(1件 不当と認める国庫補助金 31,204,925円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(328) | 東北農政局 | 山形県 | 財団法人やまがた農業支援センター (事業主体) |
畜産担い手育成総合整備 | 21 | 101,642 | 50,820 | 62,410 | 31,204 |
この補助事業は、財団法人やまがた農業支援センター(平成23年4月1日以降は公益財団法人やまがた農業支援センター。以下「支援センター」という。)が、新庄市大字昭和地内において、畜産業の担い手育成に資する施設として、搾乳舎(木造平屋建て、延べ面積289.1m2)等の建築工事及び当該搾乳舎内における搾乳設備の設置工事を実施したものである。
支援センターは、この搾乳舎について、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により建設することとし、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に筋交いなどを設置した耐力壁を張り間方向(注)に14か所及び桁行方向(注)に14か所それぞれ配置することとしていた。そして、耐力壁を構成する46か所の柱については、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)等に基づき、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して梁(はり)、土台、基礎コンクリート等と接合することとしていた(参考図参照)。
支援センターは、上記のように耐力壁を配置すれば、設計計算上の耐力壁の長さが、張り間方向及び桁行方向とも水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回ることなどから安全であるとして設計し、これにより施工することとしていた。
しかし、支援センターは、本件搾乳舎の設計に当たり、設計図書において、筋交いを取り付けた柱は金物を使用して梁及び土台と接合する旨の記載をしていたものの、柱ごとに必要となる金物の引抜耐力を示していなかった。このため、耐力壁を構成する14か所の柱において、必要な引抜耐力を下回る金物により梁等と接合されていた。また、本件搾乳舎の施工に当たり、耐力壁を構成する12か所の柱において、設計と相違して、金物により梁等と接合されていなかった。
このように、梁、土台等との接合が適切でない柱で構成された壁は耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向で21.60m、桁行方向で17.10mとなり、水平力に対して必要な耐力壁の長さ、張り間方向で62.99m、桁行方向で32.08mをそれぞれ大幅に下回っていた。
したがって、本件搾乳舎は、設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、搾乳舎及びこれと一体的に設置された搾乳設備(工事費相当額計62,410,774円)に係る国庫補助金相当額計31,204,925円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、支援センターにおいて木造建築物の設計についての理解が十分でなかったり、施工についての監督が十分でなかったりなどしていたこと、山形県において支援センターに対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
耐力壁概念図