日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(平成19年法律第131号)等に基づき、厚生労働省から委託を受けて、被保険者から厚生年金保険料を源泉控除していたにもかかわらず当該保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない事業主等に対して、未納の厚生年金保険料に相当する額に所定額を加算した額(以下「特例納付保険料」という。)について納付の勧奨(以下「納付勧奨」という。)等を行っている。しかし、過半の年金事務所において、納付勧奨等の対象となる事業主等(以下「対象事業主等」という。)に対する特例納付保険料の納付勧奨等が「厚生年金特例法業務処理マニュアル」(以下「マニュアル」という。)等に定められた所定の回数行われておらず、その結果、特例納付保険料の納付を適切に行わせることができていないなどしている事態が見受けられた。
したがって、機構において、対象事業主等に対する特例納付保険料の納付勧奨等をマニュアル等に従って適切に行っていなかった事案についてマニュアル等に定められた処理を完結するとともに、今後、対象事業主等に対する特例納付保険料の納付勧奨等の進捗状況を年金事務所内で的確に把握して、その状況を機構本部に報告するようにマニュアル等の改正等を行ったり、年金事務所に納付勧奨等をマニュアル等に従って適切に行うことを周知徹底したりするよう、また、厚生労働省において、対象事業主等に対する納付勧奨等がマニュアル等に従って適切に行われるように機構に対して必要な指導監督を行うよう、厚生労働大臣及び日本年金機構理事長に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、機構において、対象事業主等に対する特例納付保険料の納付勧奨等をマニュアル等に従って適切に行っていなかった事案について、マニュアル等に定められた処理を適切に行うとともに、次のような処置を講じていた。
ア 機構は、26年11月に年金事務所に対して指示文書を発出し、対象事業主等に対する特例納付保険料の納付勧奨等の進捗状況を年金事務所内で的確に把握して、その状況を機構本部に報告させることとするとともに、納付勧奨等をマニュアル等に従って適切に行うことを周知徹底した。また、27年6月に上記の指示文書の内容等を明確化した「厚年特例法による納付勧奨・徴収マニュアル」を新たに策定し、同年7月に関係職員に対して研修を行い、同マニュアルに従って納付勧奨等を適切に行うことを周知徹底した。
イ 厚生労働省は、26年10月に機構に対して通知を発出し、年金事務所において対象事業主等に対する特例納付保険料の納付勧奨等がマニュアル等に従って適切に行われているか機構本部が確認を行い、その結果を厚生労働省に定期的に報告することなどを指示した。
一方、厚生労働省は、機構から受けるイの報告内容の詳細について機構と検討を進めており、今後、機構本部からの確認結果の報告を踏まえて、更に必要な指導監督を行うこととしている。