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  • 第87 四国旅客鉄道株式会社 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

軌道に係る軌道変位検査及び補修工事を適切に実施することにより、鉄道施設の維持管理が適切に実施されるよう意見を表示したもの


科目
(款)鉄道事業固定資産
部局等
四国旅客鉄道株式会社本社
鉄道施設の維持管理の概要
鉄道施設を列車等が所定の速度で安全に運転することができる状態に保持するために、軌道及び構造物の検査を実施したり、必要に応じて補修工事を実施したりするもの
軌道変位検査及び補修工事が適切に実施されていなかった軌道の延長、分岐器の数
51,989m、115組
上記の帳簿価額
7億4369万円(背景金額)(平成25年度末)

【意見を表示したものの全文】

鉄道施設の維持管理について

(平成26年10月28日付け 四国旅客鉄道株式会社代表取締役社長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 鉄道施設の維持管理の概要

貴会社は、鉄道営業法(明治33年法律第65号)に従って鉄道事業を行っており、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)及び「施設及び車両の定期検査に関する告示」(平成13年国土交通省告示第1786号。以下、これらを合わせて「技術基準」という。)に基づき、軌道、橋りょう、トンネル等の鉄道の輸送の用に供する施設(以下「鉄道施設」という。)の維持管理を行うこととしている。

そして、貴会社は、技術基準に基づき、貴会社が所有する鉄道施設の維持管理を行うための基準として「実施基準管理規程」(平成14年社達第47号。以下「実施基準」という。)等を、国土交通省四国運輸局長に届け出た上で定めている。
貴会社は、実施基準等を補完するために、軌道の維持管理の具体的な方法について定めた「軌道等管理準則」(平成14年工保第466号)及び「軌道検査マニュアル」(平成18年工務部作成。以下、これらを実施基準等と合わせて「軌道実施基準」という。)に基づいて、次のとおり、軌道の検査及び補修工事を実施することとしている。

(1)軌道の検査

技術基準によれば、鉄道事業者は、年に1回の検査基準日を定めて、検査基準日の属する月及びその前後1か月の許容期間内に、軌道の性能を把握するための軌道変位検査を行うこととされていることから、貴会社は、軌道の重要度に応じて軌道変位検査を年2回又は4回実施することを軌道実施基準に規定している。

そして、軌道変位検査については、検査の対象箇所、検査基準日等を記載した管理台帳を基に、高低、通り、軌間、水準、平面性等の軌道変位(参照)を検査項目として実施しており、測定結果を検査記録簿に記録することとしている。また、変位量の測定に当たっては、実測によるものとしているが、重要度や使用頻度の低い側線(注1)については、一部目測によることも認めている。なお、平面性は、軌道の重要度に応じて測定しないことがある。

(注1)
側線  列車の運行に常用する軌道である本線でない軌道

図 主な軌道変位の概念図

主な軌道変位の概念図 画像

出典:
公益財団法人鉄道総合技術研究所「鉄道構造物等維持管理標準(軌道編)の手引き」
(注)
〔1〕 高低はレールの上下方向の変位、〔2〕 通りはレールの左右方向の変位、〔3〕 軌間は左右レールの間隔の設計値からの差、〔4〕 水準は左右レールの高さの差、〔5〕 平面性は、一定距離を隔てた2点の水準変位の差である。

(2)補修工事

貴会社は、軌道実施基準に基づき実施した軌道変位検査において測定した軌道の変位量が、軌道変位の評価指標である整備基準値以上となるなどしていた箇所(以下「整備基準値超過箇所」という。)については、軌道実施基準に定めた補修期限までに補修工事を実施して、その結果を補修記録として記録することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、鉄道の安全な輸送及び安定的な輸送の確保の重要性に鑑み、合規性、有効性等の観点から、鉄道施設の維持管理は適切に実施されているか、特に、列車等が走行する軌道についてその維持管理が技術基準等に基づき適切に実施されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、平成25年度における軌道の維持管理の状況について、貴会社管内において、軌道(延長1,062,661m(分岐器1,116組を含む。)、帳簿価額計141億5344万余円(25年度末現在。以下同じ。))に係る軌道変位検査の対象箇所1,661か所(注2)を対象として、検査記録簿等の関係書類の確認及び現場の状況を確認するなどの方法により、会計実地検査を行った。

(注2)
1,661か所  軌道変位検査の検査記録簿単位の箇所数である。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)軌道変位検査の実施状況

25年度の軌道変位検査の実施状況について、表1のとおり、軌道変位検査を適切に行っていなかった事態が主に側線において計328か所(軌道延長50,733m、分岐器115組、これらの帳簿価額計7億2808万余円)見受けられた。

表1 軌道変位検査の実施状況

事態 箇所数
(か所)
軌道延長
(m)
分岐器
(組)
25年度中に軌道変位検査を行っていなかった事態 20 788
軌道変位検査を年2回行うこととしている箇所について、1回しか行っていなかった事態 5 153
検査項目のうち2項目以上を測定していなかった事態 6 6
検査項目のうち1項目を測定していなかった事態 109 109
検査項目のうち実測を行っていなかった事態 173 22,085
ウ 許容期間内に軌道変位検査を行っておらず、検査の実施時期が適切なものとなっていなかった事態 11 25,057
エ 管理台帳に検査基準日を記録しておらず、軌道変位検査を許容期間内に行っていたかどうかの確認ができなかった事態 5 2,649
328 50,733 115
(注)
同一箇所で重複しているものがあるため、箇所数を合計しても計欄と一致しない。また、単位未満を切り捨てているため、軌道延長の合計と計欄は一致しない。
  • ア 複数の対象箇所を管理台帳に一括して記録し、管理するなどしていたため、軌道変位検査を行った詳細な箇所等について、検査記録簿や作業員の稼働状況の記録が確認できず、25年度中に軌道変位検査を行っていなかった事態が20か所において見受けられた。また、軌道変位検査を年2回行うこととしている箇所については、2回分の検査記録簿や作業員の稼働状況の記録が確認できず、軌道変位検査を1回しか行っていなかった事態が5か所において見受けられた。
  • イ 分岐器の検査記録簿に変位量の一部について記録がないことから、検査の実施状況を確認したところ、軌道変位検査で実施することとしている軌間等の検査項目のうち、2項目以上を測定していなかった事態が6か所、1項目を測定していなかった事態が109か所において見受けられた。また、使用頻度が高い側線の実測が必要な検査項目について、目測は行っていたものの実測を行っていなかった事態が173か所において見受けられた。
  • ウ 管理台帳に記録している検査基準日の属する月及びその前後1か月の許容期間内に軌道変位検査を行っておらず、検査の実施時期が適切なものとなっていなかった事態が11か所において見受けられた。このうち2か所については、許容期間の最終日から軌道変位検査の実施日まで3か月以上が経過していた。
  • エ 管理台帳に検査基準日を記録しておらず、軌道変位検査を許容期間内に行っていたかどうかの確認ができなかった事態が5か所において見受けられた。

(2)補修工事の実施状況

25年度の軌道変位検査における整備基準値超過箇所の補修工事の実施状況について、表2のとおり、補修工事の実施が適切でなかった事態が計6か所(14測点(注3)、軌道延長1,256m、帳簿価額計1560万余円)見受けられた。

(注3)
測点  軌道変位検査における、一定の間隔をおいて抽出した変位量データの測定地点

表2 補修工事の実施状況

 
事態 箇所数
(か所(測点))
軌道延長
(m)
ア 所定の補修期限内に補修工事を行っていなかった事態 4 988
(7)
イ 補修記録が保存されておらず、補修工事の実施状況や仕上がり状態が確認できなかった事態 2 268
(7)
6 1,256
(14)
  • ア 補修記録や作業員の稼働状況の記録を確認したところ、軌道変位検査の実施後、所定の補修期限内に補修工事を行っていなかった事態が4か所(7測点)において見受けられた。このうち、補修期限から補修工事までに60日以上要していた事態が1か所(3測点)、150日以上要していた事態が1か所(1測点)となっていた。
  • イ 作業員の稼働状況の記録上、補修工事の実施記録はあるものの、補修工事の実施内容や仕上がり状態を記録すべき補修記録が保存されておらず、補修工事の実施状況や仕上がり状態が確認できなかった事態が2か所(7測点)において見受けられた。

(改善を必要とする事態)

したがって、軌道の維持管理について、軌道変位検査を適切に行っていなかったり、補修工事の実施が適切でなかったりしている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴会社において、次のことなどによると認められる。

  • ア 技術基準等を遵守して軌道変位検査及び補修工事を適切に実施することについての理解が十分でないこと
  • イ 軌道変位検査について、対象箇所を適切に把握するなどして、その実施状況を管理し確認するための管理台帳の具体的な運用方法の検討が十分でないこと
  • ウ 補修工事について、補修期限内に補修工事を実施したか確認するための方策の検討が十分でないこと

3 本院が表示する意見

貴会社が管理する鉄道施設を適切に維持管理していくことは、鉄道輸送の信頼性を確保する上で重要であり、軌道を適切に管理して、鉄道の安全な輸送及び安定的な輸送を確保することが必要である。

ついては、軌道の維持管理が適切に実施されるよう、次のとおり意見を表示する。

  • ア 技術基準等を遵守して軌道変位検査及び補修工事を適切に実施することについて、関係部署に周知徹底すること
  • イ 軌道変位検査について、対象箇所を適切に把握するなどして、実施状況を管理し確認できるよう、管理台帳の具体的な運用方法を検討すること
  • ウ 補修工事について、補修期限内に補修工事を実施したか確認するための方策を検討すること