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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • (第15 株式会社かんぽ生命保険) |
  • 不当事項 |
  • 役務

申込書OCRシステムの保守契約において、今後使用する見込みのない機器を引き続き保守の対象としていたり、仕様書どおりに実施されていない定期点検に係る費用を保守費に含めていたりしていたため、支払額が過大となっていたもの[株式会社かんぽ生命保険本社](401)


科目
事業費
部局等
株式会社かんぽ生命保険本社
契約名
申込書OCRシステムの購入及び保守
契約の概要
生命保険契約の申込書等に記載された文字を光学的に読み取ることによりデータ入力等を行うためのシステムの購入及び保守を行うもの
契約の相手方
東芝ソリューション株式会社
契約
平成20年6月 一般競争契約
契約金額
1,121,925,000円
上記のうち保守費
575,871,450円(平成20年度~26年度)
支払
平成20年9月~26年3月 67回
支払額
516,851,611円(平成20年度~25年度)
過大となっていた支払額
41,772,900円(平成21年度~25年度)

1 契約等の概要

(1)契約の概要

株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。)は、保険業法(平成7年法律第105号)等に基づき支店等において生命保険業務を行っており、支店等が取り扱った生命保険契約の申込書等の事務処理等を行うために、仙台、東京、岐阜、京都、福岡各サービスセンター(以下、これらを「5センター」といい、サービスセンターを「センター」という。)を設置している。

かんぽ生命本社(以下「本社」という。)は、上記の申込書等に記載された文字を光学的に読み取ることによりデータ入力等を行うためのシステム(以下「申込書OCRシステム」という。)の購入及び保守に係る契約を、平成20年6月に、一般競争契約により、東芝ソリューション株式会社(以下「TSOL」という。)と申込書OCRシステムの購入費計546,053,550円及び20年9月から26年10月までの期間に係る保守費計575,871,450円、契約金額合計1,121,925,000円で締結している。

そして、かんぽ生命は、20年8月から申込書OCRシステムを構成する機器である申込書OCR装置計23台、申込書OCR修正用端末機計99台、ページプリンタ計38台等を5センターに設置している。

(2)申込書OCRシステムの保守等の概要

かんぽ生命が定めた物品等契約マニュアル(平成19年手続第33号)によれば、給付の完了の確認のための検査(以下「検収」という。)の際には、履行や納入を受ける部署の検査社員が仕様書等に適合しているかどうかを確認することとされている。

申込書OCRシステムの保守について定めた仕様書等によれば、TSOLは、故障が発生した場合には原則として即日修理すること、毎年、所定の回数以上の定期点検を実施することなどとされ、その際に、保守を実施した機器の内訳や機器ごとの作業内容等を記載した保守等報告書を作成して各センターの検査社員に提出することとされている。そして、検査社員が同報告書の記載内容について確認した上で記名又は押印した後に、TSOLは同報告書を本社に提出して、本社の検査を受けて承認を得ることとされている。

本社は上記の承認を行った後に、TSOLから代金の支払請求を受けて、毎月の定額の保守費を支払うこととなっており、20年9月から26年3月までの期間に係る保守費として、計516,851,611円をTSOLに支払っている。

また、契約書によれば、本社は、必要がある場合には、仕様書の内容等について変更するためにTSOLと協議することができることとされている。

2 検査の結果

本院は、合規性、経済性等の観点から、機器ごとに保守を行う必要性の検討が十分に行われているか、保守は適切に実施されているかなどに着眼して、前記の保守費の支払額を対象として、本社及び5センターにおいて、契約書、仕様書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

  • ア かんぽ生命は、22年10月以降、申込書OCRシステムとは別に、申込書等をスキャナーで取り込んで審査を行うなどする新契約システムを導入しており、新規の申込書のデータ入力のほとんどは新契約システムを利用して行われていたことから、申込書OCRシステムは一部の業務のみに利用されていた。このため、岐阜センターは24年6月、京都センターは同年2月、福岡センターは同年5月に、前記の申込書OCRシステムを構成する機器のうち、申込書OCR装置計6台、申込書OCR修正用端末機計31台及びページプリンタ計7台について、今後使用する見込みがなくなったため撤去して、各センター内の倉庫等に保管していた。しかし、本社は、これらの機器を保守の対象から除外することなどについてTSOLと何ら協議しないまま、引き続きこれらの機器に係る保守費を支払っていた。
  • イ 5センターは本社から保守に係る仕様書の内容を通知されておらず、5センターの検査社員は、定期点検の対象となる機器の内訳を把握しないまま検収を了したとして、TSOLから提出された前記の保守等報告書に記名又は押印していた。一方、本社は、毎月、TSOLから、仕様書に定められた前記の内容等が記載されていない簡易な報告書の提出しか受けておらず、これに基づき検査を実施したとして、機器ごとの定期点検の実施状況を確認しないまま承認していた。これらのことから、5センターにおいて使用している機器について、定期点検の実施回数が仕様書で定められた所定の回数を下回っていた機器が21年度計63台、22年度計104台、23年度計146台、24年度計120台、25年度計113台あったが、本社はこれらの仕様書どおりに定期点検が実施されていない機器に係る保守費をTSOLに支払っていた。

したがって、今後使用する見込みのない機器に係る保守費及び仕様書どおりに実施されていない定期点検に係る費用を除いて、適切な保守費の支払額を算定すると計475,078,711円となり、前記の支払額との差額計41,772,900円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5センターにおいて定期点検の検収を適切に実施することについての認識が欠けていたこと、本社において、機器ごとの使用状況を十分に把握しておらず保守の必要性についての検討が十分でなかったこと、定期点検の実施状況の確認を適切に行うことについての認識が欠けていたこと、5センターに対する検収の適切な実施についての指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。