ページトップ
  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)国税の口座振替納付に係る領収証書等の調達及び納税者への送付を廃止することにより、口座振替納付に係る経費の節減を図るよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国税庁 (項)税務業務費
部局等
国税庁
契約名
(1)国税の口座振替納付に関する契約18契約
(2)印刷物の刷成に関する契約(磁気テープ交換用領収証書)6契約
(3)印刷物の刷成に関する契約(被覆用シール)1契約
契約の概要
(1)納税者の預貯金口座から納付税額を振り替えて、領収証書を納税者に送付するもの
(2)領収証書の書式が印刷された用紙を調達するもの
(3)領収証書に貼付する被覆用シールを調達するもの
契約の相手方
(1)一般社団法人全国銀行協会等9団体
(2)トッパン・フォームズ株式会社等2会社
(3)シーレックス株式会社
契約
(1)平成24年4月、25年4月 随意契約(単価契約)
(2)平成24年4月ほか、25年4月ほか 一般競争契約
(3)平成25年3月 一般競争契約
支払額
(1)7億7494万余円(平成24、25両年度)
(2)5309万余円(平成24、25両年度)
(3)241万余円(平成24年度)
計 8億3044万余円
上記のうち節減できた口座振替納付に係る経費
(1)6億4578万円
(2)5309万円
(3)241万円
計 7億0128万円

1 国税の口座振替納付の概要等

(1)国税の口座振替納付の概要

国税の納付には、現金に納付書を添えて日本銀行の代理店としての金融機関(以下「日本銀行代理店」という。)や税務署の窓口で納付する方法、納税者が指定した金融機関の預貯金口座から振替により納付する方法(以下「口座振替納付」という。)等がある。このうち、口座振替納付は、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(以下「振替依頼書」という。)の内容が登録された後は自動的に継続して納税することができることから、利便性が高いとして多くの納税者によって利用されており、平成27年現在、申告所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ。)、個人事業者に係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)等が対象となっている。

(2)国税の口座振替納付の事務の流れ

国税庁は、毎年度、一般社団法人全国銀行協会等9団体(注1)との間で口座振替納付1件ごとの手数料に係る単価契約(24、25両年度における単価は63円となっている。)により口座振替納付に関する基本的な事項を定めた契約(以下「基本契約」という。)を締結し、口座振替納付に係る経費として9団体に対して24年度3億8699万余円(口座振替納付の件数6,142,743件)、25年度3億8794万余円(同6,157,892件)、計7億7494万余円(同計12,300,635件)を支払っている。

そして、9団体のうち7団体(注2)は、基本契約に基づき、金融機関との間で契約を締結し、口座振替納付に係る業務を実施させている。また、2団体(注3)は自らが当該業務を実施している。

この口座振替納付における事務の流れは次のようになっている。

① 納税者は口座振替納付を希望する税目、預貯金口座等を記載した振替依頼書を所轄税務署に提出し、所轄税務署は、審査をした上で振替依頼書を納税者が指定する金融機関に送付し、当該金融機関は振替依頼書に記載された内容の登録等を行う。

② 所轄税務署又は国税庁は、納税者ごとに指定した金額を当該納税者の預貯金口座から振り替えて納付するよう求める書類又は磁気媒体を納期ごとに金融機関に送付する。

③ 金融機関は、基本契約に基づき、送付を受けた書類又は磁気媒体により、納税者ごとに指定された金額を納税者の預貯金口座から日本銀行代理店の口座に振り替えて、納税者に代わって納付するとともに、日本銀行代理店に対して、領収証書の書式があらかじめ印刷され、当該書式に振り替えられた金額等が記載された郵便はがき大の用紙に領収印の押印を求める。

④ 日本銀行代理店は、領収印を押印した上で領収証書を金融機関に交付し、当該金融機関は、基本契約に基づき、当該領収証書に被覆用シールを貼付するなどした後、郵便はがきとして納税者に送付する。

納税者が日本銀行代理店の窓口で国税を納付する場合には、日本銀行代理店は日本銀行国庫金取扱規程(昭和22年大蔵省令第93号)第35条の3第1項の規定に基づき、納税者に領収証書を交付している。一方、口座振替納付の場合には、国(日本銀行代理店)にとっての納入者は納税者の預貯金口座のある金融機関であり、納税者に送付されている領収証書は、同項の規定に基づくものではなく、基本契約及び各団体が金融機関との間で締結した契約に基づくものである。

(注1)
9団体  一般社団法人全国銀行協会、一般社団法人全国地方銀行協会、一般社団法人第二地方銀行協会、農林中央金庫、労働金庫連合会、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、株式会社商工組合中央金庫、株式会社ゆうちょ銀行
(注2)
7団体  一般社団法人全国銀行協会、一般社団法人全国地方銀行協会、一般社団法人第二地方銀行協会、農林中央金庫、労働金庫連合会、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会
(注3)
2団体  株式会社商工組合中央金庫、株式会社ゆうちょ銀行

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

申告所得税及び消費税の納税者のうち口座振替納付の利用者の割合は、25年度の確定申告において、それぞれ59.3%、77.1%を占めている。そして、前記のとおり、領収証書は郵送により納税者に送付されており、その経費は多額に上っている。

そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、口座振替納付の都度、納税者に領収証書を送付する必要があるかなどに着眼して、国税庁及び9団体において、24、25両年度の基本契約及び領収証書等の調達契約を対象として、領収証書の送付状況、口座振替納付の履行状況、単価の内訳等について、契約書、仕様書、その他契約関係書類等で確認したり、担当者から説明を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)口座振替納付に係る経費等

国税庁は、前記の口座振替納付に係る経費のほかに領収証書の書式が印刷された用紙の製造請負費用として24年度2626万余円、25年度2682万余円、計5309万余円及び被覆用シールの製造請負費用として24年度241万余円を支払っていた。また、国税庁が9団体に対して支払った口座振替納付に係る手数料1件当たりの単価63円の内訳は、金融機関が納税者の預貯金口座から日本銀行代理店の口座に振り替える事務経費相当額10円、領収証書を納税者に送付するための郵送料相当額50円及びこれらに係る消費税相当額となっていた。

(2)国税の口座振替納付に係る領収証書の必要性

国税庁は、日本銀行代理店の窓口において現金により納付を受けた場合に領収証書を納税者に交付していることと同様に取り扱う必要があるとして、口座振替納付による場合にも、基本契約及び各団体が金融機関との間で締結した契約に基づき、金融機関を通じて領収証書を納税者に送付していた。

この領収証書は、民法(明治29年法律第89号)第486条に規定されている受取証書に該当し、弁済した証拠となる書面としての性格を有することから、納税者が日本銀行代理店の窓口において納付した場合、納税者側から国税を納付した事実を明らかにするためには領収証書が必要となる。これに対して、口座振替納付の場合は、国税が振り替えられた旨、振り替えられた金額、振替日等が記帳された預貯金通帳によって納税者側から口座振替納付が行われた事実を明らかにすることが可能であると認められる。

このように、領収証書の書式が印刷された用紙及び被覆用シールを調達した上で、口座振替納付の都度、金融機関から領収証書を納税者に送付する必要性は高いとは認められないのに、これにより多額の口座振替納付に係る経費を支払っていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた口座振替納付に係る経費)

上記のことから、口座振替納付の都度、領収証書の送付を行わないこととすると、口座振替納付に係る経費のうち郵送料相当額及びこれに係る消費税相当額24年度3億2249万余円、25年度3億2328万余円、計6億4578万余円、領収証書の書式が印刷された用紙の製造請負費用24年度2626万余円、25年度2682万余円、計5309万余円、被覆用シールの製造請負費用24年度241万余円、合計7億0128万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、国税庁において、口座振替納付の都度、金融機関から領収証書を納税者に送付する必要性についての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、27年4月に口座振替納付に係る領収証書の送付廃止に伴う金融機関に対する影響を調査し、その調査結果を踏まえ、同年8月に領収証書等の調達及び送付を廃止することとした。そして、金融機関との調整、的確な納税者への対応を実施するなどして、29年中を目途に領収証書等の調達及び送付を廃止し、口座振替納付に係る経費の節減を図ることとする処置を講じた。