内閣府は、平成24年2月に、平成23年度一般会計補正予算(第3号)(以下「23年度3次補正」という。)に計上された復興支援型地域社会雇用創造事業交付金3,200,000,000円を一般財団法人ニューメディア開発協会(以下「財団」という。)に交付している。そして、これを受けた財団は、復興支援型地域社会雇用創造事業(以下「雇用創造事業」という。)を実施するために社会的企業支援基金を設置造成している。雇用創造事業は、同基金を活用して、地域課題を解決するための新規性のある事業を行う「社会的企業」の起業等を支援するものである。 内閣府が定めた復興支援型社会的企業支援基金実施要領等によれば、財団は、雇用創造事業が終了し、雇用創造事業に係る精算が終了した時点において、同基金に残額がある場合には、これを国庫に納付することとされている。
内閣府は、24年2月から3月までの間に、23年度3次補正に計上された「平成23年度新しい公共支援事業交付金」879,000,000円について、岩手県に249,000,000円、宮城県に267,000,000円、福島県に363,000,000円(以下、これらの県を合わせて「3県」という。)をそれぞれ交付している。そして、これを受けた3県はそれぞれ、新しい公共支援事業を実施するために22年度に設置造成した新しい公共支援事業基金に上記の額を積増ししている。新しい公共支援事業は、同基金を活用して、「新しい公共」の担い手となる民間非営利組織の自立的活動を支援するものである。
内閣府が定めた新しい公共支援事業実施要領等によれば、3県は、新しい公共支援事業の終了時において同基金に残額があるなどの場合には、これらを国庫に納付することとされている。
復興事業に係る歳入歳出については、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、24年度から新たに設置された東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)において経理することとなっている。そして、23年度3次補正に計上された費用のうち「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)第69条第5項の規定により国会の議決を受けた復興費用に関する権利義務は、特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第15号)附則第3条第1号の規定(以下「特会法改正法の規定」という。)によれば、翌年度以降に繰り越して使用することとされたものを除き復興特会に帰属することとされている。これにより、23年度3次補正に計上された復興費用のうち23年度内に交付された交付金等について、当該交付金等を活用した事業の終了に伴う精算等により生じた額を国庫に納付させる場合、国は復興特会に納付させることとなる。
本院は、合規性等の観点から、23年度3次補正に計上された復興費用のうち23年度内に交付された交付金により設置造成等された社会的企業支援基金及び3県それぞれの新しい公共支援事業基金(以下、これらを合わせて「4基金」という。)に残額が生じた場合に、当該残額を復興特会に適正に納付させているかなどに着眼して、内閣府本府において、財団及び3県に送付した国庫への納付に関する書類を確認するなどして会計実地検査を行った。 検査したところ、4基金の残額等を国庫へ納付させるに当たり、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
財団は、25年6月に内閣府に対して、社会的企業支援基金の残額を332,699,489円と報告した。これを受けて、内閣府は、同年7月に同額を一般会計に納付させることとする納入告知書を送付して、財団は同月に同額を一般会計に納付していた。
3県は、25年11月に内閣府に対して、22年度の設置造成分と23年度3次補正の積増し分から成る新しい公共支援事業基金の残額について、岩手県30,035,203円、宮城県20,078,586円、福島県26,500,229円とそれぞれ報告した。これを受けて、内閣府は、25年12月から26年2月までの間に、23年度3次補正の積増し分を含む残額全額を一般会計に納付させることとする納入告知書を送付して、3県は、25年12月から26年2月までの間に同額を一般会計に納付していた。さらに、福島県は、同基金の解散後に同基金から支援した金額の返納を受けたため、同年4月に1,238,936円を一般会計に納付していた。これらにより、3県から国の一般会計への納付額は計77,852,954円となった。
しかし、4基金は、23年度3次補正に復興費用として計上されて23年度内に交付された交付金によりその全額又は一部が設置造成等されたものであることから、内閣府は、当該交付金に係る4基金の残額等を、特会法改正法の規定に基づき一般会計ではなく復興特会に納付させるべきであった。
したがって、復興特会に納付させるべき4基金の残額等を一般会計に誤って納付させていた事態は、特会法改正法の規定に違反しており、ひいては復興債の償還の適切な管理に支障をきたすおそれなどがあり、アの納付額332,699,489円及びイの納付額計77,852,954円のうち23年度3次補正に係る納付額61,308,848円、計394,008,337円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、内閣府において、23年度3次補正に計上された復興費用のうち23年度内に交付された交付金により設置造成等された4基金の残額等を国庫に納付させるに当たり、特会法改正法の規定についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。