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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(5)国立ハンセン病療養所における入所者の療養等に必要な物品の調達について、生活用物品の調達及び管理を行う際には、会計法令等を遵守して会計経理が適正に行われるよう是正改善の処置を求め、並びに後発医薬品の使用促進を図るよう意見を表示したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国立ハンセン病療養所 (項)国立ハンセン病療養所運営費
部局等
厚生労働本省
検査の対象
厚生労働本省、13国立ハンセン病療養所
療養所が調達する生活用物品の概要
入所者が居住する施設内等での療養生活において使用する物品
生活用物品の調達額(1)
7946万余円(平成25、26両年度)
(1)のうち適正に契約に関する事務を行っていないものに係る額(2)
2561万円
(1)のうち検収を行うことなく購入代金を支払っているものに係る額(3)
1558万円
(1)のうち備品として物品管理簿に記録するなどして管理していないものに係る額(4)
839万円
(2)から(4)までの純計
3345万円
療養所が調達する医薬品の概要
入所者の治療に必要な医薬品
医薬品の調達額
12億7657万余円(平成25、26両年度)
上記のうち後発医薬品のある先発医薬品の調達額
5億1302万円(背景金額)

【是正改善の処置を求め及び意見を表示したものの全文】

国立ハンセン病療養所における物品の調達等について

(平成27年10月29日付け 厚生労働大臣宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示する。

1 国立ハンセン病療養所等の概要

(1)国立ハンセン病療養所の概要

貴省は、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)に基づき全国の13か所に設置された国立ハンセン病療養所(以下「療養所」という。)において、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(平成20年法律第82号。以下「促進法」という。)に規定する入所者に対して、必要な療養等を行っている。

そして、療養所は、促進法等に基づき、入所者に対する必要な療養が確保されるよう、入所者に住居、医療、食事等を提供しており、多くの療養所は、毎年度、療養所の入所者が居住する施設内等で使用する家電製品等の物品(以下「生活用物品」という。)を入所者の要望に基づき国の物品として調達するなどして、入所者に対して供用している。また、療養所は、療養所内で必要な医薬品についても、国の物品として調達して、入所者に対して処方している。

(2)国の物品調達契約及び物品管理の事務

国の物品調達契約の事務は、会計法(昭和22年法律第35号)等の会計法令等に従って執行される。このうち、契約に関する事務については、会計法によれば、各省各庁の長がその管理を行い、各省各庁の長から契約に関する事務の委任を受けた職員が契約担当官等として当該事務を行うこととされている。そして、契約の締結については、会計法等によれば、原則として競争に付することとされているが、予定価格が160万円を超えない財産を買い入れる場合等には、随意契約によることができることとされている。そして、契約担当官等は、随意契約によろうとするときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならないこととされている。

また、会計法によれば、契約担当官等は、請負契約又は物件の買入れその他の契約については、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査(以下「検収」という。)を行わなければならないこととされている。

一方、物品管理法(昭和31年法律第113号)等によれば、国の物品管理については、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分(以下、これらを合わせて「管理」という。)を行い、各省各庁の長からその管理に関する事務の委任を受けた職員が物品管理官として当該事務を行うこととされている。そして、物品管理官は、物品管理簿を備えて、その管理する物品の分類及び品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項等を記録することとされている。

また、貴省では、厚生労働省所管物品管理取扱規程(平成13年厚生労働省訓第30号)に基づき、物品管理官は、物品のうち、その性質上原形のまま比較的長期の使用に耐え得るものについては、取得価格がおおむね5万円未満のものを除き、備品として物品管理簿に記録するなどして管理することとなっている。

(3)後発医薬品の使用促進の取組

医薬品には、新しい有効成分、効能及び効果を有していて、臨床試験等により有効性や安全性が確認されて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)に基づいて厚生労働大臣に承認された医薬品(以下「先発医薬品」という。)、先発医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果について同一性を有する医薬品(以下「後発医薬品」という。)等がある。そして、後発医薬品は、先発医薬品の特許等の期間満了後に販売される医薬品で、先発医薬品に比べて開発期間が短いため、先発医薬品の薬価より安価となるのが一般的となっており、先発医薬品と品質、有効性及び安全性が同等であるとして上記の法律に基づいて厚生労働大臣に承認されたものである。

貴省は、従前から、後発医薬品の普及を図ってきたが、平成25年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、その中で30年3月末までに後発医薬品の数量シェア(後発医薬品の数量を、後発医薬品のある先発医薬品の数量と後発医薬品の数量の合計で除して得た割合。以下同じ。)を60%以上とする目標を定め、使用促進のための施策に積極的に取り組んでいる。そして、27年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」では、後発医薬品の数量シェアの目標値を29年央に70%以上とするとともに、30年度から32年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とすることが定められている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

全国の13療養所(注1)における27年3月末時点における入所者は計1,722名となっており、療養所は、毎年度、入所者の療養に必要であるなどとして多額の生活用物品や医薬品を調達している。また、後発医薬品の使用促進については、27年6月の閣議決定等を踏まえ、貴省の施設等機関である療養所においても後発医薬品の使用の促進を図る必要がある。

そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、生活用物品の調達及び管理に係る会計経理は適正に行われているか、後発医薬品の使用促進に努めているかなどに着眼して、13療養所において、25、26両年度における生活用物品の調達額(25年度計4085万余円、26年度計3860万余円、合計7946万余円)及び医薬品の調達額(25年度計6億5055万余円、26年度計6億2601万余円、合計12億7657万余円)を対象として、貴省本省において、療養所における後発医薬品の使用促進等に係る指導状況等について聴取するとともに、13療養所のうち9療養所(注2)において、生活用物品の調達及び管理に係る会計経理や医薬品の調達状況について関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、残りの4療養所についても、調書の提出を受けるなどして同様の事項について検査した。

(注1)
13療養所 松丘保養園、東北新生園、栗生楽泉園、多磨全生園、駿河療養所、長島愛生園、邑久光明園、大島青松園、菊池恵楓園、星塚敬愛園、奄美和光園、沖縄愛楽園、宮古南静園
(注2)
9療養所 東北新生園、栗生楽泉園、多磨全生園、駿河療養所、長島愛生園、邑久光明園、大島青松園、菊池恵楓園、沖縄愛楽園

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)療養所における生活用物品の調達及び管理の状況

ア 生活用物品の調達状況

13療養所のうち11療養所は、生活用物品を調達しており、このうち5療養所においては、入所者が希望する生活用物品を療養所がとりまとめ、会計法令等に従って調達し、入所者に供用していた。

しかし、他の6療養所においては、次のような事態が見受けられた。

すなわち、生活用物品の調達に当たり、療養所が見積書を徴取した上で業者及び購入価格を決定して発注するのではなく、入所者が生活用物品を業者に発注して、療養所は、後日、当該業者から提出を受けた請求書等に基づき購入代金を支払っていた(25年度76件1390万余円、26年度81件1170万余円、計157件2561万余円)。

また、これら6療養所のうち4療養所は、業者が入所者に対して直接生活用物品の納品を行っていたため、検収を行わないまま当該業者から提出を受けた請求書等に基づき購入代金を支払っていた(25年度60件862万余円、26年度66件696万余円、計126件1558万余円)。

イ 生活用物品の管理状況

療養所が25年度以降に調達し、入所者への供用状況を確認できた生活用物品のうち、備品として管理すべき物品の管理状況についてみたところ、5療養所において、物品管理簿に記録するなどして管理していないものが見受けられた(25年度に4療養所で60個408万余円、26年度に4療養所で68個430万余円、計128個839万余円)。

ア及びイのとおり、6療養所において、入所者が生活用物品を直接業者に発注していて、療養所が適正に契約に関する事務を行っていなかったり、4療養所において、検収を行わないまま業者から提出を受けた請求書等に基づき購入代金を支払っていたり、5療養所において、備品として管理すべき生活用物品を物品管理簿に記録するなどして管理していなかったりしていて、会計経理が適正に行われていない状況となっていた。

(2)後発医薬品の使用促進等の状況

ア 後発医薬品の使用促進の状況

13療養所は、後発医薬品のある先発医薬品を25年度延べ2,416品目計2億8172万余円、26年度延べ2,119品目計2億3129万余円、合計延べ4,535品目5億1302万余円調達していた。また、後発医薬品を25年度延べ841品目計5470万余円、26年度延べ981品目計6417万余円、合計延べ1,822品目1億1887万余円調達していた。

そして、26年度の後発医薬品の数量シェアについて、療養所ごとにみると、60%以上70%未満が3療養所、50%以上60%未満が2療養所、40%以上50%未満が1療養所、30%以上40%未満が2療養所、20%以上30%未満が5療養所となっていた。このように、後発医薬品の数量シェアが60%以上となっていて後発医薬品の使用の促進が図られていると認められる療養所が3療養所ある一方で、後発医薬品の数量シェアが30%未満となっていて後発医薬品の使用の促進が十分図られていないと認められる療養所が5療養所見受けられるなど、後発医薬品の使用促進の状況が区々となっていた。

そこで、後発医薬品の使用の促進が図られている3療養所についてみると、医薬品の安定供給、先発医薬品との薬価差、他病院等の使用実績等を考慮した後発医薬品の選定基準を制定するなどして、積極的に先発医薬品から後発医薬品への切替えを行っていたり、後発医薬品への切替えの際には、入所者への説明を十分に行うなどして入所者の理解を得た上で使用の促進を図っていたりなどしていた。一方、後発医薬品の使用の促進が図られていない療養所は、このような取組が十分でなく、後発医薬品への切替えの検討を積極的に行っていなかった。

イ 後発医薬品の調達状況に係る情報の把握

後発医薬品のある先発医薬品のうち、26年度の調達額がいずれかの療養所で100万円を超えている22品目計6855万余円について、他の療養所が後発医薬品を調達していないかみたところ、同一剤形・規格の後発医薬品を調達しているものが13品目見受けられたが、後発医薬品への切替えが行われている療養所が少ない状況であった。

療養所において、他の療養所が調達している後発医薬品の具体的な調達情報を得て、当該療養所の医師、入所者等に対して十分説明することは、後発医薬品に関する医師、入所者等の理解を深めることになる。また、安定供給を行う医薬品メーカーの情報等を把握することで、安定供給に対しての不安を軽減することになる。しかし、各療養所は、上記の13品目のように他の療養所における後発医薬品の具体的な調達情報や医薬品メーカーの情報等を把握していなかった。

ア及びイのとおり、後発医薬品の使用の促進が図られている療養所がある一方で、使用の促進が図られていない療養所があったり、療養所間で後発医薬品の具体的な情報等が共有されていなかったりしている状況となっていた。

(是正改善及び改善を必要とする事態)

療養所における生活用物品の調達について、療養所が適正に契約に関する事務を行っていなかったり、検収を行わないまま業者から提出された請求書等に基づき購入代金を支払っていたり、備品として管理すべき生活用物品を物品管理簿に記録するなどして管理していなかったりしていて会計経理が適正を欠いている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、後発医薬品の使用の促進が十分図られていない療養所がある事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 貴省本省において、療養所に対して生活用物品の調達及び管理に当たり会計法令等を遵守するよう指導が十分でないこと、また、後発医薬品の使用の促進が図られている療養所の情報を収集していなかったり、調達している後発医薬品に関する具体的な情報を療養所間で共有させていなかったりしていること
  • イ 療養所において、基本的な会計経理を適正に行う認識が欠けていること、また、先発医薬品から後発医薬品への切替えの可能性についての検討や、医師、入所者等に対する後発医薬品についての説明が十分に行われていないこと

3 本院が求める是正改善の処置及び表示する意見

療養所は、今後も療養に必要な物品を多額に調達することが見込まれている。また、後発医薬品の使用促進については27年6月の閣議決定等を踏まえ、療養所においても後発医薬品への切替えの促進を図る必要がある。

ついては、貴省において、次のとおり、療養所が生活用物品の調達及び管理を行う際には会計法令等を遵守して会計経理が適正に行われるよう是正改善の処置を求めるとともに、後発医薬品の使用促進を図るよう意見を表示する。

  • ア 療養所に対して、生活用物品の調達及び管理に当たっては、見積書を徴取した上で業者及び購入価格を決定するなどして契約に関する事務を行ったり、検収を行った上で請求書等に基づき支払ったり、備品として物品管理簿に記録するなどして管理したりして、会計経理を適正に行うよう周知し、指導すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)
  • イ 後発医薬品の使用の促進が図られている療養所の情報を収集して、どのような方策によって促進が図られているかなどを検討した結果を各療養所に提供すること、療養所に対して、療養所が調達している後発医薬品の具体的な情報等を療養所間で共有することにより、医師、入所者等に対する後発医薬品についての説明を十分に行うよう指導すること(同法第36条による意見を表示するもの)