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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

義務教育費国庫負担金における算定総額の算定に当たり、算定上の基準日以前に遡及して支給対象とならなくなるなどした教職員の手当を反映させることについて、各都道府県が作成する調書の様式に具体的に明示することなどにより、同負担金の交付額の算定が適正かつ公平に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文部科学本省 (項)義務教育費国庫負担金
部局等
文部科学本省、9道県
国庫負担の根拠
義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)
国庫負担の対象
公立の義務教育諸学校に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費
義務教育費国庫負担金における算定総額の概要
義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として交付される義務教育費国庫負担金について、都道府県ごとに国庫負担額の最高限度の基となる額として算定されるもの
検査の対象
9道県
上記の9道県に対して交付された国庫負担金
5309億3501万余円(平成24、25両年度)
算定総額が過大又は過小に算定されていた道県
9道県
上記の9道県において過大又は過小に算定されていた算定総額及び国庫負担金
過大に算定されていた 2559万円(平成24、25両年度)
国庫負担金(算定総額)(7677万円)
過小に算定されていた 3029万円(平成24、25両年度)
国庫負担金(算定総額)(9087万円)

1 制度の概要

(1)義務教育費国庫負担金の概要

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国民の全てに対してその妥当な規模と内容とを保障するために、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。

そして、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。

(2)算定総額の算定

算定総額は、都道府県ごとの国庫負担額の最高限度の基となる額であり、国が想定している義務教育の妥当な規模と内容とを実現しようとする場合の標準的な経費の額として、都道府県ごとに、次のとおり算定することとなっている。

すなわち、算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。そして、基礎給料月額等は、給料及び諸手当(注1)について、「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則」(平成16年文部科学省令第28号)等(以下「施行規則等」という。)に基づき、都道府県ごとに当該年度の5月1日に在職する教職員を対象として算定することとなっている。このうち、諸手当に係る金額については、それぞれの手当の種類ごとに、当該教職員が一般職の国家公務員であると仮定した場合に支給されることとなる当該年度の5月分の金額等を基として算定した教職員一人当たりの手当の月額単価等とすることとなっている。

(注1)
諸手当  限度政令に規定する扶養手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、寒冷地手当等の手当

(3)諸手当の月額単価を算定するための現員現給等調書

文部科学省は、毎年度、各都道府県が給料及び諸手当のそれぞれの月額単価を算定するために、「公立義務教育諸学校教職員の現員現給等調書」(以下「調書」という。)を各都道府県に配布して、各手当の月額単価を報告させている。そして、同省は、各都道府県が作成した調書の提出を受け、これを基に基礎給料月額等の確認を行うなどして、算定総額及び負担金の交付額を確定している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

負担金の算定の基礎となる算定総額は、都道府県ごとの国庫負担額の最高限度の基となる額となっていて、国が想定している義務教育に係る標準的な経費の額として算定するものであることから、その算定を適正に行い、負担金の交付額を適正かつ公平に算定する必要がある。

そこで、本院は、合規性等の観点から、算定総額の算定は適正に行われ、負担金の交付額が適正かつ公平に算定されているかなどに着眼して、平成24、25両年度に算定総額を基に負担金の交付を受けた9道県(注2)に対して交付された負担金計5309億3501万余円を対象として、文部科学本省及び9道県において、調書等の書類を精査するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
9道県  北海道、青森、埼玉、静岡、滋賀、島根、愛媛、長崎、熊本各県

(検査の結果)

検査したところ、9道県の全てにおいて、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、基礎給料月額等のうち諸手当に係る金額については、施行規則等により、都道府県ごとに当該年度の5月1日に在職する教職員を対象として、それぞれの手当の種類ごとに、当該教職員が一般職の国家公務員であると仮定した場合に支給されることとなる当該年度の5月分の金額等を基として算定した教職員一人当たりの手当の月額単価等とすることとなっている。そして、文部科学省が各都道府県に配布した24、25両年度の調書には、対象となる教職員は当該年度の「5月1日に在職する」者であることなどのほか、基礎給料月額等の諸手当のうち扶養手当、住居手当、通勤手当等は「5月2日以降の支給要件の変更については考慮しないものとする」と注記されていた。

しかし、9道県においては、この注記は、5月2日以降に支給取消又は支給認定の事務手続を行った場合にはこれらを反映しないものと解するなどして、扶養手当等の月額単価を算定していた。すなわち、実際には5月1日以前に扶養手当等の支給要件を満たさなくなっていたり新たに支給要件を満たしていたりなどした教職員で、5月2日以降に5月1日以前に遡及して扶養手当等の支給取消又は支給認定の事務手続が行われたことにより、負担金の算定上の基準日である5月1日以前に遡及して支給対象とならなくなったり新たに支給対象となったりなどした教職員の扶養手当等(以下「遡及分手当」という。)を月額単価に反映させていなかった。

したがって、9道県において遡及分手当を反映させた扶養手当等の月額単価に基づき算定総額を算定して適正な負担金の交付額を算定すると、6道県(注3)において、算定総額計7677万余円が過大に算定され、この結果、負担金計2559万余円が過大に交付されており、また、5県(注4)において、算定総額計9087万余円が過小に算定され、この結果、負担金計3029万余円が過小に交付されていたと認められた。

(注3)
6道県  北海道、青森、静岡、愛媛、長崎、熊本各県
(注4)
5県  埼玉、滋賀、島根、愛媛、熊本各県

このように、当該年度の5月1日に在職する教職員の扶養手当等について、遡及分手当を反映させることなく扶養手当等の月額単価を算定し、これに基づき算定総額を算定していたことにより、算定総額が適正に算定されておらず、負担金が過大又は過小に交付されていて、その交付額が適正かつ公平に算定されていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、9道県において算定総額の算定についての理解が十分でなかったことにもよるが、文部科学省において、調書の注記が誤解を生じさせるものとなっていて、適正な算定総額の算定を行うために必要な注意事項を具体的に明示していなかったこと、各都道府県に対する当該取扱いの周知が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省は、算定総額の算定に当たり、当該年度の5月1日に在職する教職員に支給される諸手当には、5月2日以降に事務手続が行われたことにより算定上の基準日である5月1日以前に遡及して支給対象とならなくなるなどしたものを反映する必要があることについて、27年度の調書等に具体的に明示するとともに、各都道府県に対して、27年4月に説明会を開催したり、同年6月及び7月に事務連絡を発したりして、当該取扱いについて周知徹底を図る処置を講じた。