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  • 平成26年度|
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雇用保険の事業所内保育施設設置・運営等支援助成金の支給が適正でなかったもの[3労働局](56)-(58)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)男女均等雇用対策費
部局等
3労働局
支給の相手方
3事業主
不当と認める事業所内保育施設設置・運営等支援助成金
(1)設置費助成金
(2)運営費助成金
事業所内保育施設設置・運営等支援助成金の支給額の合計
(1)26,544,000円(平成23年度)
(2)8,152,000円(平成24年度)
計 34,696,000円
不当と認める支給額
(1)3,304,000円(平成23年度)
(2)1,396,000円(平成24年度)
計 4,700,000円

1 制度の概要

(1)事業所内保育施設設置・運営等支援助成金の概要

事業所内保育施設設置・運営等支援助成金(以下「助成金」という。)は、雇用保険で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、職業生活と家庭生活の両立支援に対する事業主の取組を促し、もってその労働者の雇用の安定に資することを目的として、自ら雇用する労働者等の子の保育を行うために一定基準を満たす事業所内保育施設(以下「保育施設」という。)の設置、運営等を行った雇用保険の適用事業主等(以下「事業主等」という。)に対して、都道府県労働局(以下「労働局」という。)が支給しているものである。

(2)助成金の支給

厚生労働省が定めた両立支援助成金(事業所内保育施設設置・運営等支援助成金、子育て期短時間勤務支援助成金)支給要領(平成24年4月雇児発0401第5号。平成24年3月以前は平成23年9月雇児0901第13号等。以下「支給要領」という。)によれば、助成金の支給対象となる費用には、保育施設の設置費、運営費等がある。これらのうち、設置費を支給対象とする助成金(以下「設置費助成金」という。)の助成率は保育施設の設置に要した費用の3分の2等で、その支給限度額は2300万円となっており、事業主等は、労働局の認定を受けた事業所内保育施設設置・運営計画に基づき保育施設を設置した後、保育施設の設置費等を記載した事業所内保育施設設置・運営等支援助成金支給申請書(以下「支給申請書」という。)に、工事請負契約書(工事費内訳書を含む。)、設置費等の領収書等を添付して労働局へ提出することとなっている。

また、運営費を支給対象とする助成金(以下「運営費助成金」という。)の支給要件は、専任の保育士を常時2名以上配置することなどとなっており、支給期間は、保育施設の運営開始日から10年間などとされ、助成率は保育施設の運営に要した費用(専任の保育士等の人件費、施設が賃借である場合はその賃借料等)の合計額に対して、運営開始1年目から5年目までは3分の2等で、その支給限度額は保育施設の運営の形態等に応じた所定の額となっている。そして、事業主等は、毎年1月から12月までの運営費等を記載した支給申請書に、保育士の賃金台帳、出勤簿、保育士証、保育の実施状況を明らかにする保育日誌、保育施設が賃借である場合は当該施設の賃借料領収書等を添付して翌年1月中に労働局に提出することとなっている。

支給要領によれば、支給申請書等の提出を受けた労働局は、支給申請書に記載された設置費等の金額が領収書や賃金台帳等から算出される金額と合致するかなど支給申請書等の内容を審査して、適切なものであると認めた場合、これらの書類に基づき助成金の額を算定した上で支給決定を行い、これに基づいて助成金の支給を行うこととされている。そして、労働局は、支給の要件を満たしていなかったことが支給後に判明したり、事業主等が助成金の支給すべき額を超えて助成金の支給を受けたりなどしていた場合は、支給決定を取り消した上で支給した助成金を返還させることなどとされている。

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主等に対する設置費助成金等の支給決定が適正に行われているかなどに着眼して、全国47労働局のうち、3労働局において会計実地検査を行い、23年度から25年度までの間に設置費助成金等の支給を受けた事業主等から5事業主を選定して、設置費助成金等の支給の適否について事業主から提出された支給申請書等の書類を確認するなどの方法により検査した。

(2)検査の結果

検査の結果、3労働局管内における3事業主が、設置費助成金の支給申請に当たり、設置費助成金の支給対象とはならない部分に係る設置費を含めるなどしたり、運営費助成金の支給申請に当たり、専任の保育士を常時2名以上配置することとする支給の要件を満たしていなかったりなどしているのに、3労働局は、これらの事業主に対して支給決定を行っていた。したがって、これら3事業主に対する設置費助成金等計34,696,000円のうち4,700,000円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、助成金の支給申請に係る審査に当たり、上記の3労働局において、事業主から提出された支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

神奈川労働局は、平成23年度に、管内の事業主Aから保育施設(185.66m2)の設置費を20,000,000円とする支給申請書、工事請負契約書、領収書等の提出を受けて、これに基づき算定した設置費助成金11,074,000円をAに支給していた。しかし、この設置費20,000,000円には、当該保育施設の費用に加えて、Aが自ら運営する介護施設との共有スペース(73.23m2)の設置に要した費用が含まれており、このうち共有スペースについて、保育施設と介護施設の専有面積の比率に基づいて案分して得られる介護施設分の共有スペース(26.19m2)に係る費用相当額は設置費助成金の支給対象とはならないことから、介護施設分の共有スペースに係る設置費助成金429,000円は支給の要件を満たしていなかった。

また、同局は、24年2月から12月までの11か月分に係る運営費助成金について、Aから支給申請書、保育士の出勤簿、保育士証、賃借料領収書等の提出を受けて、これに基づき算定した運営費助成金5,940,000円をAに支給していた。しかし、同年8月及び9月の2か月間は、保育に従事している者が保育士の資格を有していなかったことから専任の保育士を常時2名以上配置することとする支給の要件を満たしていなかったり、前記の自ら運営する介護施設と保育施設の面積の比率に基づく賃借料の適正な算定が行われていなかったりしていたことなどから、運営費助成金1,080,000円が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

以上を労働局ごとに示すと次のとおりである。

  労働局名 本院の調査に係る事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した助成金 左のうち不当と認める助成金 摘要
        千円 千円  
(56) 神奈川 1 1 (1)11,074 (1)429 専任の保育士を常時2名以上配置することとする支給の要件を満たしていなかったものなど
        (2)5,940 (2)1,080
(57) 大阪 1 1 (1)10,850 (1)2,397 助成金の支給対象外となる経費を含めていたもの
(58) 広島 3 1 (1)4,620 (1)478 助成金の支給対象外となる経費を含めていたものなど
        (2)2,212 (2)316
(56)―(58)の計 5 3 (1)26,544 (1)3,304  
      (2)8,152 (2)1,396  
合計     34,696 4,700  
(注)
「左の事業主に支給した助成金」及び「左のうち不当と認める助成金」の(1)は設置費助成金、(2)は運営費助成金に係る分である。