厚生労働省は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、雇用保険の被保険者に対して失業等給付金を支給しており、不正受給が判明した場合の返納金債権及び損害賠償金債権(以下、これらを合わせて「不正受給返納金債権」という。)の債権管理については、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)等に基づき、都道府県労働局及び公共職業安定所(以下、これらを合わせて「労働局等」という。)が行っている。しかし、労働局等における不正受給返納金債権の債権管理について、相当期間を経過しても納付されない場合に、督促状の送付、債務者の財産状況の調査(以下「財産調査」という。)及び国税滞納処分の例による財産の差押え(以下「自力執行」という。)が適切に行われていなかったり、債務者が労働局等の管轄外に転居した場合の債権管理事務の引継ぎ(以下「債権管理事務の引継ぎ」という。)が行われていなかったり、消滅時効が完成した場合の不納欠損としての整理(以下「不納欠損としての整理」という。)が直ちに行われていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働本省において、労働局等に対して、財産調査及び自力執行についての具体的な実施方法を示すとともに、督促状の送付、財産調査、自力執行、債権管理事務の引継ぎ及び不納欠損としての整理を適切に行うよう指導し、また、労働局等において、上記の指導に基づき、担当職員に対して、督促状の送付、財産調査、自力執行、債権管理事務の引継ぎ及び不納欠損としての整理を適切に行うことについて周知徹底を図るよう、厚生労働大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 厚生労働本省において、26年11月に、労働局等に対して通知を発して、督促状の送付、財産調査、自力執行、債権管理事務の引継ぎ及び不納欠損としての整理を適切に行うよう指導するとともに、都道府県労働局の担当職員を参加させた会議等において財産調査及び自力執行についての具体的な実施方法を示した。
イ 労働局等において、アの通知等に基づき、管内の担当職員に対して研修等を実施するなどして、督促状の送付、財産調査、自力執行、債権管理事務の引継ぎ及び不納欠損としての整理を適切に行うよう周知徹底を図った。