(2件 不当と認める国庫補助金 299,291,100円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(354) | 北海道 | 札幌市 | 社会資本整備総合交付金 (道路) |
23~25 | 882,871 (554,775) |
332,865 | 421,906 (421,857) |
253,114 |
(355) | 鹿児島県 | 鹿児島市 | 同 (土地区画整理) |
23~25 | 186,564 (138,059) |
75,932 | 113,457 (83,958) |
46,176 |
(354)(355)の計 | 1,069,435 (692,834) |
408,797 | 535,363 (505,815) |
299,291 |
これらの交付金事業は、2市が、道路整備事業又は土地区画整理事業の一環として、橋りょうを新設するために、下部工として橋台2基の築造等、上部工として桁の製作、架設等を実施したものである。
これらの橋りょうについては、地震発生時における桁の落下を防止するために、橋台の胸壁と桁をPC鋼材で連結する落橋防止構造を左岸側及び右岸側の両橋台の胸壁にそれぞれ設置していた。そして、2市は、橋台の胸壁の設計に当たり、地震発生時に、落橋防止構造を通じて両橋台のそれぞれの胸壁に作用する水平力に対して、所要の斜引張鉄筋(注1)を配置すれば、斜引張鉄筋が許容するせん断力(注2)が負担するせん断力(注2)を上回ることから、応力計算上安全であるとし、これにより施工することとしていた。
しかし、橋台の胸壁に配置する斜引張鉄筋について、札幌市は誤った橋台の幅を基に本数を算出したり、鹿児島市は設計計算書とは異なった配置間隔により配筋図を作成したりしていた。
そこで、各橋台の胸壁に実際に配置された斜引張鉄筋を基に改めて応力計算を行ったところ、斜引張鉄筋が許容するせん断力が負担するせん断力を大幅に下回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっておらず、各橋台の胸壁及びこれらと落橋防止構造で連結されている桁等は、いずれも所要の安全度が確保されていない状態になっており、これらに係る交付金相当額計299,291,100円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
札幌市は、同市南区簾舞(みすまい)地先において、橋りょう(橋長85.7m、幅員11.5m~13.7m)を新設していた(以下、当該工事における右岸側の橋台を「A1橋台」、左岸側の橋台を「A2橋台」という。)。
そして、同市は、橋台の胸壁の設計に当たり、地震発生時に、落橋防止構造を通じてA1橋台、A2橋台それぞれの胸壁に作用する水平力に対して、両橋台ともに径13mmの斜引張鉄筋を横方向に50cm間隔で1列当たり40本配置すれば、斜引張鉄筋が許容するせん断力が負担するせん断力を上回ることから、応力計算上安全であるとして設計し、これにより施工することとしていた(参考図参照)。
しかし、同市は、A1橋台の幅は20.4m、A2橋台の幅は13.4mであるのに、斜引張鉄筋の設計に当たり、誤って、両橋台とも幅20.4mに50cm間隔で配置することとしていた。このため、幅13.4mであるA2橋台の胸壁に実際に配置されている横方向1列当たりの斜引張鉄筋は26本となり、上記の40本に比べて大幅に不足している状態となっていた。
そこで、A2橋台の胸壁に実際に配置された横方向1列当たりの斜引張鉄筋26本を基に改めて応力計算を行ったところ、斜引張鉄筋が許容するせん断力は2,174.1kNとなり、負担するせん断力3,040.4kNを大幅に下回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件A2橋台の胸壁は設計が適切でなかったため、同胸壁及びこれと落橋防止構造で連結されている鋼桁等(これらの工事費相当額421,906,000円、交付金相当額253,114,200円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
橋りょう概念図