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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(14)緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](285)-(294)


10件 不当と認める国庫補助金 222,016,588円

緊急雇用創出事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「緊急雇用創出基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、平成20年度から25年度までに計1兆5798億余円が交付されている。

また、ふるさと雇用再生特別交付金は、同省が定めた「平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130002号)に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、ふるさと雇用再生特別基金(以下「ふるさと基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、20年度に2500億円が交付されている。

そして、各都道府県及び各市町村等(以下「都道府県等」という。)は、同省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号)等に基づき、緊急雇用創出基金を財源として失業者に対する原則として1年以内の短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業を、また、同省が定めた「ふるさと雇用再生特別基金事業実施要領」(平成21年職発第0130005号)等に基づき、ふるさと基金を財源として地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会を創出するふるさと雇用再生特別基金事業を、それぞれ実施している(以下、緊急雇用創出事業とふるさと雇用再生特別基金事業を合わせて「基金事業」といい、また、緊急雇用創出事業実施要領とふるさと雇用再生特別基金事業実施要領を合わせて「実施要領」という。)。なお、ふるさと雇用再生特別基金事業の実施は23年度に終了している。

基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等へ委託し、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業を実施する場合は、委託費相当額をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、管内の市町村等が委託事業等を実施する場合は、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10)を交付している。

実施要領等によれば、委託費の対象経費は、受託者に新規に雇用された者に係る賃金等の人件費、受託者に既に雇用されている者(以下「既存雇用者」という。)が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。そして、事業実施の要件は、新規に雇用する予定の労働者の募集に当たり、より多くの求職者に対して当該事業への応募の機会を提供する観点から、公共職業安定所への求人申込みなどにより公募を図ることなどとされている。

本院が、10都道県において、10都道県及びこれらの都道県から補助金の交付を受けた管内の132市区町村を対象に会計実地検査を行った結果、3道県(注1)及び23市区町村(注2)が実施した基金事業において、受託者等が、基金事業の対象とならない経費を計上したり、新規に雇用する失業者の募集に当たり公募を行っていなかったりなどしていたため、計222,016,588円(交付金相当額同額)が、10都道県(注3)に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の10都道県及び23市区町村において市区町村又は受託者から提出された委託事業に係る実績報告書等の内容の調査確認が十分でなかったこと、10都道県において23市区町村に対する指導監督が十分でなかったこと、厚生労働省において10都道県に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
3道県 北海道、山梨、広島両県
(注2)
23 市区町村 函館、盛岡、花巻、一関、釜石、二戸、奥州、鶴岡、高岡、魚津、津、防府、高松、三豊各市、豊島区、上川郡東川、白老郡白老、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、西八代郡市川三郷、南巨摩郡富士川、安芸郡府中各町、南都留郡鳴沢村
(注3)
10 都道県 東京都、北海道、岩手、山形、富山、山梨、三重、広島、山口、香川各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

岩手県下閉伊郡山田町は、緊急雇用創出基金を財源とした委託事業として、町内の物資センターの運営や防犯パトロールを行うことなどを内容とした「山田町災害復興支援事業」を平成23年度に430,593,050円で、「復興やまだ応援事業」を24年度に791,417,000円でそれぞれ特定非営利活動法人大雪りばぁねっと(以下「法人」という。)に委託していた。そして、23年度事業については、同町は、法人から実績報告書の提出を受けて、委託費を430,486,582円とし、岩手県は同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。

また、24年度事業については、事業実施期間の途中で継続が困難となったことから、同町は法人との契約の一部を解除し、法人から実績報告書の提出を受け、委託費を363,208,574円と確定し、同県は、このうち経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等を控除し、289,423,261円が補助の対象となるとして、同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。

そして、24年度事業において経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等が見受けられたことから、同県は23年度事業についても、委託費の再調査を行い、23年度事業の補助金の額を262,996,133円と修正していた。

そこで、本院においても、実績報告書等を基に検査したところ、法人は、主に北海道旭川市内の法人の事務所において、既存雇用者2名が、本件委託事業に係る事務を専従で担当していたとして、事業期間内に当該2名に対して支払われた人件費23年度計7,779,000円、24年度計6,879,000円の全額を本件委託事業に要した経費として実績報告書に計上していた。

しかし、法人において、当該2名に係る業務日誌を作成していなかったことから、法人が同町へ提出した本件委託事業に係る出張の復命書等により当該2名が本件委託事業に係る事務に従事した日数を確認して、人件費を算定したところ、23年度2,034,369円、24年度2,411,000円となった。したがって、前記の実績報告書への計上額との差額23年度5,744,631円、24年度4,468,000円、計10,212,631円は、本件委託事業の対象経費とは認められない。

また、法人は、本件委託事業の実施に必要な経費とは認められない打上げ花火の購入費等2,930,527円を本件委託事業の対象経費として計上していた。

したがって、本件委託事業の対象経費とは認められない計13,143,158円(交付金相当額同額)が岩手県から同町に交付される補助金として緊急雇用創出基金から過大に取り崩され、補助の目的外に使用されていた。

なお、本件については、平成25年度決算検査報告の「国民の関心の高い事項等に関する検査状況」において、検査を実施している旨を記述した(平成25年度決算検査報告)。

これを事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 基金造成額 左に対する交付金交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円
(285) 厚生労働本省 北海道 緊急雇用創出基金 20〜25 53,490,000 53,490,000 6,354 6,354
      ふるさと基金 20 8,210,000 8,210,000 4,424 4,424
      小計   61,700,000 61,700,000 10,779 10,779
(286) 岩手県 緊急雇用創出基金 20〜25 95,284,537 95,284,537 56,929 56,929
(287) 山形県 20〜25 26,977,000 26,977,000 11,788 11,788
(288) 東京都 20〜25 61,236,400 61,236,400 27,684 27,684
(289) 富山県 20〜25 20,007,600 20,007,600 4,719 4,719
(290) 山梨県 20〜25 16,691,800 16,691,800 80,548 80,548
(291) 三重県 20〜25 25,585,000 25,585,000 4,386 4,386
(292) 広島県 20〜25 24,916,300 24,916,300 19,285 19,285
(293) 山口県 20〜25 16,105,100 16,105,100 1,579 1,579
(294) 香川県 20〜25 11,755,000 11,755,000 4,315 4,315
(285)—(294)の計   360,258,737 360,258,737 222,016 222,016