水産庁は、漁業信用基金協会(以下「協会」という。)の債務保証が付された融資を受けた中小漁業者等が平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれによる津波を原因として債務不履行に陥り、岩手、宮城、茨城、千葉各県の協会が当該中小漁業者等に代わって債務の弁済(以下「代位弁済」という。)を行った場合に、各協会に対して、代位弁済に係る経費の一部を助成するために保証保険資金等緊急支援事業補助金(以下「補助金」という。)を交付している。また、水産庁は、協会と代位弁済に係る保険契約を締結している独立行政法人農林漁業信用基金(以下「信用基金」という。)に対して、代位弁済に係る保険金の支払に要する経費を助成する保証保険資金等緊急支援事業交付金(以下「交付金」という。)を交付している。しかし、26年3月末時点で、岩手、宮城、茨城各県の協会(以下「3協会」という。)において、補助金に係る要綱等では代位弁済により取得した求償権の行使による回収金(以下「協会回収金」という。)に係る国庫補助金相当額が全ての代位弁済案件に係る求償権の回収等まで国庫に返還されない規定となっていたため滞留していたり、信用基金において、3協会から納付された協会回収金のうち保険金に相当する額(以下「信用基金回収金」という。)に係る交付金相当額が年度末において生じているにもかかわらず、交付金に係る要綱では返還額の算定等のための基準が定められていないため国庫に返還されないまま年度を越えて滞留していたりしている事態が見受けられた。
したがって、水産庁において、協会回収金に係る国庫補助金相当額及び信用基金回収金に係る交付金相当額を適時適切に国庫に返還させることが可能となるよう、補助金に係る要綱等を速やかに改正して3協会に周知して、これに基づき滞留している国庫補助金相当額を国庫に返還させたり、信用基金回収金に係る交付金相当額を国庫に返還する場合の返還額の算定等のための基準を速やかに定めて信用基金に周知して、これに基づき滞留している交付金相当額を国庫に返還させたりするよう、水産庁長官に対して26年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、水産庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 協会回収金に係る国庫補助金相当額を毎年度国庫に返還させることが可能となるよう、27年3月に補助金に係る要綱等を改正して3協会に周知して、国庫補助金相当額計1億0367万余円を同月に国庫に返還させた。
イ 信用基金回収金に係る交付金相当額を毎年度国庫に返還させることが可能となるよう、27年3月に交付金に係る要綱を改正して返還額の算定等のための基準を定めて信用基金に周知して、交付金相当額2億3980万余円を同月に国庫に返還させた。