(1件 不当と認める国庫補助金 178,428,000円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(358) | 大阪府 | 東大阪市 | 社会資本整備総合交付金 (下水道) |
24~26 | 555,172 (545,000) |
272,500 | 356,856 (356,856) |
178,428 |
この交付金事業は、東大阪市が、下水道事業の一環として、同市高井田西及び森河内西地内において、雨天時における未処理排水を一時的に貯留することなどを目的として、雨水貯留施設(以下「貯留施設」という。)等を整備したものである。
このうち、貯留施設の整備については、市道渋川放出(しぶかわはなてん)線の車道等を開削し、函渠(かんきょ)(内空断面の幅2.5m、高さ2.6m又は2.9mのもの2連。参考図参照)を延長165m敷設するなどしたもので、その工法の決定に当たっては、原地盤が軟弱地盤であることなどを考慮して、原地盤を開削しながら上部を開放したシールド機を推進させて函渠等を敷設していく工法(以下「開削型シールド工法」という。参考図参照)を採用している。
同市は、貯留施設の設計を、開削型シールド工法による施工を行っている企業で構成される協会が作成した「設計・積算要領(案)」、「技術資料(案)」(以下、これらを合わせて「設計指針」という。)等に基づき実施している。設計指針によれば、開削型シールド工法は、基礎地盤を乱すことなく掘削が行えるため、基礎地盤の強度低下をほとんど招くことがないとされている。このため、開削型シールド工法においては、函渠等敷設後に原地盤と置き換わることになる函渠、埋戻土、裏込注入材等を合計した重量(以下「置換重量」という。)が函渠等敷設前の原地盤重量を下回る場合(以下、置換重量と原地盤重量とを比較する方法を「重量比較法」という。)には、基礎地盤が安定しているため、基礎地盤の支持力に対する検討を行う必要はないとされている。一方、置換重量が原地盤重量を上回る場合には、基礎地盤が安定しないおそれがあるため、基礎地盤の支持力に対する検討を行う必要があるとされており、その際、裏込注入材による周面摩擦力(注1)を考慮して行うこととされている(参考図参照)。
そして、同市は、貯留施設の設計に当たり、本件工事の起点側と終点側の2か所の地質調査結果を基にして重量比較法を用いることとし、置換重量を起点側で668.41kN/m、終点側で672.68kN/mと算出し、それぞれ原地盤重量683.23kN/m、680.62kN/mを下回ることから設計計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、同市は、上記の置換重量の算出に当たり、設計指針において、重量比較法を用いて置換重量を算出する際には考慮することとされていない裏込注入材による周面摩擦力を考慮していたことから、置換重量が過小に算出されていた。
そこで、改めて裏込注入材による周面摩擦力を考慮せずに置換重量を算出したところ、起点側で712.63kN/m、終点側で716.90kN/mとなり、それぞれ前記の原地盤重量683.23kN/m、680.62kN/mを上回っており、基礎地盤の支持力に対する検討を行う必要があった。そして、設計指針等に基づき、基礎地盤の支持力に対する検討を行ったところ、基礎地盤に作用する鉛直荷重(注2)は起点側で133.04kN/m2、終点側で133.78kN/m2となり、それぞれ許容鉛直支持力度(注2)48.08kN/m2、48.32kN/m2を大幅に上回っていて、設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、貯留施設(工事費相当額356,856,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額178,428,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
開削型シールド工法概念図