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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第7 厚生労働省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(8)日本年金機構が保有する固定資産のうち国から出資された土地及び建物について、保有の必要性を見直すとともに、不要な資産を国庫に納付させるよう適切な制度を整備するよう意見を表示したもの


部局等
厚生労働本省、日本年金機構
検査の対象
 厚生労働本省、日本年金機構
設置根拠法
日本年金機構法(平成19年法律第109号)
日本年金機構が国から承継した土地及び建物の価額(平成22年1月1日現在
土地 658億2025万円
建物 345億4201万余円
計  1003億6226万余円
日本年金機構が保有している土地及び建物の帳簿価額(平成26年度末現在)
土地 658億1718万余円
建物 376億5960万余円
計  1034億7679万余円
平成24年度から26年度までに継続的に入居者のいないなどの宿舎の土地及び建物に係る帳簿価額(26年度末現在)(1)
土地 7億2172万円
建物 9264万円
計  8億1436万円
処分方針等が決まらない事務所等の土地及び建物に係る帳簿価額(平成26年度末現在)(2)
土地 6億5520万円
建物 1829万円
計  6億7349万円
日本年金機構内部に留保されている国から承継した土地の一部を売却して得た資金(平成26年度末現在)(3)
現金及び預金1369万円
(1)から(3)までの計
15億0154万円

【意見を表示したものの全文】

日本年金機構が保有している固定資産の状況について

(平成27年10月20日付け

厚生労働大臣
日本年金機構理事長

宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 制度の概要

(1)日本年金機構の概要

厚生労働省は、厚生年金保険事業、国民年金事業等の事業に関する事務を所掌しており、当該事業に関する事務の一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に委任し、又は委託している。

機構は、平成22年1月に、社会保険庁の廃止に伴い、日本年金機構法(平成19年法律第109号。以下「機構法」という。)に基づき、厚生労働大臣の監督の下に、同大臣と密接な連携を図りながら、当該委任され、又は委託された事務を行うことにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の適正な運営等を図り、もって国民生活の安定に寄与することを目的とする特殊法人として設立された。そして、機構は、上記の事業に関する業務を行うために、本部のほか、全国9ブロック本部、312年金事務所等を設置している。

(2)機構が保有している固定資産

機構は設立の際、年金特別会計で保有していた固定資産計1031億1159万余円を承継しており、その資産は国から出資されたものとされている(以下、この資産を「政府出資財産」という。)。このうち、土地は計658億2025万円、建物は計345億4201万余円となっていた。また、機構は設立後資産を取得するなどしており、26年度末では、土地帳簿価額が計658億1718万余円、建物帳簿価額が計376億5960万余円となっていて、そのほとんどが政府出資財産である。

そして、機構法によれば、重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならないこととされており、日本年金機構の財務及び会計に関する省令(平成21年厚生労働省令第166号)において、この重要な財産は、土地及び建物とされている。

(3)固定資産の管理

日本年金機構会計規程(平成22年規程第50号)によれば、資産管理責任者(各ブロック本部管理部長等)は、固定資産等の使用、保管状況を常に把握し、その取得、維持保全、処分等について、日本年金機構固定資産等管理細則(平成22年細則第23号。以下「細則」という。)で定めるところにより、適正に管理しなければならないこととされている。

細則によれば、資産管理責任者は管理する固定資産について、使用する必要がなくなったとき又は使用できなくなったときは、統括資産管理責任者(機構本部財務部管理室長)に売却又は除却の検討を依頼しなければならないこととされており、統括資産管理責任者は資産管理責任者から依頼を受けたときは、当該固定資産の状況を確認し、処分の必要性の検討を行った上で、資産管理責任者へ検討結果の通知を行うこととされている。

(4)不要となった土地及び建物の国庫納付に係る制度

現在の機構法では、機構において、機構の保有する政府出資財産の土地及び建物が不要となった場合に、当該土地及び建物を国庫に納付(土地及び建物を売却して得た資金の納付を含む。以下同じ。)することができるような制度とはなっていない。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

機構が保有する土地、建物等の資産の多くは政府出資財産であり、機構は、これらの資産について、有効に活用する必要がある。

そこで、本院は、有効性等の観点から、機構の保有する政府出資財産のうち宿舎、事務所等の土地及び建物(以下「土地及び建物」という。)について保有の必要性は適時適切に見直されているか、機構において不要となった土地及び建物を国庫に納付することができるような制度となっていないことにより不合理な事態が生じていないかなどに着眼して、機構が承継した土地及び建物を対象として検査した。

検査に当たっては、機構本部及び9ブロック本部において、宿舎、事務所等の使用状況等に関して徴した調書を確認したり、宿舎、事務所等の現況を配置図等の関係書類により確認したりするとともに、厚生労働省において、土地及び建物の国庫納付に係る制度の現状について確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)機構における土地及び建物の使用状況等について

ア 長期間入居者のいない宿舎や他の宿舎に集約が可能な宿舎を保有し続けている事態

機構が保有している宿舎は、昭和36年度から平成15年度までの間に国において順次設置され、機構設立時に承継されて26年度末現在、207棟(設置戸数計2,473戸)となっており、その内訳は、独身寮宿舎が10棟(同365戸)、単身用宿舎が40棟(同475戸)、世帯用宿舎が157棟(同1,633戸)となっている。なお、機構設立後に宿舎の用途を廃止し、処分を行ったことはない。

そして、表1のとおり、各年度末における入居率は60%台で推移していた。

表1 各年度末における入居率

区分 平成22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
各年度末の設置戸数(A) 2,473 2,473 2,473 2,473 2,473
各年度末の入居戸数(B) 1,536 1,670 1,685 1,628 1,638
入居率(%)(B/A) 62.1 67.5 68.1 65.8 66.2

機構の職員は、全国に所在する事業所間において広域異動する場合があるため、宿舎への入居の要件を満たす者が常に多数存在する一方、人事異動に伴う退居で一時的に入居戸数が設置戸数を大きく下回る宿舎もあることから、こうした事情も考慮して、入居者がいない状態が継続している宿舎がないかなどについて検査した。

(ア)長期間入居者のいない宿舎を保有し続けている事態

26年度末現在、入居者のいない宿舎は、13棟(設置戸数計248戸)となっており、そのうち、24年度から26年度までの間、継続的に入居者がいない状態となっていた宿舎は7棟(設置戸数計170戸、土地帳簿価額計704,628,595円、建物帳簿価額計86,033,500円)で、その状況は表2のとおりとなっていた。

表2 平成24年度から26年度までの間、継続的に入居者のいない宿舎

(単位:円)
宿舎名 所在都道県名 宿舎形態 設置戸数 帳簿価額(平成26年度末)
土地 建物
北海道 世帯用 9 15,100,000 26,763,000
1区 4 33,800,000 7,900,000
1区第2 2 3,950,000
幕張寮 千葉県 独身寮 42 388,461,859 0
東久留米寮 東京都 独身寮 105 227,666,736 33,200,500
西原 沖縄県 世帯用 4 39,600,000 7,110,000
西原第2 4 7,110,000
170 704,628,595 86,033,500
注(1)
桜、1区、1区第2の各棟は、機構が承継した当初から入居者がいない。
注(2)
幕張寮と東久留米寮は同一敷地内に世帯用宿舎があるため、土地帳簿価額については、宿舎全体の帳簿価額を独身寮宿舎と世帯用宿舎の敷地面積の割合で案分して算出している。

<事例>

桜宿舎は、昭和61年12月に、社会保険庁(当時)の世帯用宿舎として北海道小樽市内に設置された。しかし、機構が国から承継した当初から入居者がおらず、平成22年9月以降、防犯のために入口を木板で閉鎖するなどしていた。このような状態にもかかわらず、機構は、桜宿舎の処分を検討することなく保有し続けている。

(イ)他の宿舎に集約が可能な宿舎を保有し続けている事態

宿舎の集約化に当たっては、立地や近隣の宿舎の入居状況、単身用の居室に世帯では入居できないことによる制約及び一時的に入居希望者が増える場合があることを考慮し個別に検討する必要がある。このような状況を踏まえて検査したところ、次のとおり、機構が国から承継した当初から集約化が可能な状態が続いている事態が見受けられた。

鷺山宿舎(設置戸数2戸、土地帳簿価額17,100,000円、建物帳簿価額6,614,000円)は、2年3月に、社会保険庁(当時)の世帯用宿舎として岐阜県岐阜市内に設置された。しかし、鷺山宿舎の近隣には、全戸が世帯用の学園町宿舎(設置戸数9戸)があり、通勤可能な事業所までの所要時間は鷺山宿舎と同様で、さらに、学園町宿舎には、機構設立以降、空室が継続的に3戸はある状態であった。このように、学園町宿舎の空室の数が常に鷺山宿舎の設置戸数を上回ることから、鷺山宿舎は、廃止して学園町宿舎に集約することが可能であると認められる。

イ 処分方針等が決まらない事務所等を保有し続けている事態

京都事務センターは24年8月に、阿波半田年金事務所は25年12月にそれぞれ事務所を移転しており、旧京都事務センター(土地帳簿価額415,000,000円、建物帳簿価額0円)及び旧阿波半田年金事務所(土地帳簿価額25,200,000円、建物帳簿価額18,290,750円)については、それぞれ実質的に設置当初の使用目的である事務所としての使用を終了していた。

しかし、機構は、両資産について、事務所の移転以降、保有の必要性を見直すことなく、26年度末現在においても処分方針を決めておらず、暫定的に倉庫として保有し続ける見込みとしている。

また、兵庫事務センター熊内倉庫(旧兵庫社会保険事務局熊内庁舎。土地帳簿価額172,000,000円、建物帳簿価額0円)は昭和37年に、群馬倉庫(旧渋川社会保険事務所。土地帳簿価額43,000,000円、建物帳簿価額0円)は44年にそれぞれ事務所として設置されたが、社会保険庁時代に事務所を移転したことに伴い、いずれも倉庫として使用されていた。そして、機構は、機構設立後においても両資産を引き続き倉庫として使用しているとしている。

そして、機構は、両資産について、平成24年度に実施した耐震診断の結果、耐震性が確保されていないことが判明したが、建物が老朽化しており、修繕には多額の費用を要することから、将来的には取り壊すとしている。

しかし、機構は、26年度末現在において、両資産について具体的な処分計画を策定していない。

(2)土地及び建物を売却して得た資金の国庫への納付について

機構は、明石年金事務所の土地の一部(敷地面積91.28m2)及び一関年金事務所の土地の一部(同15.19m2)を、地方公共団体又は国の求めに応じて、25年6月及び26年1月にそれぞれ売却しており、売却して得た資金は明石年金事務所分13,053,040円、一関年金事務所分641,018円、計13,694,058円となっていたが、この資金について、前記のとおり国庫に納付することができる制度がないため、機構内部に留保されたままとなっている。また、今後、土地及び建物を売却する場合、当該売却により得る資金も同様に機構内部に留保されることになる。

(改善を必要とする事態)

機構において、長期間入居者のいない宿舎や他の宿舎に集約が可能な宿舎を保有し続けている事態、処分方針等が決まらない事務所等を保有し続けている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

また、厚生労働省において、機構の土地及び建物が不要となった場合に、これを国庫に納付することができるような制度を整備しておらず、土地の一部を売却して得た資金が機構内部に留保されたままとなっている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。

  • ア 機構において、土地及び建物については廃止や売却を想定しておらず、財産の維持を目的とした管理をしていることから、土地及び建物の保有の必要性を見直し、保有の必要性がなくなった土地及び建物を把握して、処分することの検討が十分でないこと
  • イ 厚生労働省において、機構が保有する土地及び建物の必要性を見直すよう指導することについての認識が欠けており、また、機構の保有する土地及び建物が不要となる場合に国庫に納付させることができるような制度の整備を検討していないこと

3 本院が表示する意見

特殊法人化に伴って機構が国から承継した土地及び建物のうち不要となった固定資産については速やかに国庫に納付する要がある。そして、保有し続ける土地及び建物の中に、長期間にわたり使用されていない土地及び建物がある状況は、早急に解消する要がある。

ついては、厚生労働省及び機構において、機構の保有する土地及び建物について、保有の必要性を見直し、保有する合理的理由が認められない土地及び建物については、速やかに国庫に納付するよう、次のとおり意見を表示する。

  • ア 機構において、前記の長期間入居者のいない宿舎や他の宿舎に集約が可能な宿舎及び処分方針等が決まらない事務所等について、処分等を検討すること。そして、検討の結果、保有する合理的理由が認められないと判断した土地及び建物については、国庫に納付することができるような制度が整備され次第、土地及び建物を売却して機構内部に留保されている資金と合わせて確実に国庫への納付を行えるよう備えること。また、個々の土地及び建物について保有の必要性を見直すよう、資産管理責任者に周知徹底を図ること
  • イ 厚生労働省において、アにより上記の宿舎、事務所等を含めた個々の土地及び建物の保有の必要性を見直した結果、機構が保有する合理的理由が認められない資産については、これを国庫に納付させるよう適切な制度を整備すること