(2件 不当と認める国庫補助金 36,246,850円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(356) | 鳥取県 | 鳥取県 | 社会資本整備総合交付金 (道路) |
23~26 | 498,359 (498,359) |
348,851 | 43,598 (43,598) |
30,518 |
この交付金事業は、鳥取県が、国道181号岸本バイパス新設事業の一環として、西伯郡伯耆町金廻地内において、道路の盛土により失われる既存の用排水路の機能を確保するなどのために、プレキャストコンクリート製のアーチカルバート(内空断面の幅2.0m、高さ2.5m、延長106.7m。以下「カルバート」という。)の築造、軟弱地盤対策工、盛土工等を実施したものである。
同県は、本件カルバートの基礎地盤については、土質調査等により、表層には軟弱な地層が分布し、その下層には支持地盤となり得る良質な砂れき層が分布していて、その下流側の一部が下方に傾斜し、下流側の区間では軟弱な地層が厚くなっていると推定していた。
このため、同県は、「道路土工 カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「カルバート工指針」という。)に基づき、上記下流側の区間の軟弱な地層については、砕石に置き換える置換工を採用することとし、また、支持地盤が下方に傾斜している区間については、不同沈下を防止するために、砂れき層の一部をかきほぐして1:4の勾配の緩和区間を設けた上で、本件カルバートを施工することとしていた(参考図1参照)。
しかし、設計図面、施工写真等及び現地の状況を確認したところ、本件カルバートの設計は次のとおり適切でなかった。
すなわち、同県は、緩和区間を設けることとしていた区間において、当初良質な砂れき層と推定していた地層の一部が、実際には岩盤層となっていたことなどから、かきほぐすことなく、そのまま支持地盤とすることとして設計を変更して、これにより施工していた。その結果、緩和区間を設けることとしていた区間は最大1:2.7程度の勾配となり、カルバート工指針に基づく緩和区間より急な勾配となっていた(参考図2参照)。このため、緩和区間を設けることとしていた区間を含む下流側の区間(延長計45.4m)において、20mmから109mmの不同沈下が生じ、これにより目地に最大18mmの段差や隙間が生じていたり、コンクリートが剥離して鉄筋等が露出していたりなどしていた。
したがって、本件カルバート工等(工事費相当額計43,598,000円)は、緩和区間を設けることとしていた区間を含む下流側の区間に係る設計が適切でなかったため、目地に段差や隙間が生じていたり、コンクリートが剥離して鉄筋等が露出していたりなどしていて、カルバートの安全性及び水路としての長期的な止水性が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計30,518,600円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、カルバートの設計に当たり、カルバート工指針等の理解が十分でなく、施工に当たり当初の設計と地盤条件が相違していたことに対する施工方法の検討が十分でなかったことなどによると認められる。
当初設計における縦断方向の概念図
実際の施工における縦断方向の概念図
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(357) | 福岡県 | 福岡県 | 社会資本整備総合交付金 (道路) |
25、26 | 41,027 (41,027) |
22,564 | 10,415 (10,415) |
5,728 |
この交付金事業は、福岡県が、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)に基づき宮若市に代わって実施した市道勝野長井鶴線新設事業の一環として、宮若市上大隈地内において、既存の水路の機能を維持するために、アーチカルバート(以下「カルバート」という。)の築造、盛土工等を実施したものである。
このうち、カルバート(内空断面の幅1.50m、高さ1.50m、延長44.0m)は、水路が道路下を横断する箇所に築造するものであり、カルバート上の盛土の土被り厚に応じて、Ⅱ型(外幅1.78m、高さ1.80m、延長計10.0m)、特厚型(外幅1.86m、高さ1.89m、延長計10.0m)及び特々厚型(外幅1.86m、高さ1.92m、延長計24.0m)のプレキャストコンクリート製のカルバートにより施工するものである。また、同県は、カルバートの基礎地盤が軟弱であったことから、基礎地盤を強化して所要の支持力が得られるよう、当初設計において基礎地盤を砕石に置き換える地盤改良を行うこととしていたが、施工に当たり、湧水の排出が困難であったことなどから、基礎地盤をセメントにより固結させ安定させるセメント安定処理による地盤改良(幅2.06m、深さ0.8mから1.8m)に設計変更を行い、カルバートの全延長にわたって施工している。
同県は、カルバートの設計を「道路土工 カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行っており、特厚型及び特々厚型の設計については、構造計算書において、それぞれの最大土被り厚を8.11m及び9.28m、鉛直土圧係数(注1)をそれぞれ1.0としてカルバートに作用する鉛直土圧を計算するなどして、主鉄筋に生ずる引張応力度(注2)(常時(注3))が許容引張応力度(注2)(常時)を下回ること、また、コンクリートに生ずるせん断応力度(注4)(常時)が許容せん断応力度(注4)(常時)を下回ることなどから、いずれも応力計算上安全であるとしていた(参考図参照)。
しかし、指針等によれば、本件カルバートのように、基礎工としてセメント安定処理のような剛性の高い地盤改良をカルバートの外幅程度に行う場合において、最大土被り厚をカルバートの外幅で除した値が1以上となる場合には、鉛直土圧係数を1.0から割り増しして鉛直土圧を計算することとされているのに、同県は、前記の設計変更を行う際に、この割増し計算を行うことなく、当初設計のまま施工していた。
このため、カルバート(延長44.0m)の基礎のうち、地盤改良の幅がカルバートの外幅程度となっている範囲に設置した特厚型(同8.0m)及び特々厚型(同24.0m)の鉛直土圧係数及び鉛直土圧については、それぞれの最大土被り厚8.11m及び9.28mをカルバートの外幅1.86mで除した値が特厚型で4.36、特々厚型で4.99となることから、指針等による正しい鉛直土圧係数は1.6となる。
そこで、正しい鉛直土圧係数1.6により鉛直土圧を求めるなどして主鉄筋及びコンクリートについて改めて応力計算を行ったところ、次のとおり、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
ア 円弧部頂点の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は、特厚型で202.4N/mm2、特々厚型で209.7N/mm2となり、鉄筋の許容引張応力度(常時)160N/mm2をいずれも大幅に上回っていた。
イ 底版隅角部のコンクリートに生ずるせん断応力度(常時)は、特厚型で0.942N/mm2、特々厚型で0.884N/mm2となり、それぞれのコンクリートの許容せん断応力度(常時)0.606N/mm2、0.591N/mm2を大幅に上回っていた。
したがって、カルバートのうち、前記の特厚型(延長8.0m)及び特々厚型(同24.0m)(工事費相当額10,415,000円)は設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額5,728,250円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、カルバートの基礎の地盤改良の設計変更に当たり、これによる鉛直土圧への影響に対する検討が十分でなかったことなどによると認められる。
カルバートの概念図
カルバート(特厚型)断面概念図
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(356)(357)の計 | 539,386 (539,386) |
371,416 | 54,013 (54,013) |
36,246 |