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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

護岸工の設計が適切でなかったため工事費が不経済となっていたもの[島根県](362)


(1件 不当と認める国庫補助金 3,342,500円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(362) 島根県 島根県 河川総合開発 24、25 125,786
(125,786)
62,893 6,685
(6,685)
3,342

この補助事業は、島根県が、浜田市三階町地内において、平成24、25両年度に浜田ダムの下流に建設中である第二浜田ダムの貯水池内に存する地すべり土塊の対策工として、押え盛土工、護岸工、掘削工等を実施したものである。このうち護岸工は、第二浜田ダムに貯水が開始されるまでの河川の流水や貯水開始後の貯留水の水位変化による影響から、法面を保護するために、ブロックマット護岸(段数5段、敷設面積計5,948m2)及び大型土のう488個の設置等を実施したものである(参考図1参照)。

同県は、当初、護岸工により設置されるブロックマット護岸の最下段における河川の流水の設計流量を流域からの流入量の実績等に基づき4m3/sと算出し、設計流速を2.73m/sと算定していた。そして、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」(社団法人全国防災協会編)によれば、ブロックマット護岸が、河川の流水の作用に対して設計上安全とされる流速(以下「設計対応流速」という。)は4.0m/s以下とされており、上記の設計流速2.73m/sは、設計対応流速を下回っていることなどから、ブロックマット護岸を設置すれば設計上安全であるとし、これにより施工することとしていた。

その後、同県は、ブロックマット護岸の施工中に、第二浜田ダムに貯水が開始されるまでの約3年間については、設計流量に出水時における浜田ダムからの放流水も考慮する必要があるとして、当初の設計流量である4m3/sを建設中の第二浜田ダムの転流工(注)の流下能力と同量の50m3/sに変更していた。そして、同流量における設計流速がブロックマット護岸の設計対応流速4.0m/sを上回ることが予想されたことから、ブロックマット護岸の最下段を保護するために、その前面に大型土のう(高さ1.0m、直径1.1m、重量2t)を1段から5段まで、計488個設置するなどの設計変更を行い、これにより25年5月までに施工していた(参考図2参照)。

しかし、「「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル」(財団法人土木研究センター編)によれば、大型土のうの設計対応流速は4.0m/s以下とされており、ブロックマット護岸の設計対応流速と同じ流速までしか対応できないものであった。そして、設計変更後の設計流速を算定すると4.80m/sとなり、大型土のうの設計対応流速を上回っていることから、大型土のうは、河川の流水に対して安全な構造とはなっておらず、ブロックマット護岸の最下段を保護する機能を有していなかった。現に、25年6月の梅雨前線による降雨に伴う浜田ダムからの放流により大型土のうの施工箇所において流速4.46m/sの流水が生じ、これにより大型土のうの大半が流出していた。

そして、同県は、上記の事態を受けて、25年6月から8月までの間に、流速を低下させるために河床の幅を2.5mから4.0mに拡幅するなどの掘削工等を実施して、ブロックマット護岸の最下段における設計流速を3.83m/sに低下させていた(参考図3参照)。

このようなことから、本件工事は、設計流量を50m3/sに変更した際に、設計流速を低下させるために、河床を拡幅するなどの適切な設計変更を行って施工することとしていれば、大型土のうを設置することなく、ブロックマット護岸の最下段を保護することができたと認められる。

したがって、本件護岸工のうち、大型土のう計488個(工事費相当額6,685,000円)は、設計が適切でなかったため、設置する必要がなかったと認められ、これに係る国庫補助金相当額3,342,500円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、護岸工の設計に当たり、設計流量に基づく流速に対して安全な構造とするための検討が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
転流工  ダム本体工事の施工期間中、河川の流水を一時的に迂回して通水させるための水路トンネルなどをいう。

(参考図1)

地すべり土塊の対策工の全体概要

地すべり土塊の対策工の全体概要の画像

(参考図2)

設計変更後の施工の状況(設計流量50m3/s流下時、設計流速4.80m/s)

設計変更後の施工の状況の画像

(参考図3)

掘削工施工後の状況(設計流量50m3/s流下時、設計流速3.83m/s)

掘削工施工後の状況の画像