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  • 平成26年度|
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(1) 地域力の創造等に関するモデル事業の実施に係る契約において、実施団体に対する支払額が支払上限額を下回った場合にはその差額を精算するなど支払業務の在り方を見直すよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)地域振興費
部局等
総務本省
契約名
平成24年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負等9件
契約の概要
地方公共団体等の実施団体による地域力の創造等に関するモデル事業の結果についての調査分析、報告書作成等の業務、実施団体に対する同事業の実施に要した経費の支払の業務等を行うもの
契約の相手方
株式会社価値総合研究所、株式会社日本総合研究所、みずほ総合研究所株式会社
確定契約に基づく支払額
4億1257万余円(平成24、25両年度)
実施団体に対する支払額と支払上限額との開差額
2550万円(平成24、25両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

地域力の創造等に関するモデル事業の実施に係る契約について

(平成27年3月6日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 地域力の創造等に関するモデル事業等の概要

貴省は、本格的な地方分権改革の時代を迎え、地方公共団体が時代の動きに即応し、常に新たな政策を企画し、立案して、地域活性化の基本的な要素である人材力の活性化や都市から地方への移住の推進等の重要な課題に積極的に対応していけるようにするために、様々な支援を行っている。その一環として、地域力の創造等に関するノウハウの調査分析を行い、その普及を図ることを目的として、毎年度、地域力の創造等に関するモデル事業(以下「モデル事業」という。)を実施する地方公共団体等(以下「実施団体」という。)の取組について支援を行っている。

そして、支援の対象とする実施団体を公募により選定しており、その募集要項において、貴省が負担するモデル事業の実施に要する経費の1実施団体当たりの上限額を示すとともに、モデル事業の実施に要した経費の支払を精算払により行うこととしている。

一方、モデル事業の結果についての調査分析、報告書作成等の業務、モデル事業の実施に要した経費を実施団体に支払う業務(以下「支払業務」という。)等については、平成24、25両年度に、一般競争契約により、「平成24年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負」等の9件の契約(以下「9契約」という。)を、株式会社価値総合研究所、株式会社日本総合研究所及びみずほ総合研究所株式会社(以下、これらの会社を「請負業者」という。)と締結して請け負わせている。そして、9契約の仕様書によれば、支払業務については、モデル事業の実施に要する経費の上限額(以下「支払上限額」という。)が示され、適正と認められる経費を対象とし、実施団体からの請求に応じて請負業者が支払うこととされている。9契約に係る契約金額、支払上限額等は、表1のとおりであり、契約金額及び支払上限額の合計は、それぞれ4億1257万余円、3億4300万円である。

表1 9契約に係る契約金額等

(単位:千円)
契約番号 契約名 契約期間 請負業者名 契約金額 支払上限額
平成24年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負 平成24年6月1日~25年3月29日 株式会社価値総合研究所 50,925 40,000
平成24年度「域学連携」地域づくり人育成支援事業の請負 24年9月25日~25年3月27日 同上 8,400 5,000
「域学連携」地域活力創出モデル実証事業の運営及び調査分析の請負 25年7月5日~26年3月27日 同上 210,000 200,000
平成25年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負 25年7月24日~26年3月28日 同上 42,000 32,500
平成25年度人材力活性化に関する調査研究事業の請負 25年7月30日~26年3月26日 同上 11,550 5,000
「域学連携」実践拠点形成モデル実証事業の運営及び調査分析の請負 25年10月7日~26年3月27日 同上 18,900 15,000
公民連携・既存ストック有効活用による地域活性化に関する調査研究事業の請負 25年8月27日~26年3月14日 株式会社日本総合研究所 18,900 12,000
「シニア地域づくり人」に関する調査研究事業の運営及び調査分析の請負 25年11月6日~26年3月27日 同上 26,704 17,500
RMO(地域運営組織)による総合生活支援サービスに関する調査研究事業の請負 25年7月18日~26年3月14日 みずほ総合研究所株式会社 25,200 16,000
9契約計 412,579 343,000

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、モデル事業の実施に係る契約形態はモデル事業の実施状況を踏まえた適切なものとなっているかなどに着眼して、貴省が24、25両年度に締結した前記の9契約(契約金額計4億1257万余円)を対象として、貴省において契約書、仕様書等の関係書類を確認するなどするとともに、請負業者において実施団体に対する支払の記録等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴省は、前記のとおり、実施団体を公募により選定する際の募集要項において、実施団体に対するモデル事業の実施に要した経費の支払を精算払により行うこととし、また、9契約の仕様書において、支払上限額を示した上で実施団体からの請求に応じて請負業者が支払うこととしていた。一方、貴省は、9契約の契約形態を、いずれも契約が予定どおり履行された場合に契約締結時に確定した契約金額をもって契約の相手方に契約代金を支払う確定契約としていた。

そこで、モデル事業の実施に要した経費として請負業者から実施団体に支払われた額(以下「実施団体に対する支払額」という。)を、9契約の仕様書に記載されている支払上限額と比較したところ、実施団体において当初見込んでいた業務が実際には不要になったり、謝金、資料作成費等が当初の見込みより低額であったりしたことなどにより、表2のとおり、9契約の全てにおいて実施団体に対する支払額が支払上限額を下回っており、9契約で計2550万余円の開差が生じていた。

しかし、貴省は、9契約の全てを確定契約としていて、実施団体に対する支払額が支払上限額を下回っても請負業者との間で精算しないことにしており、9契約の契約締結時に確定した契約金額計4億1257万余円の全額を請負業者に支払っていた。

表2 実施団体に対する支払額と支払上限額との開差額

(単位:千円)
契約番号 契約名 支払上限額
(A)
実施団体に対する支払額
(B)
開差額
(A-B)
平成24年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負 40,000 36,916 3,083
平成24年度「域学連携」地域づくり人育成支援事業の請負 5,000 4,159 840
「域学連携」地域活力創出モデル実証事業の運営及び調査分析の請負 200,000 189,745 10,254
平成25年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負 32,500 29,312 3,187
平成25年度人材力活性化に関する調査研究事業の請負 5,000 3,314 1,685
「域学連携」実践拠点形成モデル実証事業の運営及び調査分析の請負 15,000 14,915 84
公民連携・既存ストック有効活用による地域活性化に関する調査研究事業の請負 12,000 11,900 100
「シニア地域づくり人」に関する調査研究事業の運営及び調査分析の請負 17,500 13,185 4,314
RMO(地域運営組織)による総合生活支援サービスに関する調査研究事業の請負 16,000 14,049 1,950
9契約計 343,000 317,498 25,501

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

貴省は、地域力創造のための起業者定住促進モデル事業について、平成24年度に「平成24年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負」契約を契約金額50,925,000円で、25年度に「平成25年度地域力創造のための起業者定住促進モデル事業の運営及び調査分析の請負」契約を契約金額42,000,000円で、いずれも株式会社価値総合研究所と締結していた。そして、実施団体として24年度は9市町村が、25年度は7市町が、伝統的食文化の継承とこれに係る流通小売の活性化や地域内における起業を図るために、外部専門家を活用するなどして地域振興事業等のモデル事業を実施していた。貴省は、上記2契約の仕様書において、支払上限額をそれぞれ40,000,000円(9市町村分)、32,500,000円(7市町分)としていた。一方、外部専門家の現地での指導助言に係る時間数が当初の見込みより少なかったことなどにより、同社から実施団体に対する支払額は、24年度計36,916,799円、25年度計29,312,370円となり、支払上限額よりそれぞれ3,083,201円、3,187,630円下回っていた。

(是正改善を必要とする事態)

貴省において、実施団体に対する支払額が支払上限額を下回る場合に、その差額を請負業者との間で精算することとしていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、モデル事業の実施に要する経費は、モデル事業の実施状況によって、当初見込んでいる額から変動するおそれがあるにもかかわらず、貴省において、モデル事業の実施に係る契約形態についての検討が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

貴省においては、今後も引き続き、モデル事業を実施していくことが見込まれる。

ついては、貴省において、モデル事業の実施に係る契約形態をモデル事業の実施状況を踏まえたものとするために、実施団体に対する支払額が支払上限額を下回った場合にはその差額を精算するなど支払業務の在り方を見直すよう、是正改善の処置を求める。