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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 役務

全国学力・学習状況調査に係る印刷業務請負契約において、視覚に障害がある児童生徒用の問題用紙等の多くが学校等へ送付されていなかった実態を把握していなかったなどのため、印刷部数が過大となり契約額が割高となっていたもの[国立教育政策研究所](14)


会計名及び科目
一般会計 (組織)文部科学本省所轄機関 (項)国立教育政策研究所
部局等
国立教育政策研究所
契約名
平成22年度全国学力・学習状況調査問題用紙(小学校)の印刷一式等12契約
契約の概要
全国学力・学習状況調査に係る問題用紙等の印刷を請け負わせるもの
契約の相手方
4者
契約
平成21年12月ほか 契約12件(一般競争契約10件、随意契約2件)
契約額
1,003,878,657円(平成21年度、23年度〜25年度)
上記の契約における印刷部数のうち、視覚に障害がある児童生徒用の問題用紙等に係る印刷部数
201,430部
上記印刷部数のうち過大となっていた印刷部数
88,479部
割高となっていた契約額
710万円(平成21年度、23年度〜25年度)

1 全国学力・学習状況調査の概要等

(1)全国学力・学習状況調査の概要

文部科学省は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握して分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ることなどを目的として、平成19年度から毎年度、全国学力・学習状況調査(以下「学力調査」という。)を実施している。

学力調査の実施に当たっては、文部科学省初等中等教育局と国立教育政策研究所(以下「研究所」という。)とにおいて、次のとおり業務を分担している。

ア 初等中等教育局は、学力調査を実施する前年度から実施年度末日までを契約期間とする委託契約を民間業者と締結して、学力調査に必要な情報の整備、問題用紙、解答(回答)用紙(注1)等(以下、これらを合わせて「問題用紙等」という。)の学校や教育委員会等(以下「学校等」という。)への送付、解答(回答)用紙の回収、採点、集計等の業務を行わせている(以下、委託契約を締結した民間業者を「委託業者」といい、これらの委託業務を「送付等委託業務」という。)。

イ 研究所は、教科に関する調査問題の作成、問題用紙等の印刷、調査結果に係る報告書の作成等の業務を行っている。これらのうち問題用紙等の印刷業務については、学力調査を実施する前年度に民間業者等と請負契約を締結して行わせている(以下、この請負契約を「印刷業務請負契約」といい、これによる印刷業務を「印刷業務請負」という。)。そして、請負業者は、印刷業務請負において印刷した問題用紙等を、研究所等の保管用を除いて送付等委託業務の委託業者へ直接納品することとなっている。

(2)印刷業務請負の概要

印刷業務請負の対象となる問題用紙等は、①通常の文字により記述されている問題用紙等(以下「通常文字用紙」という。)、②視覚に障害がある児童生徒用として拡大文字又は点字により記述されている問題用紙等、③日本語指導が必要である児童生徒用として総ルビ振りにより記述されている問題用紙等(以下、②と③を合わせて「拡大文字等用紙」という。)及び④点字により記述されている問題用紙等を使用する児童生徒を指導する教員用として点字墨訳(注2)されている問題用紙等(以下、拡大文字等用紙と合わせて「拡大文字・点字墨訳等用紙」という。)となっている。

そして、研究所は、これらの問題用紙等の印刷部数の算定に当たっては、過去の印刷部数の実績等を参考として、それぞれ学校分(児童生徒分及び教職員分)、教育委員会分等の必要部数の算定を行い、これに予備の部数を加えるなどして決定することとしている。

(注1)
解答(回答)用紙 解答用紙は、教科に関する調査問題に解答する用紙であり、回答用紙は、生活習慣や学校環境に関する調査問題に回答する用紙である。
(注2)
点字墨訳 点字で記述された文章を通常の文字に訳したもの

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、印刷業務請負について、印刷部数の算定に当たり、過去に実施された学力調査における学校等への送付の実績が適切に反映されているかなどに着眼して、21年度から25年度までの間に締結された印刷業務請負契約のうち、東日本大震災の影響により学力調査の実施が見送られた22年度契約を除いた計20契約を対象として、研究所において、予定価格調書、契約書、仕様書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、上記20契約のうち通常文字用紙のみに係る8契約を除いた12契約(契約の相手方計4者、契約額計1,003,878,657円)において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

研究所は、上記の12契約において、拡大文字・点字墨訳等用紙を、21年度36,740部、23年度43,800部、24年度61,570部、25年度59,320部、計201,430部印刷し、委託業者に納品していた。そして、研究所は、印刷業務請負の参考情報として、毎年度、委託業者に依頼して送付等委託業務における問題用紙等の送付状況の報告(以下「送付状況報告」という。)を受けていた。

しかし、送付等委託業務において、拡大文字・点字墨訳等用紙は、教職員が拡大文字等用紙の内容を通常文字用紙により把握できることなどから、その多くが学校等へ送付されていなかった。そして、研究所は、毎年度送付状況報告を受けていたにもかかわらず、このような実態を把握しておらず、拡大文字・点字墨訳等用紙の印刷部数の算定に反映させていなかった。このため、上記印刷部数のうち計100,302部(21年度分16,852部、23年度分17,273部、24年度分34,243部、25年度分31,934部)が学校等に送付されずに処分されており、印刷部数に対する処分された部数の割合が49.8%(21年度分45.9%、23年度分39.4%、24年度分55.6%、25年度分53.8%)と、通常文字用紙の割合である7.4%と比べて著しく高い状況となっていた。

したがって、処分された拡大文字・点字墨訳等用紙の部数100,302部から、予備相当分の部数11,823部を差し引いたとしても、88,479部が過大に印刷されていたと認められ、これらを除いて契約額を修正計算すると計996,065,127円となり、本件契約額計1,003,878,657円はこれに比べて約710万円割高となっていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、研究所において、毎年度の送付状況報告を十分確認しておらず、拡大文字・点字墨訳等用紙の多くが学校等へ送付されていなかった実態を把握していなかったなど、印刷業務請負における印刷部数の経済的な算定に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。