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(3)農業・食品産業強化対策整備交付金事業について、事業実施計画における成果目標の目標値の確認やその算出根拠となる農産物の出荷量等の把握に努めるなどして、成果目標の妥当性の審査及び評価報告書の点検評価が適切に行われるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業・食品産業強化対策費
部局等
農林水産本省
補助等の根拠
卸売市場法(昭和46年法律第35号)、予算補助
補助事業者
28都道府県
間接補助事業者
(事業主体)
市23、町10、村2、団体等826、計861事業主体
補助事業等
農業・食品産業強化対策整備交付金事業
補助事業等の概要
農畜産物の高品質・高付加価値化、低コスト化、食品流通の合理化等の地域における生産から流通・消費までの対策を総合的に推進するもの
事業実施計画における成果目標の妥当性の審査が十分に行われていない事業数及び事業費
703事業 2144億8158万余円(平成17年度~25年度)
上記に対する交付金交付額(1)
731億5481万円
成果目標の実質的な評価が行われていない事業数及び事業費
201事業 408億9651万余円(平成17年度~23年度)
上記に対する交付金交付額(2)
196億7390万円
(1)及び(2)の純計
828億6896万円(背景金額)(平成17年度~25年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

農業・食品産業強化対策整備交付金事業における成果目標の達成状況の評価等について

(平成27年10月29日付け 農林水産大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 農業・食品産業強化対策整備交付金事業の概要等

(1)農業・食品産業強化対策整備交付金事業の概要

貴省は、「強い農業づくり交付金実施要綱」(平成17年16生産第8260号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)等に基づき、農畜産物の高品質・高付加価値化、低コスト化、食品流通の合理化等の地域における生産から流通・消費までの対策を総合的に推進することとしている。そして、平成17年度以降、産地競争力の強化、食品流通の合理化等を政策目的とする農業・食品産業強化対策整備交付金事業により、施設等を整備する事業(以下「整備事業」という。)を実施する事業主体に交付金を交付する都道府県に対して、農業・食品産業強化対策整備交付金(17年度から25年度までの交付金交付額計2586億7528万余円)を交付している。

(2)事業実施計画における事業の採択要件等

実施要綱等によれば、事業主体は、目標年度(注1)における成果目標を設定するなどして、その成果目標等を記載した事業実施計画を都道府県に提出することとされており、提出を受けた都道府県は、採択要件に適合しているかなど、その内容について必要な審査及び指導を行うとともに、地方農政局等(以下「農政局等」という。)とその成果目標の妥当性について協議することとされている。そして、採択要件については、各事業において成果目標の基準を満たしていること、整備事業を実施する場合は、当該施設の整備による全ての効用によって全ての費用を償うことが見込まれることなどとされている。

(注1)
目標年度  産地競争力の強化を目的とする取組については、原則として、事業実施年度の翌々年度とされている。また、食品流通の合理化を目的とする取組については、事業完了年度(卸売市場の移転新設等に係る事業は事業全体の完了年度)から3年(ただし、取扱数量の増加を目標とする場合は5年以内)とされている。

ア 成果目標の設定

目標年度において達成すべき成果目標の基準については、「強い農業づくり交付金の配分基準について」(平成17年16生産第8451号大臣官房国際部長、総合食料局長、生産局長、経営局長通知。以下「配分基準」という。)において、整備事業の対象施設(注2)ごとに、単位面積当たりの労働時間の短縮、販売額の増加、収量の増加、取扱量の増加等の増減率を所定の割合以上とすることなどが示されており、事業主体は、これらの中から二つ以内の成果目標を設定することとなっている。

(注2)
整備事業の対象施設  産地競争力の強化を目的とする取組に係る対象施設は、農産物処理加工施設、集出荷貯蔵施設等の共同利用施設等がある。また、食品流通の合理化を目的とする取組に係る対象施設は、卸売市場における売場施設、貯蔵・保管施設等がある。

イ 費用対効果分析による投資効率等の検討

実施要綱等によれば、事業主体は、総事業費が原則として5000万円以上の整備事業を実施する場合、投資に対する効果が適正か否かを判断し、投資が過剰とならないよう、「強い農業づくり交付金及び農業・食品産業競争力強化支援事業等における費用対効果分析の実施について」(平成17年16生産第8452号総合食料局長、生産局長、経営局長通知。以下「分析指針」という。)により、整備する施設等の導入効果について費用対効果分析を実施し、投資効率等を十分検討することとされている。そして、投資効率は、分析指針に定められた次の算定式により算定される。

投資効率={(年総効果額÷還元率(注3))-廃用損失額(注4)}÷総事業費

(注3)
還元率  将来発生する効果額を現在価値に換算するための社会的割引率及び整備される施設等の耐用年数から算出したもの
(注4)
廃用損失額  事業の実施に伴い、財産処分され、又は事業の目的以外に転用される既存の施設等の残存価格

上記の算定式のうち、年総効果額は、施設等の導入により発生する①生産力増加効果、②品質向上効果、③生産コスト節減効果、④取扱量向上効果等(以下、これらを「効果項目」という。)の年効果額を合計して算定するものであり、それぞれの年効果額について、例えば、①作付面積、単位面積当たりの収量の増加等に伴う生産量の増加、②品質向上に伴う販売額の増加、③単位面積当たりの労働費等の削減に伴う生産コストの節減、④売場施設の拡大等に伴う取扱量の増加等の指標により算出することとなっている(以下、年効果額を算出するための指標を「効果指標」という。)。

なお、費用対効果分析の投資効率に係る事業実施後の評価は行うこととなっていない。

(3)成果目標の達成状況に係る評価

実施要綱等によれば、事業主体は、事業実施計画の目標年度の翌年度において、成果目標の達成状況について、自ら評価を行い、評価報告書を作成して都道府県に提出することなどとされている。そして、都道府県は、評価報告書の内容について点検評価を行い、その結果を農政局等に報告するとともに、事業実施計画に掲げた成果目標が達成されていない場合には、事業主体に対して、必要な改善措置を指導し、当該成果目標が達成されるまでの間、改善状況の報告をさせることとされている。

また、農政局等は、都道府県から評価報告書の点検評価の結果について報告を受けた場合には、成果目標の達成度等の評価を行い、必要に応じて、その結果を踏まえて、都道府県を指導することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、有効性等の観点から、整備事業の事業実施計画における成果目標の妥当性の審査が十分に行われているか、評価報告書の点検評価は適切に行われているかなどに着眼して、産地競争力の強化及び食品流通の合理化を目的とする取組に係る整備事業のうち、28都道府県(注5)が17年度から25年度までの間に実施し、費用対効果分析が行われた整備事業1,260事業(事業実施計画に記載された成果目標数1,988件。事業費計3107億0265万余円、交付金交付額計1190億8399万余円)を対象として検査した。

検査に当たっては、農林水産本省及び28都道府県において、事業実施計画の事業内容、成果目標の達成状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注5)
28都道府県  東京都、北海道、大阪府、秋田、山形、茨城、栃木、千葉、新潟、富山、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、奈良、和歌山、岡山、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)事業実施計画における成果目標の妥当性の審査等

ア 成果目標の内容と費用対効果分析の主要な効果項目の内容との関連性

整備事業1,260事業のうち935事業(全体の74.2%)では、事業実施計画に記載された成果目標の内容は、費用対効果分析の主要な効果項目の内容と関連があるものとなっていた。一方、表1のとおり、残りの325事業(同25.8%。事業費計1363億2455万余円、交付金交付額計365億9657万余円)では、①成果目標の内容を農産物の全出荷量に占める上位規格品の割合を増加させることなど品質向上に関するものとして設定している一方で、費用対効果分析の効果項目の内容を施設等の整備により農産物の生産力を増加させることなど生産量増加に関するものとしているなどして、成果目標の内容が費用対効果分析の効果項目の内容と直接関連がないものが108事業、②成果目標に対応する費用対効果分析の効果項目の年効果額が年総効果額の50%未満となっているものが217事業となっており、これらの事業については、各都道府県において成果目標の内容と費用対効果分析の主要な効果項目の内容との関連性に留意した審査が十分に行われていたとは認められない。

表1 成果目標の内容と費用対効果分析の効果項目の内容との関連性

(単位:事業)
取組 整備事業の対象施設等 費用対効果分析の対象事業数 ①成果目標の内容が費用対効果分析の効果項目の内容と直接関連がないもの ②成果目標に対応する費用対効果分析の効果項目の年効果額が年総効果額の50%未満となっているもの 合計
①+②
年総効果額の10%未満 年総効果額の10%以上30%未満 年総効果額の30%以上50%未満
産地競争力の強化を目的とする取組 乾燥調製施設 150 5 43 23 11 77 82
穀類乾燥調製貯蔵施設 100 20 3 11 1 15 35
農産物処理加工施設 176 9 5 6 3 14 23
集出荷貯蔵施設 282 19 11 16 8 35 54
農産物被害防止施設 99 1 0 0 0 0 1
生産技術高度化施設 251 17 17 13 9 39 56
その他 165 33 12 5 11 28 61
1,223 104 91 74 43 208 312
食品流通の合理化を目的とする取組 卸売市場における売場施設等 37 4 6 3 0 9 13
合計 1,260 108 97 77 43 217 325
(注)
その他の欄は、「耕種作物小規模土地基盤整備」「共同育苗施設」「産地管理施設」「種子種苗生産関連施設」「有機物処理・利用施設」及び「共同利用機械整備」である(以下同じ。)。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 設定した成果目標に対応する費用対効果分析の効果項目の年効果額が年総効果額の50%未満となっている事態

長崎県佐世保市は、食品流通の合理化を目的とする取組として、平成17、18両年度に、佐世保市中央卸売市場内において、青果物の取扱量の増加等に対応して青果棟の増改築等を行っている(事業費23億8856万余円、交付金交付額7億9618万余円)。同市は、事業実施計画の策定に当たり、成果目標を「施設の維持管理コストの削減」と設定して、成果目標の目標値を13年度から15年度までの青果棟に係る施設の維持管理費の平均値1376万円/年より68万余円/年削減した1307万余円/年とすることとしている。一方、費用対効果分析において、取扱量向上効果(年総効果額の89.1%)、品質向上効果(同4.3%)、物流コスト削減効果(同3.0%)、施設活用効果(同2.3%)及び施設維持管理コスト削減効果(同1.4%)の各効果項目の年効果額を合計して年総効果額2億4011万余円を算定していた。このように、設定した成果目標が費用対効果分析の主要な効果項目に対応しておらず、設定した成果目標を達成した場合の施設の維持管理費の削減額は、年総効果額の0.29%に過ぎないものとなっていた。

イ 成果目標の目標値と費用対効果分析の効果指標の計画値との整合性等

成果目標の内容が費用対効果分析の主要な効果項目の内容と関連があるものとなっていた整備事業935事業の成果目標1,538件についてみると、表2のとおり、①成果目標の目標値が費用対効果分析の効果指標の計画値と整合していないものが369件、②成果目標の目標値に施設等の導入による受益地区に係る生産量等ではなく統計資料等による地域全体の生産量等が用いられているものが129件、計498件(①及び②の重複を除いた純計459件、378事業。事業費計781億5702万余円、交付金交付額計365億5824万余円)となっており、これらについて、各都道府県において成果目標の目標値と費用対効果分析の効果指標の計画値との整合性等に留意した審査が十分に行われていたとは認められない。

表2 成果目標の目標値と費用対効果分析の効果指標の計画値との整合性等

取組 整備事業の対象施設等 成果目標数
(件)
①成果目標の目標値が費用対効果分析の効果指標の計画値と整合していないもの(件) ②成果目標の目標値に統計資料等による地域全体の生産量等が用いられているもの(件) 合計
①+②
(件)
①及び②の純計
(件)
左に対する事業数
(純計)
(事業)
成果目標の目標値を高く設定 費用対効果分析の計画値を高く設定
産地競争力の強化を目的とする取組 乾燥調製施設 100 12 14 26 2 28 27 27
穀類乾燥調製貯蔵施設 123 11 20 31 11 42 42 34
農産物処理加工施設 284 49 47 96 31 127 115 84
集出荷貯蔵施設 396 41 53 94 11 105 100 79
農産物被害防止施設 122 18 1 19 14 33 27 25
生産技術高度化施設 302 31 21 52 32 84 76 67
その他 171 25 15 40 27 67 60 52
1,498 187 171 358 128 486 447 368
食品流通の合理化を目的とする取組 卸売市場における売場施設等 40 6 5 11 1 12 12 10
合計 1,538 193 176 369 129 498 459 378

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 成果目標の目標値が費用対効果分析の効果指標の計画値と整合していない事態

札幌市は、食品流通の合理化を目的とする取組として、平成17、18両年度に、札幌市中央卸売市場内において老朽化、狭あい化等に対応するために、青果棟、管理センター等を全面的に建て替えるなどの整備を行っている(事業費75億2241万余円、交付金交付額25億6175万余円)。同市は、事業実施計画の策定に当たり、成果目標の目標値を6年度から15年度までの青果物の平均取扱量326,776t/年(推計値)より1.5%増加の331,678t/年とする一方、費用対効果分析における効果指標となる青果物の取扱量等の計画値を、成果目標の目標値より多い363,893t/年とし、これを根拠として卸売場等の必要面積を整備前の1,301m2増と計算していた。なお、目標年度とした23年度の青果物の実際の取扱量は303,924tにとどまっていた。

ア及びイのとおり、計703事業(事業費計2144億8158万余円、交付金交付額計731億5481万余円)については、各都道府県において、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査が十分に行われていない状況となっている。

上記の状況に鑑みて、703事業のうち目標年度が到来し、かつ、各都道府県が成果目標を全て達成したと評価している268事業について、本院が主要な効果指標の達成状況を検証したところ、表3のとおり、136事業(全体の50.7%。事業費計282億4049万余円、交付金交付額計122億9428万余円)は、主要な効果指標である生産量の増加等の実績が計画に達していなかった。

表3 703事業における費用対効果分析の主要な効果指標の達成状況

取組 整備事業の対象施設等 アに係る事業数 イに係る事業数
(純計)
ア及びイの計 左のうち目標年度が到来した事業数 (成果目標)
全て達成 (費用対効果分析)
うち生産量等の効果指標達成 (割合) うち生産量等の効果指標未達成 (割合)
(事業) (事業) (事業) (事業) (a)
(事業)
(b)
(事業)
(b/a) (c)
(事業)
(c/a)
産地競争力の強化を目的とする取組 乾燥調製施設 82 27 109 96 47 17 36.2% 30 63.8%
穀類乾燥調製貯蔵施設 35 34 69 49 17 4 23.5% 13 76.5%
農産物処理加工施設 23 84 107 87 31 9 29.0% 22 71.0%
集出荷貯蔵施設 54 79 133 98 39 20 51.3% 19 48.7%
農産物被害防止施設 1 25 26 26 19 12 63.2% 7 36.8%
生産技術高度化施設 56 67 123 114 64 34 53.1% 28 43.8%
その他 61 52 113 82 43 31 72.1% 12 27.9%
312 368 680 552 260 127 48.8% 131 50.4%
食品流通の合理化を目的とする取組 卸売市場における売場施設等 13 10 23 10 8 3 37.5% 5 62.5%
合計 325 378 703 562 268 130 48.5% 136 50.7%
(注)
生産技術高度化施設に係る64事業のうち2事業は、関係書類が処分されていて分析できなかったため、費用対効果分析の割合を合計しても100%にならない。

(2)都道府県が実施した評価報告書の点検評価等

整備事業1,260事業(成果目標数1,988件)のうち、各都道府県が評価報告書の提出を受けて点検評価を行うことができたのは、目標年度が到来している967事業(同1,413件)である。これら1,413件の成果目標ごとの達成状況についてみると、表4のとおり、各都道府県が成果目標を達成していないと評価しているものは423件、189件、計612件あり、これらは、各都道府県及び各農政局等の指導の対象となり、改善に向けた取組が行われるものである。

表4 評価報告書の点検評価の状況

取組 整備事業の対象施設等 検査対象 目標年度が到来している整備事業の成果目標の達成状況
成果目標を達成したとしているもの 成果目標を一部達成したとしているもの 成果目標を達成していないとしているもの
事業数 成果目標数 事業数 成果目標数 事業数 成果目標数   事業数 成果目標数 事業数 成果目標数
達成 未達成
産地競争力の強化を目的とする取組 集出荷貯蔵施設等 1,223事業 1,928件 472事業
(49.8%)
594件
(42.8%)
187事業
(19.7%)
374件
(26.9%)
187件 187件 289事業
(30.5%)
420件
(30.3%)
948事業
(100%)
1,388件
(100%)
食品流通の合理化を目的とする取組 卸売市場における売場施設等 37事業 60件 14事業
(73.7%)
18件
(72.0%)
2事業
(10.5%)
4件
(16.0%)
2件 2件 3事業
(15.8%)
3件
(12.0%)
19事業
(100%)
25件
(100%)
1,260事業 1,988件 486事業
(50.3%)
612件
(43.3%)
189事業
(19.5%)
378件
(26.8%)
189件 189件 292事業
(30.2%)
423件
(29.9%)
967事業
(100%)
1,413件
(100%)

一方、各都道府県が成果目標を達成したと評価している612件、189件、計801件についてみると、表5のとおり、①成果目標の目標値が全出荷量に占める契約取引分の出荷量の割合等として設定されるなどしていて、出荷量等の実績が計画を下回っていても、その割合等の数値が目標値に達していることから成果目標を達成したと評価しているものが203件、②事業実施後の農産物の生産量等の実績が霜等による被害により計画を下回っていても、被害防止施設等を整備することによりその対策が完了して被害が発生しないものとして、成果目標を達成したなどと評価しているものが17件、計220件(①及び②の重複を除いた純計219件、201事業。事業費計408億9651万余円、交付金交付額計196億7390万余円)が含まれていた。

表5 達成したとしている成果目標についての評価の状況

取組 整備事業の対象施設等 成果目標が達成したとしている成果目標数(件) ①出荷量等の実績が計画を下回っていても、その割合等の数値が目標値に達していることから成果目標を達成したと評価しているもの(件) ②被害防止施設等を整備することによりその対策が完了して被害が発生しないものとして、成果目標を達成したなどと評価しているもの(件)
①+②
(件)
①及び②の純計
(件)
左に対する事業数
(事業)
産地競争力の強化を目的とする取組 乾燥調製施設 79 15 0 15 15 14
穀類乾燥調製貯蔵施設 53 12 0 12 12 12
農産物処理加工施設 157 46 0 46 46 40
集出荷貯蔵施設 136 56 2 58 58 53
農産物被害防止施設 106 13 10 23 22 22
生産技術高度化施設 157 39 5 44 44 39
その他 93 20 0 20 20 19
781 201 17 218 217 199
食品流通の合理化を目的とする取組 卸売市場における売場施設等 20 2 0 2 2 2
合計 801 203 17 220 219 201

このように、220件(純計219件)に係る201事業については、各都道府県及び各農政局等による評価報告書の点検評価において、成果目標の実質的な評価が行われていない状況となっている。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 割合として設定される成果目標の目標値の算出の根拠となる出荷量について、計画に対する実績の達成状況を確認しないまま、成果目標を達成したとして評価している事態

いみず野農業協同組合(富山県射水市所在)は、産地競争力の強化を目的とする取組として、平成23年度に、枝豆をブランド化して販売し、生産者所得を向上させるために、集出荷貯蔵施設等を整備している(事業費8427万余円、交付金交付額2899万余円)。同組合は、事業実施計画における成果目標を「全出荷量に占めるブランド野菜の割合を5ポイント以上増加」と設定し、目標値を枝豆の全出荷量に占めるブランド品の割合の100%としていた。そして、同組合は、評価報告書において、出荷した枝豆全てがブランド品として出荷されたことから、成果目標を達成したと評価してその結果を報告し、報告を受けた富山県も、点検評価の結果、成果目標を達成したと評価していた。しかし、枝豆の出荷量について、計画上は170tであったのに対して、実績は41.1tにとどまっていたのに、富山県は、点検評価において、出荷量の計画に対する達成状況を確認していなかった。

<事例4> 事業実施後の農産物の生産量等の実績が霜等による被害により計画を下回っていても、被害防止施設等を整備することによりその対策が完了して被害が発生しないものとして、成果目標を達成したなどと評価している事態

青戸西茶生産組合(鹿児島県南九州市所在)は、産地競争力の強化を目的とする取組として、平成19年度に、降霜による茶芽の被害を未然に防ぎ、茶園(面積15.4ha)から安定した茶の生産を行うために、防霜施設277基を整備している(事業費6698万余円、交付金交付額3349万余円)。同組合は、事業実施計画における成果目標を「風・霜等による被害が軽減される面積の割合が事業実施地区全体の60%以上」と設定し、目標値を当該地区の対象面積に対して被害が軽減される面積の割合を100%としていた。そして、同組合は、評価報告書において、防霜施設を整備することによりその対策が完了し霜による被害が発生しないものとして、成果目標を達成したと評価してその結果を報告し、報告を受けた鹿児島県も、点検評価の結果、成果目標を達成したと評価していた。しかし、茶の生産量について、計画上は77.4tであったのに対して、実績は降霜による被害等により52.9tとなっているのに、鹿児島県は、点検評価において、これらの状況を確認していなかった。

(改善を必要とする事態)

整備事業の実施に当たり、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査が十分に行われていなかったり、評価報告書の点検評価において成果目標の実質的な評価が行われていなかったりしている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 貴省本省において、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査及び評価報告書の点検評価の具体的な方法について明確に示していないこと
  • イ 農政局等において、都道府県から提出を受けた評価報告書の点検評価に当たり、成果目標の目標値の算出根拠となる出荷量等を把握した上で、成果目標の達成度等の評価を行うことの重要性の理解が十分でないこと
  • ウ 都道府県において、事業実施計画における成果目標の妥当性について審査することの重要性の理解が十分でないこと及び評価報告書の点検評価に当たり、成果目標の目標値の算出根拠となる出荷量等の把握に努めて、その達成状況等について勘案した上で審査することの重要性の理解が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置

貴省は、消費者・実需者の需要に応じて、国産農畜産物を安定的に生産して供給するとともに、輸出を拡大する産地体制等を構築するために、27年度以降も引き続き、農業・食品産業強化対策整備交付金事業を実施することとしている。

ついては、貴省において、整備事業を適切に実施することの重要性を踏まえて、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査及び評価報告書の点検評価が適切に行われるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 貴省本省において、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査及び評価報告書の点検評価のための手引等を作成するとともに、必要に応じて、配分基準において示している成果目標の基準等を見直すこと
  • イ 農政局等に対して、都道府県から提出を受けた評価報告書の点検評価に当たり、アの手引等により、成果目標の目標値の算出根拠となる出荷量等の把握に努めて、その達成状況等について十分に勘案した上で、成果目標の達成度等を評価するよう指示すること
  • ウ 都道府県に対して、事業実施計画における成果目標の妥当性の審査に当たり、アの手引等により、成果目標の内容が費用対効果分析の主要な効果項目の内容と関連性が確保されるよう留意するとともに、成果目標の目標値と費用対効果分析の効果指標の計画値との整合性が確保されていることなどの確認を適切に行うよう、また、評価報告書の点検評価に当たり、アの手引等により、成果目標の目標値の算出根拠となる出荷量等の把握に努めて、その達成状況等について勘案した上で審査するよう周知すること。そして、出荷量等の実績が計画を下回るなどの状況になっている場合には、現状を的確に把握した上で、必要に応じて、事業主体に対して、改善に向けた指導等を行うよう周知すること