東京航空局(以下「東京局」という。)は、平成26年3月、日本空港ビルデング株式会社等5者(注)に対して、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、東京局が管理している立体駐車場、トンネル、鉄道施設及びモノレール施設(以下「立体駐車場等」という。)の行政財産について、同年4月から27年3月までの間に係る使用を許可している。
国土交通本省及び東京局は、立体駐車場等の行政財産で国以外の者に使用させるもの(以下「使用許可財産」という。)の使用料について、「国が管理する空港等において国以外の者に土地等を使用させ又は収益させる場合の使用料について」(平成18年財理第4030号財務省理財局長通達)等に基づき、次のように算定することとしている。
① 国土交通本省は、使用料算定のために、5年に1回使用許可財産の鑑定を不動産鑑定評価会社(以下「鑑定会社」という。)に委託して行う。
② 東京局は、上記の鑑定が行われた次年度以降の使用料算定のために、4年間を限度として、使用料(消費税相当額を含まない額。以下「使用料(消費税抜き)」という。)の前年度からの変動率の調査を鑑定会社に委託して行う。
③ 上記の調査委託に当たり、東京局は、使用許可財産の前年度末現在の国有財産台帳価格から消費税相当額を控除した額(以下「国有財産台帳価格(消費税抜き)」という。)を算出して鑑定会社に示す。
④ 鑑定会社は、国有財産台帳価格(消費税抜き)に期待利回りを乗ずることなどにより使用料(消費税抜き)に相当する額として算出した額(以下「使用料相当額」という。)と、前年度に算出された使用料相当額との比率により、使用料(消費税抜き)の前年度からの変動率を使用許可財産ごとに算出する。
⑤ 東京局は、調査を実施した年度の使用料(消費税抜き)に上記の変動率を用いて得た額に、消費税相当額を加算するなどして翌年度の使用料を算定する。
東京局は、25年度に、26年度の使用料算定のための変動率(以下「26年度変動率」という。)の調査を鑑定会社に委託しており、同局は、使用許可財産ごとの25年度の使用料(消費税抜き)に26年度変動率を用いて得た額に、消費税相当額を加算して、立体駐車場等の26年度の使用料を計2,370,356,964円と算定している。
本院は、合規性等の観点から、使用料の算定が適切に行われているかなどに着眼して、本件立体駐車場等に係る使用料を対象として、東京局において、使用料算定調書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
東京局は、26年度変動率の調査の委託に際して、国有財産台帳価格(消費税抜き)を算出するに当たり、国有財産台帳価格から消費税率を一律5%として計算して得た消費税相当額を控除していた。
しかし、本件立体駐車場等の中には、元年4月の消費税導入前又は消費税率が3%となっていた間(元年4月から9年3月まで)に取得等したものが含まれていたにもかかわらず、東京局は、誤ってそれらについても消費税率を5%として計算して得た消費税相当額を控除していたため、国有財産台帳価格(消費税抜き)を過小に算出していた。そのため、鑑定会社が当該価格を基に算出した26年度変動率は本来の値より小さくなり、この変動率を用いて東京局が算定した26年度の使用料は過小となっていた。
したがって、本件立体駐車場等に係る使用料について、適正に算出した国有財産台帳価格(消費税抜き)を基に算出した変動率を用いて修正計算すると、適正な26年度の使用料は計2,383,916,984円となり、本件の26年度の使用料計2,370,356,964円はこれに比べて13,560,020円低額となっていて、不当と認められる(表参照)。
使用許可財産 | 使用許可の相手方 | 東京局が算定した使用料
(A) |
適正な使用料
(B) |
低額となっていた使用料
(B-A) |
---|---|---|---|---|
東京国際空港第1立体駐車場 | 日本空港ビルデング株式会社 | 610,129,214 | 612,445,052 | 2,315,838 |
東京国際空港第2立体駐車場 | 一般財団法人空港環境整備協会 | 548,025,143 | 551,477,094 | 3,451,951 |
新千歳(南千歳~新千歳空港)トンネル | 北海道旅客鉄道株式会社 | 60,469,885 | 61,546,371 | 1,076,486 |
京浜急行羽田空港線鉄道施設 | 京浜急行電鉄株式会社 | 512,604,902 | 516,977,431 | 4,372,529 |
東京モノレール施設 | 東京モノレール株式会社 | 639,127,820 | 641,471,036 | 2,343,216 |
計 | 2,370,356,964 | 2,383,916,984 | 13,560,020 |
このような事態が生じていたのは、東京局において、本件立体駐車場等の使用料の算定に当たり、国有財産台帳価格に含まれる消費税相当額の確認が十分でなかったことによると認められる。