度とすることが可能であり、その結果、契約電力の設定の基礎となる最大需要電力を通常期間における最大の使用電力824kWとすることができると認められた。
このように、使用電力を抑制することが可能であるのに、そのための方策を講じないまま年1回の総合点検における使用電力1,208kWを契約電力の設定の基礎としている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた基本料金)
本件契約における基本料金について、総合点検における使用電力を抑制することにより通常期間における最大の使用電力824kWに5%の余裕を見込んだ865kWを契約電力として算定すると、25年4月から26年7月までの間の電気料金のうち基本料金は計20,125,214円となり、前記の29,524,736円は939万余円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、会社において、契約電力を低く設定して電気料金の節減を図るために、総合点検について、作業工程を見直すなどして、使用電力を抑制する方策を十分検討していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、26年9月に通知を発して、電気料金の節減を図るために、総合点検において、作業工程を見直すことなどにより、換気装置の稼働台数を削減したり、照明設備の出力を調整したりする方策を、同年10月の総合点検から実施することとする処置を講じた。