国有農地等(注)の管理等に関する事務(以下「国有農地等管理事務」という。)は、農地法等の一部を改正する法律(平成21年法律第57号)附則第8条等の規定により、なお従前の例による又はなおその効力を有することとされている改正前の農地法(昭和27年法律第229号)等に基づき都道府県が行うこととなっており、農林水産省は、これに要する経費として、国有農地等管理処分事業事務取扱交付金(平成25年度以前は農業経営基盤強化事業事務取扱交付金。以下「国有農地等交付金」という。)を交付している。
そして、上記の国有農地等管理事務に要する経費は、国有農地等管理処分事業事務取扱交付金交付要綱(昭和31年31農地第3569号)等によれば、国有農地等の管理、売払い等に関する事務の取扱いに要する経費及び国有農地等管理事務に従事する職員(以下「従事職員」という。)の人件費とされている。
都道府県は、国有農地等交付金の精算に当たり、毎年度、精算報告書とともに、従事職員の氏名や国有農地等管理事務に従事した割合等を記載した事業実績書を地方農政局等へ提出することとなっている。
本院は、合規性等の観点から、国有農地等交付金が適正に交付されているかなどに着眼して、関東農政局において、22年度から26年度までの間に東京都に交付された国有農地等交付金計483,005,019円を対象として、精算報告書、事業実績書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
都は、22年度から26年度までの間の国有農地等交付金の精算に当たり、従事職員の人件費とは別に、従事職員の所属する部署で国有農地等管理事務ではなく給与事務等を担当していて前記の事業実績書に記載していない職員に係る超過勤務手当を、国有農地等管理事務の取扱いに要した経費として、22年度から24年度までの間の各年度765,000円、25年度505,710円、26年度345,020円、計3,145,730円含めており、関東農政局もこれを含めた計483,005,019円を国有農地等交付金として交付していた。
したがって、これらの国有農地等管理事務に従事していない職員に係る超過勤務手当の額を除くなどして22年度から26年度までの間の適正な国有農地等交付金の額を算定すると計479,859,289円となり、上記の国有農地等交付金の交付額計483,005,019円との差額3,145,730円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、都において国有農地等交付金の交付対象となる経費について理解が十分でなかったこと、関東農政局において国有農地等交付金の交付に当たって都に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。