(11件 不当と認める国庫補助金 89,373,000円)
住宅・建築物省エネ改修推進事業(平成25年度繰越分を含む。以下「24年度事業」という。)、住宅・建築物省エネ改修等緊急推進事業(25年度繰越分を含む。以下「24年度補正事業」という。)及び住宅・建築物省エネ改修等推進事業(26年度繰越分を含む。以下「25年度事業」という。)は、既存の住宅や建築物の省エネルギー化の推進を図ることを目的として、サッシ、空調設備等を省エネルギー型の設備に取り替えるなどの省エネルギー改修工事等(以下「改修工事」という。)を行う建築主、請負業者等の民間事業者等(以下「事業主体」という。)に対して、改修工事に要する費用(以下「工事費」という。)の3分の1以内の額に、必要となる附帯事務費の額を加えた額を補助するなどのものである(以下、工事費に附帯事務費を加えた費用を「工事費等」という。)。
そして、これらの事業は、国土交通大臣が公募により選定した者(以下「事務事業者」という。)を通じて行われ、事務事業者には株式会社URリンケージが選定されており、同会社は国土交通省から国庫補助金の交付を受けて、これらの事業に係る事業主体からの実績報告書等の審査等の事務を行っている。
住宅・建築物環境対策事業費補助金交付要綱(平成24年国住生第2号等)、「住宅・建築物省CO2先導事業(建築物部門)及び住宅・建築物省エネ改修等推進事業補助金交付規程」等によれば、実績報告書等を提出する際には、請負契約書の写しなどの書類を添付することなどとされている。
本院が67事業主体において会計実地検査を行ったところ、9事業主体(24年度事業3事業主体、24年度補正事業2事業主体、25年度事業6事業主体。2事業主体は重複している。)が実施した計11件(24年度事業3件、24年度補正事業2件、25年度事業6件)の各補助事業(国庫補助金交付額計127,536,000円)において、架空の内容の請負契約書の写しなどの書類を添付して実績報告書等を提出するなどしていて補助の対象とならなかったり、実績報告書の工事費等よりも低額で改修工事を実施していて工事費等を過大に精算したりしていたため、国庫補助金相当額計89,373,000円が過大に精算されるなどしていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、9事業主体において補助事業の適切な実施及び適正な経理に対する認識が著しく欠けていたこと、事務事業者において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったこと、国土交通省において事務事業者に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>架空の内容の請負契約書の写しなどの書類を添付して実績報告書等を提出していて補助の対象とならない事態
株式会社マイホームセンター(大阪市所在)は、同会社が所有するビルに係る断熱サッシ、屋上断熱屋根等を設置するなどの改修工事について、工事費等78,448,950円(国庫補助対象事業費74,721,000円)で関係会社と請負契約を締結して実施したとして、実績報告書を提出し国庫補助金25,015,000円の交付を受けていた。
しかし、改修工事の請負契約の締結状況等をみると、実績報告書等に添付された請負契約書の写しなどは架空の内容のもので、同会社は関係会社と請負契約を締結しておらず、請負代金も支払っていなかった。
そして、実際には、同会社が自ら改修工事を実施しており、実際に要した費用は23,607,802円と実績報告書の工事費等よりも大幅に低額となっていて、同会社は工事費を自ら全く負担することなく全て国庫補助金で賄っていた。
したがって、本件事業は、請負契約が実際には締結されていないにもかかわらず、架空の内容の請負契約書の写しなどの書類を添付して実績報告書等を提出するなどしていて、その実施が著しく適切を欠いており、これに係る国庫補助金25,015,000円は補助の対象とは認められない。
<事例2>実績報告書の工事費等よりも低額で実施していて工事費等を過大に精算していた事態
B(佐賀県鳥栖市在住)は、同人が所有する事務所等の用に供しているビルに係る既存の窓ガラスを複層ガラスに取り替えるなどの改修工事について、工事費等29,816,000円(国庫補助対象事業費28,406,000円)で同人が代表取締役を務める会社と請負契約を締結したとして、実績報告書を提出し国庫補助金9,605,000円の交付を受けていた。
しかし、本件改修工事の請負代金の支払状況等をみると、同人は上記の工事費等に係る請負代金29,816,000円を支払ったとしていたが、上記の会社から18,130,000円が返金されていて実質的な値引きを受けるなどしており、実際に要した費用は11,686,000円と実績報告書の工事費等よりも大幅に低額となっていた。
したがって、適正な工事費等は11,686,000円(国庫補助対象事業費11,013,000円)となり、これに基づき適正な国庫補助金額を算定すると3,724,000円となることから、国庫補助金9,605,000円との差額5,881,000円が過大に精算されていた。
前記の事態を態様別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
ア 架空の内容の請負契約書の写しなどの書類を添付して実績報告書等を提出するなどしていて補助の対象とならない事態 | |||||||||
(363) | 国土交通本省 | 株式会社URリンケージ | 株式会社マイホームセンター | 住宅・建築物省エネ改修推進 | 24、25 | 78,448 (74,721) |
25,015 | 78,448 (74,721) |
25,015 |
(364) | 同 | 同 | 有限会社グリーンエージ | 住宅・建築物省エネ改修等緊急推進 | 25 | 33,408 (31,829) |
10,763 | 33,408 (31,829) |
10,763 |
(365) | 同 | 同 | 株式会社ハウスリフォーム | 住宅・建築物省エネ改修等推進 | 25、26 | 11,340 (10,800) |
3,000 | 11,340 (10,800) |
3,000 |
アの計 | 123,197 (117,350) |
38,778 | 123,197 (117,350) |
38,778 | |||||
イ 実績報告書の工事費等よりも低額で改修工事を実施していて工事費等を過大に精算していた事態 | |||||||||
(366) | 国土交通本省 | 株式会社URリンケージ | 株式会社大藪組 | 住宅・建築物省エネ改修推進 | 24 | 48,825 (36,578) |
12,192 | 25,966 (19,926) |
6,642 |
(367) | 同 | 同 | 株式会社鮮ど市場 | 同 | 25 | 48,683 (46,365) |
15,453 | 7,733 (7,365) |
2,454 |
(368) | 同 | 同 | A | 住宅・建築物省エネ改修等緊急推進 | 25 | 22,420 (21,360) |
7,223 | 14,965 (14,358) |
4,856 |
(369) | 同 | 同 | 有限会社グリーンエージ | 住宅・健築物省エネ改修等推進 | 25 | 88,353 (84,175) |
28,464 | 65,177 (63,132) |
21,349 |
(370) | 同 | 同 | A | 同 | 25 | 20,118 (19,167) |
6,481 | 14,634 (14,183) |
4,796 |
(371) | 同 | 同 | B | 同 | 25 | 29,816 (28,406) |
9,605 | 18,130 (17,393) |
5,881 |
(372) | 同 | 同 | C | 同 | 25 | 19,824 (18,887) |
6,387 | 10,000 (9,594) |
3,245 |
(373) | 同 | 同 | D | 同 | 25 | 9,188 (8,753) |
2,953 | 4,260 (4,077) |
1,372 |
イの計 | 287,228 (263,691) |
88,758 | 160,867 (150,028) |
50,595 | |||||
ア、イの合計 | 410,426 (381,041) |
127,536 | 284,065 (267,378) |
89,373 |