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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(7)生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[13都県](183)-(230)


48件 不当と認める国庫補助金 301,901,887円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(平成20年度から25年度までは、これらを合わせて生活保護費等負担金、19年度以前は生活保護費負担金。以下「負担金」という。)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力等あらゆるものを活用することを要件としており、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の生活保護法(昭和25年法律第144号)以外の他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者については極力その利用に努めさせることとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、次のとおり算定することとなっている。

生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたものの画像

この費用の額及び返還金等の額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の額とする。

① 保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、その所在地域、構成員の数、年齢等の別に応じて算定される生活費の額から、被保護世帯における就労収入、年金又は手当の受給額等を基に収入として認定される額を控除して決定された生活扶助等に係る保護費の額

② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その全額又は一部を事業主体が負担するものとして決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の額は、急迫の場合等において、資力があるにもかかわらず保護を受けた者が、資産を売却するなどして収入を得たときに返還する保護費の額等とする。

本院が、30都道府県の254事業主体において会計実地検査を行ったところ、13都県の48事業主体において、被保護世帯の世帯主等に年金受給権が発生していたにもかかわらず裁定請求手続が行われていなかったことから、当該世帯主等が年金を受給しておらず年金が収入として認定されていなかったなどのため、計265世帯に対する保護費が過大に支給されていた。このため、負担金計301,901,887円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において被保護者の年金受給権等に係る調査確認及び裁定請求手続に係る指導が十分でなかったこと、都県において適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

事業主体Aは、平成11年6月に世帯Bを対象として保護を開始しており、20年7月から25年3月までの保護費の支給に当たり、世帯主Cからの収入はないとの届出に基づき、保護費の額を決定していた。

しかし、世帯主Cには16年6月に年金受給権が発生していたにもかかわらず、事業主体Aによる調査確認が十分でなく、裁定請求手続が行われていなかったことから、世帯主Cは年金を受給していなかった。本院の検査を踏まえて、事業主体Aが裁定請求手続に係る指導を行った結果、世帯主Cは計2,569,229円の年金を遡及して受給した。したがって、事業主体Aがこの額を収入として認定していれば、当該収入分の保護費計2,569,229円は支給の必要がなく、同額が過大に支給されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(183) 埼玉県 熊谷市 20~25 102,421 76,815 9,595 7,196 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(184) 川口市 20~25 117,483 88,112 24,493 18,369 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(185) 所沢市 20~25 29,291 21,968 2,824 2,118 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(186) 春日部市 20~25 63,004 47,253 15,071 11,303
(187) 上尾市 21~25 21,196 15,897 4,965 3,724
(188) 草加市 20~25 17,615 13,211 7,718 5,788
(189) 越谷市 20~25 98,974 74,230 14,579 10,934
(190) 蕨市 20~25 91,828 68,871 20,765 15,573 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(191) 朝霞市 20~25 122,003 91,502 24,734 18,550 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(192) 新座市 20~24 6,766 5,074 2,544 1,908
(193) 三郷市 20~25 45,146 33,859 3,622 2,716
(194) ふじみ野市 20~25 22,445 16,834 4,969 3,726
(195) 千葉県 木更津市 20~24 18,439 13,829 3,342 2,506
(196) 野田市 19~25 96,665 72,499 13,530 10,147 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(197) 成田市 20~25 70,228 52,671 9,122 6,841
(198) 東京都 江東区 21~25 18,537 13,902 7,100 5,325
(199) 品川区 21~25 86,608 64,956 16,069 12,052
(200) 大田区 20~25 172,428 129,321 21,553 16,164 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(201) 世田谷区 20~25 21,128 15,846 7,872 5,904
(202) 渋谷区 21~25 51,492 38,619 3,060 2,295
(203) 杉並区 20~25 53,093 39,820 5,129 3,846
(204) 豊島区 20~25 57,969 43,477 16,447 12,335
(205) 練馬区 20~25 59,487 44,615 15,662 11,746
(206) 足立区 20~25 88,971 66,728 13,347 10,010
(207) 葛飾区 20~25 60,126 45,094 5,591 4,193 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(208) 福生市 20~25 61,772 46,328 7,784 5,838 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(209) 岐阜県 岐阜市 21~26 21,211 15,908 2,929 2,196
(210) 滋賀県 彦根市 20~25 39,025 29,269 3,964 2,973
(211) 長浜市 20~25 126,325 94,743 17,468 13,101 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(212) 東近江市 20~25 77,243 57,932 11,910 8,932 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(213) 兵庫県 兵庫県 21~26 32,547 24,410 3,038 2,279
(214) 姫路市 22~26 29,005 21,753 5,349 4,012
(215) たつの市 21~26 7,904 5,928 2,470 1,852
(216) 奈良県 奈良市 19~25 170,951 128,213 20,276 15,207 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(217) 大和高田市 21~25 13,717 10,287 1,723 1,292 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(218) 大和郡山市 19~25 20,902 15,677 2,845 2,134 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(219) 橿原市 20~25 9,698 7,273 2,973 2,229 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(220) 生駒市 21~25 10,702 8,026 1,862 1,396
(221) 広島県 広島市 20~25 88,939 66,704 11,124 8,343 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(222) 愛媛県 松山市 21~25 5,241 3,931 1,603 1,202 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(223) 大洲市 21~26 7,032 5,274 4,688 3,516
(224) 四国中央市 23~26 10,077 7,558 1,712 1,284
(225) 福岡県 北九州市 20~25 37,587 28,190 5,308 3,981
(226) 福岡市 20~25 56,714 42,535 5,989 4,492
(227) 久留米市 20~25 11,601 8,701 2,253 1,690
(228) 長崎県 雲仙市 20~24 11,262 8,446 5,663 4,247 返還決定額を誤っていたもの
(229) 熊本県 玉名市 21~26 32,176 24,132 3,663 2,747 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(230) 沖縄県 那覇市 21~25 24,234 18,175 2,217 1,662 年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(183)―(230)の計 2,499,229 1,874,422 402,535 301,901