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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第9 経済産業省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2)コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍のうち配信されていない書籍について、著作権者の許諾を得るようにさせたり、配信するための技術的な修正を完了させたりして、配信が可能な状態にすることにより、電子書籍の流通の促進が図られるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)経済産業本省(項)東日本大震災復旧・復興地域経済活性化対策費
部局等
経済産業本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
一般社団法人日本出版インフラセンター
補助事業
被災地域販路開拓支援事業(コンテンツ緊急電子化事業)
補助事業の概要
東北関連情報の発信、東日本大震災の被災地域における知へのアクセス向上及び被災地域における新規事業の創出を促進して、持続的な復興及び振興や我が国全体の経済回復を目的として、電子書籍の流通の促進に適切な形式による書籍等の電子化等を行う事業
電子化された書籍数及び国庫補助金交付額
64,833件 9億8646万余円(平成23、24両年度)
上記のうち配信が可能な状態になっていなかった書籍数及び国庫補助金交付額
1,687件 5602万円

【改善の処置を要求したものの全文】

コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍について

(平成27年10月2日付け 経済産業大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 コンテンツ緊急電子化事業の概要等

(1)コンテンツ緊急電子化事業の概要

貴省は、平成23、24両年度に地域経済産業活性化対策費補助金(被災地域販路開拓支援事業(コンテンツ緊急電子化事業))交付要綱(平成23・11・21財情第2号)等に基づき、東北関連情報の発信、東日本大震災の被災地域(以下「被災地域」という。)における知へのアクセスの向上及び被災地域における新規事業の創出を促進して、持続的な復興及び振興や我が国全体の経済回復を図ることを目的として、電子書籍の流通の促進に適切な形式による書籍等の電子化等を行う事業(以下「コンテンツ緊急電子化事業」という。)を実施している。

貴省は、コンテンツ緊急電子化事業の実施に当たり、平成23年度「被災地域販路開拓支援事業(コンテンツ緊急電子化事業)」に係る補助事業募集要領に基づき補助事業者を募集して、一般社団法人日本出版インフラセンター(以下「センター」という。)を補助事業者として選定し、センターに対して事業を実施するための経費の一部として国庫補助金を交付している。

そして、センターは、上記の要領に基づき、コンテンツ緊急電子化事業のうち書籍を電子化する作業(以下「電子化作業」という。)等の業務を、被災地域で電子化作業を行うことなどの要件を満たした業者に委託している。

また、センターは、有識者委員会において、被災地域の持続的な復興及び振興や我が国全体の経済回復に資する書籍等を選定するための方針を定めている。そして、24年度にコンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍は64,833件に上っている。

(2)コンテンツ緊急電子化事業の事務手続の概要

コンテンツ緊急電子化事業の事務手続の概要は、次のとおりとなっている(図参照)

(ア) センターは書籍の電子化を希望する各出版社等との間で電子化作業等に関する委託契約を締結し、各出版社等は同契約に基づいて電子化の申請を行う。

(イ) センターは各出版社等から前記の方針に基づいて申請のあった書籍について業者に電子化作業の指示を行う。

(ウ) センターは、業者との間で締結した委託契約に基づいて、業者から納品された電子化された書籍が仕様書どおりに制作されているか検査を行う。

図 コンテンツ緊急電子化事業の事務手続の概要

コンテンツ緊急電子化事業の事務手続の概要の画像

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

コンテンツ緊急電子化事業は、電子化作業を事業の対象としているが、電子書籍の流通の促進が図られるよう実施されていることから、電子化された書籍の配信が可能な状態にすることが重要である。

そこで、本院は、有効性等の観点から、コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍の配信が可能な状態になっているかなどに着眼して、前記の電子化された書籍64,833件(事業費18億5289万余円、国庫補助金交付額9億8646万余円)を対象として、貴省本省及びセンターにおいて、交付申請書、実績報告書等の書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴省及びセンターは、コンテンツ緊急電子化事業において、電子化された書籍の配信が要件とされていないことから、電子化された書籍64,833件の配信状況について把握していなかった。

そこで、電子化された書籍64,833件の配信状況について、センターに調査を求めたところ、出版社等からの回答が得られるなどした18,463件のうち16,087件は配信されていたが、残りの2,376件は配信されていないことが判明した(表1参照)。そして、2,376件のうち出版社等が配信の準備を行っているなどの689件を除いた1,687件(国庫補助金交付額計5602万余円)は、出版社等が著作権者の許諾を得ていなかったり、出版社等が配信するための技術的な修正を完了していなかったりしたため、電子化作業が完了していても配信が可能な状態になっていなかった(表2参照)。

表1 電子化された書籍の配信状況

電子化された書籍数 配信状況が把握できた書籍数 配信状況が確認できていない書籍数(注)
64,833件 18,463件 46,350件
配信済 16,087 件
配信未済 2,376 件
(注)
電子化された書籍数から配信状況が把握できた書籍数及び国庫補助金を返還した書籍数20件を差し引いた書籍数

表2 配信が可能な状態になっていなかった書籍数等

区分 書籍数 国庫補助金交付額
著作権者の許諾を得ていない書籍 924件 1340万余円
配信するための技術的な修正を完了していない書籍 763件 4261万余円
1,687件 5602万余円

(改善を必要とする事態)

出版社等が著作権者の許諾を得ていなかったり、出版社等が配信するための技術的な修正を完了していなかったりしていて、コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍の配信が可能な状態になっていない事態は事業の目的からみて適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省及びセンターにおいて、電子化された書籍の配信状況を把握し、配信されていない場合、その原因を分析することが十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

コンテンツ緊急電子化事業は、電子書籍の流通の促進が図られるよう実施されていることから、電子化された書籍の配信が可能な状態にすることが重要である。

ついては、貴省において、コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍について、配信状況が確認できていない電子化された書籍も含めて配信が可能な状態になっているか把握した上で、出版社等に著作権者の許諾を得るようにさせたり、出版社等において配信するための技術的な修正を完了させたりして、配信が可能な状態になるようにセンターに指示することにより、電子書籍の流通の促進が図られるよう改善の処置を要求する。