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自立支援給付の介護給付費及び訓練等給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[8府県、1市](311)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
8府県、1市
国の負担の根拠
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。平成25年3月31日以前は障害者自立支援法)
実施主体
市40、町6、村3、計49実施主体
事業者
指定生活介護事業者6、指定就労移行支援事業者2、指定就労継続支援B型事業者6、計14事業者
過大に支払われた介護給付費等に係る障害福祉サービスの種類
生活介護サービス、就労移行支援サービス、就労継続支援B型サービス
過大に支払われた介護給付費等の件数
1,843件(平成20年度~25年度)
過大に支払われた介護給付費等の額
54,574,529円(平成20年度~25年度)
不当と認める国の負担額
27,287,262円(平成20年度~25年度)

1 自立支援給付の概要

(1)自立支援給付

自立支援給付は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。平成25年3月31日以前は障害者自立支援法)に基づき、障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うものである。

(2)障害福祉サービス

自立支援給付のうち、障害福祉サービスに係る給付費の支給には、介護給付費及び訓練等給付費(以下、これらを合わせて「介護給付費等」という。)がある。介護給付費の支給の対象には生活介護サービス(注1)等があり、訓練等給付費の支給の対象には就労移行支援サービス(注2)、就労継続支援B型サービス(注3)等がある。

そして、障害者及び障害児が障害福祉サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

ア 障害者又は障害児の保護者は、居住地の市町村(特別区を含む。以下同じ。)から介護給付費等を支給する旨の決定を受ける。

イ 支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者(以下、これらを合わせて「支給決定障害者等」という。)は、支給決定の有効期間内に都道府県知事等の指定を受けた指定障害福祉サービス事業者(以下「事業者」という。)の事業所において、障害福祉サービスを受ける。

(注1)
生活介護サービス  常時介護を要する障害者に対して行われる、入浴、排せつなどの介護、掃除等の家事、生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援並びに創作的活動及び生産活動の機会の提供その他の身体機能等の向上のために必要な支援
(注2)
就労移行支援サービス  就労を希望する65歳未満の障害者で通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、生産活動等の機会の提供を通じて行われる、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
(注3)
就労継続支援B型サービス  雇用契約に基づいて通常の事業所に就労することが困難な障害者に対して、就労の機会を提供するとともに、生産活動等の機会の提供を通じて行われる、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援

(3)障害福祉サービスに要した費用の額の算定

事業者が障害福祉サービスを提供して請求することができる費用の額は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害福祉サービスの種類ごとに定められた所定単位数に単価(10円~11.22円)を乗じて算定することとなっている。

そして、生活介護サービス、就労移行支援サービス及び就労継続支援B型サービスの各サービスに係る介護給付費等は、事業者が過度に利用者を受け入れることを未然に防止して、適正な障害福祉サービスの提供を確保するために、算定基準等に基づき、サービスの利用定員が12人以上の事業所において、直近の過去3か月間のサービスの利用者の延べ人数が、当該サービスの利用定員に開所日数を乗じて得た数に100分の125を乗じて得た数等(以下「受入可能人数」という。)を超える場合等には、所定単位数に100分の70を乗じて得た単位数を基に算定することとなっている。

(4)介護給付費等

市町村は、支給決定障害者等が事業者から障害福祉サービスの提供を受けたときは、これに係る介護給付費等を事業者に支払うこととなっており、介護給付費等は、障害福祉サービスに要した費用の額から当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。

介護給付費等の支払手続については、①事業者が、介護給付費等を記載した介護給付費・訓練等給付費等請求書等(以下「請求書等」という。)を市町村から介護給付費等に係る支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会に送付し、②同連合会は、事業者から送付された請求書等の点検を行い、介護給付費等を市町村に請求して、③請求を受けた市町村は、金額等を算定基準等に照らして審査した上で、同連合会を通じて事業者に介護給付費等を支払うこととなっている。

そして、国は、障害福祉サービスに要した費用について市町村が支弁した介護給付費等の100分の50を負担している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、介護給付費等の算定が適正に行われているかに着眼して、26都道府県において、1,574事業者に対する介護給付費等の支払について、介護給付費等の請求に係る関係書類等により会計実地検査を行った。そして、介護給付費等の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

検査の結果、8府県及び1市に所在する14事業者は、事業所における直近の過去3か月間のサービスの利用者の延べ人数が受入可能人数を超えるなどしていたのに所定単位数に100分の70を乗ずることなく単位数を算定していたため、20年度から25年度までの間に、1,843件の請求に対して49市町村が支払った介護給付費等が計54,574,529円過大となっていて、これに対する国の負担額計27,287,262円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等に対する理解が十分でなかったことにもよるが、市町村において介護給付費等の算定について審査が十分でなかったこと、府県等において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

茨城県に所在する事業者Aは、生活介護サービスの提供を行った事業所における介護給付費等の算定に当たり、平成21年1月から22年6月までの間において、直近の過去3か月間の利用者の延べ人数が受入可能人数を超えているなどしていたのに、その間に障害福祉サービスの提供を受けた利用者に係る406件について、所定単位数に100分の70を乗じていなかった。

このため、406件の請求に対して8市1町1村が支払った介護給付費等が計13,557,903円過大となっていて、これに対する国の負担額計6,778,951円は負担の必要がなかった。

これを府県等別に示すと次のとおりである。

府県等名 実施主体
(事業者数)
年度 過大に支払われた介護給付費等の件数 過大に支払われた介護給付費等 不当と認める国の負担額 摘要
      千円 千円  
茨城県 14市町村(2) 20~23 458 14,809 7,404 生活介護サービス
高崎市 4市村(1) 25 90 3,001 1,500 就労継続支援B型サービス
千葉県 4市町(1) 23 258 5,032 2,516
富山県 1市(1) 24 65 2,386 1,193 就労移行支援サービス
山梨県 2市(1) 24、25 57 1,403 701 生活介護サービス
長野県 7市町村(2) 24 141 5,734 2,867 生活介護サービス等
愛知県 9市(2) 24、25 270 8,145 4,072 就労継続支援B型サービス
京都府 5市(2) 21、22 126 4,605 2,302 生活介護サービス等
島根県 3市(2) 21~23 378 9,454 4,727
49市町村(14) 20~25 1,843 54,574 27,287