経済産業本省(以下「本省」という。)は、平成19年度から22年度までに、「戦略的技術開発委託費(植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発に係るもの)(国庫債務負担行為に係るもの)」を、また、23年度から26年度までに、「エネルギー使用合理化技術開発等(密閉型植物工場を活用した遺伝子組換え植物ものづくり実証研究開発)」を、それぞれ独立行政法人産業技術総合研究所(27年4月1日以降は国立研究開発法人産業技術総合研究所。以下「研究所」という。)に委託して実施(以下、委託したこれらの技術開発等を合わせて「委託業務」という。)し、委託費19年度から22年度まで計797,364,274円、23年度から26年度まで計237,189,525円、合計1,034,553,799円を支払っている。
委託業務は、植物による有用物質の生産に必要な基盤技術を開発することを目的として、閉鎖された人工的な環境下における生産に適した植物の開発研究等を実施したものである。
委託契約書によれば、本省は、委託業務が完了して研究所から実績報告書の提出を受けたときは、その内容を審査し、必要に応じて現地調査を行い、委託業務の実施に要した経費(以下「委託対象経費」という。)の証ひょう、帳簿等の調査により支払うべき額を確定して、精算払により支払うことなどとされている。
本院は、合規性等の観点から、委託対象経費は適切に計上されているかなどに着眼して、本件委託契約を対象として、本省及び研究所において、実績報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
研究所は、委託業務を研究所北海道センター(以下「センター」という。)内に設置した密閉型植物工場(以下「植物工場」という。)で実施しており、植物工場分の電気料金19年度から22年度まで計71,122,578円、23年度から26年度まで計16,832,936円、合計87,955,514円を、委託業務の実施に要したとして委託対象経費に計上していた。
センターの電気料金については、電力会社との電気需給契約に基づき、植物工場を含むセンター全体に係る電気料金が毎月請求されており、その請求額は、センター全体の契約電力1,400kWに基本料金単価を乗ずるなどして算出された基本料金及び使用電力量に応じた電力量料金の合計額となっている。
そして、研究所は、前記の植物工場分の電気料金を、月ごとに次の①及び②の金額を合計するなどして算定していた。
しかし、研究所は、上記の植物工場分の電気料金の算出に当たり、控除残額には植物工場以外の施設分の契約電力1,070kWに係る基本料金が含まれていたのに、これをセンター全体に係る電気料金の請求額から控除しないなどしていた。このため、控除残額を案分するなどして算定した植物工場分の電気料金には、委託業務の実施に要しない植物工場以外の施設分の基本料金の一部が含まれていた。
したがって、委託業務の実施に要しない電気料金を委託対象経費に計上しないこととして適正な委託費を算定すると、19年度から22年度まで計781,946,828円、23年度から26年度まで計234,894,825円、合計1,016,841,653円となり、前記の委託費支払額19年度から22年度まで計797,364,274円、23年度から26年度まで計237,189,525円、合計1,034,553,799円との差額17,712,146円が過大に支払われていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究所において委託対象経費の算定についての理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。