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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 総務省|
  • 不当事項|
  • 役務

教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究の委託契約において、委託先が実際に負担した額に基づかない時間単価を適用して人件費を算定していたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[総務省](2)


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)情報通信技術高度利活用推進費
部局等
総務本省
契約名
平成25年度教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究
契約の概要
最先端のICTを活用した教育向けシステム等の試作、試作したシステム等の検証等を実施するもの
契約の相手方
一般社団法人日本教育工学振興会(平成26年4月1日以降は一般社団法人日本教育情報化振興会)
契約
平成25年11月 随意契約
支払
平成26年4月
支払額
137,767,344円(平成25年度)
過大となっていた支払額
3,110,345円(平成25年度)

1 委託契約の概要等

総務本省(以下「本省」という。)は、平成25年度に、教育分野におけるICT(Information and Communication Technology)の利活用を推進するための技術的要件を整理することを目的として、教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究に係る業務(以下「委託業務」という。)を、一般社団法人日本教育工学振興会(平成26年4月1日以降は一般社団法人日本教育情報化振興会。以下「振興会」という。)に委託して実施し、委託費137,767,344円を支払っている。

委託契約書によれば、本省は、委託業務が終了して振興会から実績報告書等の提出を受け、その内容が契約の内容に適合するものかどうかなどについて審査して、適切であると認めたときは、委託契約書で定めた委託費の限度額と、実績報告書に記載された委託業務の実施に要した経費とのいずれか低い額を委託費の額として確定し、振興会へ支払うこととされている。

また、委託業務の経理処理について本省が25年9月に定めた「平成25年度教育分野における最先端ICT利活用に関する調査研究委託契約経理処理解説」によれば、人件費は、委託業務に直接従事する者(以下「従事者」という。)の給与、諸手当等とされていて、原則として、従事した月ごとに、1時間当たりの人件費単価(以下「時間単価」という。)に委託業務に直接従事した時間を乗じて算定することとされている。時間単価には、①従事者の雇用契約書等で定められた給与等に基づき算定される時間単価(以下「実績単価」という。)と、②従事者が事業主から受け取る給与等の報酬の月額により区分される健康保険の標準報酬月額の等級区分に基づき本省が定める時間単価(以下「健保等級単価」という。)とがあり、従事者の所得の状況等によりいずれかを適用することとされている。そして、従事者が委託先の法人を事業主とする健康保険に加入していない出向者であるなどの場合は、原則として実績単価を適用することとされている。また、いずれの時間単価を適用した場合も、委託先の法人が実際に負担した給与等の合計額を上回らないこととされている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託業務の実施に要した経費は適正に算定されているかなどに着眼して、本件契約を対象として、本省及び振興会において、委託契約書、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

すなわち、振興会は、従事者2名の時間単価として健保等級単価を適用しており、それぞれ2,450円、5,480円(いずれの従事者も従事した全ての月について同額)の時間単価に委託業務に直接従事した時間を乗じて、人件費として負担した額を計3,985,600円と算定していた。

しかし、これらの従事者は、いずれも振興会を事業主とする健康保険に加入していない出向者等であり、従事者の給与等に係る振興会の負担額が一部のみであることなどから、健保等級単価を適用したのは誤りであって、実績単価を適用すべき者であった。そして、これらの従事者が従事した月ごとの時間に応じて振興会が実際に負担した給与等の額に基づき算定すると、従事した月ごとの時間単価は、それぞれ2,450円が1,836円又は1,932円、5,480円が579円又は610円となり、振興会が実際に負担した給与等は前記の人件費を大幅に下回ることになる。

したがって、実績単価に基づき人件費を算定するなどして適正な委託費の額を算定すると134,656,999円となり、前記の委託費支払額137,767,344円との差額3,110,345円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、振興会において委託業務に係る適正な人件費の算定についての理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。