1件 不当と認める国庫補助金 119,008,000円
子育て支援対策臨時特例交付金(以下「交付金」という。)は、「平成20年度子育て支援対策臨時特例交付金(安心こども基金)の交付について」(平成21年厚生労働省発雇児第0305005号)等に基づき、保育所の整備等を実施することなどにより、子どもを安心して育てることができるような体制整備を行うことを目的として、都道府県が行う基金の造成(以下、造成された基金を「安心こども基金」という。)に必要な経費として国が交付するものである。
都道府県は、「平成20年度子育て支援対策臨時特例交付金(安心こども基金)の運営について」(平成21年雇児発第0305005号。以下「管理運営要領」という。)に基づき、安心こども基金の管理、運用、取崩し等に係る事業(以下「基金事業」という。)を実施することとなっており、基金事業に係る計画の範囲内で、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が行う26事業から成る特別対策事業に必要な経費を安心こども基金から取り崩して支出することとなっている(以下、安心こども基金から取り崩して支出したものを「助成金」という。)(図参照)。
都道府県は、管理運営要領に基づき、特別対策事業に係る助成金の助成申請及び助成決定の事務に係る手続等に関する助成要綱を定めることとなっている。
特別対策事業のうち賃貸物件による保育所整備事業(以下「整備事業」という。)は、都市部を中心とした保育所の整備が困難な状況の地域において、整備事業の実施主体である市町村が、保育所の設置主体となる事業者に対して、保育所の設置に当たって必要な建物賃借料、借上時における改修費等の費用の一部を補助金等として交付し、この補助金等の額に基づき、都道府県が安心こども基金から取り崩して市町村に交付する助成金の額を算定することとなっている。
整備事業に係る助成金の交付額は、管理運営要領等に基づき、整備事業ごとに、対象経費の実支出額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額を選定し、選定された額と基準額とを比較していずれか少ない方の額に補助率を乗じて得た額の範囲内の額とすることとなっている。また、管理運営要領等では、整備事業における国、市町村及び事業者の負担割合を定めていることから、対象経費の実支出額に計上できる額は、市町村が事業者に交付した補助金の額を基に、国、市町村及び事業者の負担割合に従って算出した額が上限額となる。
本院が、5都府県の31市区において会計実地検査を行ったところ、1市において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 基金使用額 | 左に対する交付金相当額 | 不当と認める基金使用額 | 不当と認める交付金相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(178) | 厚生労働本省 | 神奈川県 | 川崎市 (事業主体) |
安心こども基金 | 21~25 | 1,644,591 | 1,644,591 | 119,008 | 119,008 |
神奈川県は、平成21年度から25年度までに、川崎市が25事業者が実施した275整備事業に対して、同市が定めた補助要綱に基づいて算定した補助金(以下、同市から交付する補助金を「市補助金」という。)を交付したとして、同市に対して助成金計1,644,591,000円(交付金相当額同額)を交付していた。
しかし、同市は、同県に提出した実績報告書において、市補助金の額を基に、国、市町村及び事業者の負担割合に従って算出した額を上限額として対象経費の実支出額に計上するのではなく、誤って事業者の総事業費をそのまま対象経費の実支出額に計上するなどしていたため、上記275整備事業のうちの90整備事業において、国、同市及び事業者における本来の負担割合による負担となっておらず、助成金計119,008,000円(交付金相当額同額)が過大に使用されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において管理運営要領等の理解が十分でなく同市の整備事業に係る対象経費の実支出額の計上の際の調査確認が十分でなかったこと、同県において同市から提出された実績報告書等の審査及び確認並びに同市に対する指導が十分でなかったこと、厚生労働省において同県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。