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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

公営住宅、キャンプ場の管理棟等の木造施設の設計及び施工が適切でなかったもの[3府県](351)-(353)


(3件 不当と認める国庫補助金 33,535,750円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(351) 栃木県 日光市 社会資本整備総合交付金
(公営住宅等整備)
22 17,010
(16,200)
7,290 13,667
(13,016)
5,857
(352) 大阪府 箕面市
(都市再生整備計画)
22 77,681
(77,680)
30,527 21,881
(21,881)
8,500
(353) 広島県 尾道市
(公営住宅等整備)
24 69,342
(47,776)
21,499 61,855
(42,619)
19,178
(351)―(353)の計 164,033
(141,656)
59,316 97,404
(77,516)
33,535

これらの交付金事業は、3市が、公営住宅等整備事業及び都市再生整備計画事業の一環として、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により公営住宅、キャンプ場の管理棟等の木造施設(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである。

木造建築物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に筋交いなどを設置した耐力壁を張り間方向(注1)及び桁行方向(注1)に配置し、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回るなど設計計算上安全な構造のものでなければならないこととなっている。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)等に基づき、筋交いの向きや種類、柱の位置等に応じて、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して、梁(はり)、土台、基礎コンクリート等と接合することとなっている(参考図1参照)。

しかし、2市において、金物を使用する箇所やその種類を設計図書に示していなかったため、金物を全く取り付けておらず、柱、土台等の部材を組み合わせただけで施工していたり、出隅の柱(注2)について、出隅の柱以外の柱に適用する係数を用いるなどして設計計算を行ったため、必要な引抜耐力を下回る金物を選定し、これにより施工していたりなどしている事態が見受けられた。また、1市において請負人が、筋交いを出隅の柱の柱脚部に取り付けることとしていたのに、誤って柱頭部に取り付けたため、金物の引抜耐力が不足して、引抜力に対して抵抗できない状態となっている事態が見受けられた(参考図2参照)。

このように、梁、土台等との接合方法が適切でない柱で構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向及び桁行方向の両方又は一方において、水平力に対して必要な長さを下回っていて、木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計33,535,750円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2市において委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったこと、1市において請負人が設計図書、法令等についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

尾道市は、公営住宅等整備事業の一環として、同市西藤町及び美ノ郷町(みのごうちょう)地内において、割石住宅及び下三成(しもみなり)住宅(両住宅とも間取りと構造が同じ木造2階建て各1棟)の建築等を行った。

耐力壁を構成する柱については、告示等に基づいて出隅の柱等の柱の位置により定められている係数等を基に設計計算するなどして金物等を選定し、土台等と接合することとしていた。

しかし、同市は、出隅の柱について、出隅の柱以外の柱に適用する係数を用いるなどして設計計算を行ったため、金物を選定する際の計算値を過小に算出し、その結果、必要な引抜耐力を下回る金物を選定し、これにより施工するなどしていた。

このように、必要な引抜耐力を下回る金物で接合された柱で構成される壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、1階部分は張り間方向で33.72m、桁行方向で28.50mとなり、水平力に対して必要な長さ36.78m及び33.44mをそれぞれ下回っていた。また、2階部分は桁行方向で9.50mとなり、水平力に対して必要な長さ12.98mを大幅に下回っていた。

したがって、本件住宅2棟(工事費相当額計61,855,290円、交付対象工事費計42,619,000円、交付金相当額計19,178,550円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(注1)
張り間方向・桁行方向  一般的に建物の短辺方向を張り間方向といい、長辺方向を桁行方向という。
(注2)
出隅の柱  建物の外側の隅の柱

(参考図1)

耐力壁概念図

耐力壁概念図の画像

(参考図2)

出隅の柱の筋交い設置概念図

出隅の柱の筋交い設置概念図の画像

引抜力の概念図

引抜力の概念図の画像