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(2)公共用財産である国有港湾施設について、公共利用の確保等が適切に行われるよう、港湾管理者に対し、使用許可を受けずに専用使用されている施設について是正のための指示をするよう、また、適切に管理するよう周知するよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに地方整備局等及び港湾管理者に対し、処理要領等を周知徹底することなどにより管理及び使用が適切に行われるように検討するよう意見を表示したもの


会計名及び科目
社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)(平成19年度以前は、港湾整備特別会計(港湾整備勘定))(項)港湾事業費 等
部局等
8地方整備局等
事業の根拠
港湾法(昭和25年法律第218号)等
国有港湾施設の管理委託の概要
国が整備するなどした港湾施設のうち公共用財産として区分された施設について、港湾管理者に管理委託するもの
検査の対象とした国有港湾施設
4,182施設
上記施設の管理委託契約書に記載された施設の価額
4兆4018億余円
一部又は全部において公共利用の確保がされていなかったり、野積場として管理使用されていたりしている施設数及び施設の価額
93施設 194億1962万円(背景金額)

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに意見を表示したものの全文】

国有港湾施設の管理及び使用について

(平成27年10月29日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により意見を表示する。

1 国有港湾施設の概要等

(1)国有港湾施設の整備等

貴省は、港湾法(昭和25年法律第218号)等に基づき、国が行う直轄事業、地方公共団体等の港湾管理者が行う補助事業等により港湾施設の整備事業を実施している。

上記により整備された港湾施設のうち、貴省が直轄事業で整備したり、公有水面埋立てにより国に帰属したりなどした港湾施設(以下「国有港湾施設」という。)は、国有財産として国有財産法(昭和23年法律第73号)、港湾法等に基づき管理されることとなっている。

(2)国有港湾施設の区分等

国有財産は、国有財産法第3条において、行政財産と普通財産に分類することとなっており、行政財産は、公用財産、公共用財産、皇室用財産及び森林経営用財産をいい、普通財産は行政財産以外の一切の国有財産をいうこととなっている。また、行政財産のうち公共用財産とは、国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したものとなっている。

国有港湾施設については、「国有港湾施設等処理要領について」(昭和37年蔵管第388号大蔵省管財局長、港管第266号運輸省港湾局長通知。以下「処理要領」という。)等に基づき、公用財産、公共用財産又は普通財産に区分することとなっており、それぞれの概要は表1のとおりとなっている。

表1 公用財産、公共用財産及び普通財産の区分

区分 概要
公用財産 直轄工事により生じた土地又は工作物のうち公用のため国において必要なもの及びその他の国有港湾施設等で国において国の事務又は事業の用に供し又は供するものと決定したもの
公共用財産 次に掲げる港湾施設又は港湾施設になるべき土地若しくは工作物
水域施設(航路、泊地等)、外郭施設(防波堤、防潮堤等)、係留施設(岸壁、物揚場等)、臨港交通施設(道路、橋りょう等)、港湾公害防止施設、廃棄物処理施設、港湾環境整備施設(緑地、広場等)、その他(荷さばき施設等で公共用財産とすることが妥当なものとして財務、国土交通両省において協議決定されたもの)
普通財産 公用財産及び公共用財産以外の一切の国有港湾施設

表1の公共用財産のうち、「その他(荷さばき施設等で公共用財産とすることが妥当なものとして財務、国土交通両省において協議決定されたもの)」は、「荷さばき施設等のうち公共用財産として処理するもの等について」(昭和37年蔵管第388号大蔵省管財局長、港管第266号運輸省港湾局長通知)によれば、荷さばき施設、旅客施設、船舶役務用施設、港湾役務提供用移動施設及び港湾施設用地とされている。このうち、荷さばき施設については、荷さばき貨物(寄託貨物を含まない。)の荷さばき又は仮置きのための施設で、不特定多数の貨主の利用のために開放されており、特定の港湾運送事業者等の専用に供されない荷さばき上屋(付属設備を含む。)や特定の倉庫業者等の野積場等として専用に供されない荷さばき地で港湾管理者が直接管理運営するものなどとなっている。ただし、「国有港湾施設等処理要領等の取扱いについて」(昭和37年港管第267号運輸省港湾局長通知)によれば、荷さばき施設の公共性の判定に当たっては、当該施設の使用の実態に主眼を置き、当該施設の位置、構造等及び当該施設が所在する港湾の港湾施設の状況等を勘案し、港湾機能の増進を図るよう実情に応じ弾力的に行うものとされている。また、荷さばき施設をいったん公共用財産として処理した後も、使用の実態が非公共的になった場合は、事情変更による再処理を行うよう留意することとされている。

(3)国有港湾施設の管理委託等

国有港湾施設は、港湾法第54条等の規定に基づき、公共用財産として区分されたものは、貴省が所管し、港湾管理者へ管理委託等することとなっている。また、普通財産として区分された国有港湾施設は、原則として財務省が所管し、港湾管理者等へ貸付け等することとなっている。

貴省が所管する公共用財産である国有港湾施設を港湾管理者へ管理委託する場合は、港湾法施行令(昭和26年政令第4号)第17条等の規定に基づき、管理委託契約書に国有港湾施設の種類、名称、構造、価額、管理の委託を開始する年月日、その他必要な事項等を定めておかなければならないこととなっている。このうち、施設の価額は、原則として当該施設の建設費等の事業費に相当する額を記載している(以下、管理委託契約書に記載された価額を「記載価額」という。)が、整備した時期が古い施設等については、価額が不明なものもある。

港湾運送業者、倉庫業者等の事業者(以下「港湾事業者」という。)等が港湾管理者が管理する港湾施設を使用する場合、港湾管理者が定める管理条例等に基づき、港湾管理者から一時的な専用使用等の許可(以下「使用許可」という。)を受けて使用することとなっている。また、「国有港湾施設の管理委託の事務取扱について」(昭和34年港管第1135号運輸省港湾局長、大臣官房会計課長通知)等によれば、管理委託された国有港湾施設における恒久的な建築物その他の構築物の設置に関しては、港湾管理者は事前に貴省に協議し、その指導を受けて遺漏のないように努めなければならないこととされている。

そして、処理要領によれば、公共用財産として処理された国有港湾施設であっても、公共用財産に該当しなくなったものは、用途廃止のうえ普通財産として財務省へ引き継ぐものとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴省が港湾管理者に管理委託した国有港湾施設は、公共用財産であることから、公共の用に供すべき財産としてその管理等が適切に行われる必要がある。

そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、公共用財産である国有港湾施設の公共利用の確保がされているかなどに着眼して、9地方整備局等(注1)管内の166港湾に所在する貴省が港湾管理者に管理委託している国有港湾施設4,182施設(記載価額計4兆4018億余円)を対象として、貴省本省及び7地方整備局等(注2)において、管理委託契約書、港湾台帳等の書類、現地の状況を確認するなどのほか、調書の作成及び提出を求めるなどして会計実地検査を行った。

(注1)
9地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局
(注2)
7地方整備局等  関東、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局

(検査の結果)

検査したところ、公共用財産として管理委託されている国有港湾施設の公共利用の確保等について、8地方整備局等(注3)管内の35港湾に所在する国有港湾施設93施設、記載価額計194億1962万余円において、次のような事態が見受けられた(表2参照)。

(注3)
8地方整備局等  関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局

(1)管理委託された国有港湾施設が港湾管理者から使用許可を受けずに港湾事業者等に専用使用されていて公共利用の確保がされていない事態

ア 港湾管理者から使用許可を受けずに無断で専用使用されている事態

港湾事業者等が港湾施設を使用する場合、前記のとおり、港湾管理者から使用許可を受けて使用することとなっている。しかし、管理委託された国有港湾施設のうち3港湾における6施設(記載価額計6億6372万余円)は、港湾事業者等によりその一部が無断で専用使用されていた(表2参照)。

<事例1>

苅田港本港地区の緑地敷(面積31,370.57m2、記載価額6486万余円)は、港湾の環境整備のため、緑地を整備するための敷地として、貴省が港湾管理者である福岡県に管理委託している公共用財産である。当該緑地敷の使用状況等について現地で確認したところ、A港湾事業者が同県から使用許可を受けずに、当該緑地敷の一部を長期間にわたり、砕石等の資材置き場として専用使用していた。

イ 港湾管理者から使用許可を受けた範囲を超えて専用使用されている事態

港湾管理者は、港湾事業者等に対して港湾施設の使用許可をするに当たり、使用する面積等を定めており、使用許可を受けた面積等の範囲内で当該施設を使用することとなっている。しかし、管理委託された国有港湾施設のうち6港湾における20施設(記載価額計54億1198万余円)は、港湾管理者から当該施設又は別の施設の使用許可を受けた港湾事業者等により使用許可を受けた範囲を超えて、当該施設の一部が専用使用されていた(表2参照)。

(2)管理委託された国有港湾施設において、特定の港湾事業者等が恒久的な建築物その他の構築物を設置し、継続して長期間にわたり専用使用していて、公共利用の確保がされていない事態

公共用財産として管理委託された国有港湾施設のうち24港湾における46施設(記載価額計54億9548万余円)では、港湾管理者から使用許可を受けた港湾事業者等が恒久的な建築物その他の構築物を設置し、継続して長期間にわたり専用使用していた(表2参照)。なお、前記のとおり、管理委託された国有港湾施設における恒久的な建築物その他の構築物の設置に関しては、港湾管理者は、事前に貴省に協議し、その指導を受けて遺漏のないように努めなければならないこととなっているが、これらについては、港湾管理者は事前に貴省との協議を行っていなかった。

<事例2>

横須賀港久里浜地区の荷さばき地敷(面積5,203.64m2、記載価額2761万余円)は、貴省が港湾管理者である神奈川県横須賀市に管理委託している公共用財産である。当該施設の使用状況等について現地で確認したところ、当該荷さばき地の一部の使用許可を受けたB港湾事業者が、同市から許可を受けた上で、荷さばき地に事務所(RC造2階建て)を設置し、継続して長期間にわたり専用使用していた。また、同市は事務所の設置の許可に当たり、貴省との協議を行っていなかった。

(3)管理委託された国有港湾施設が公共用財産とされていない野積場として管理又は使用されている事態

処理要領によれば、港湾施設のうち、野積場等の保管施設については、国有港湾施設のうち公共用財産とするものに含まれていない。このため、公共用財産である国有港湾施設の用途を野積場等の保管施設に変更する場合、区分を公共用財産から普通財産に変更等する必要がある。しかし、管理委託された国有港湾施設のうち11港湾における24施設(記載価額計83億2395万余円)は、管理委託契約書における用途が野積場とされていたり、管理委託契約書における用途が荷さばき地等であるのに、実際は港湾管理者が野積場として管理又は使用許可していたりしていた(表2参照)。

<事例3>

伏木富山港富山地区の8号野積場敷地(面積992.85m2、記載価額1102万余円)は、貴省が港湾管理者である富山県に管理委託している国有港湾施設である。当該施設の使用状況等について現地で確認したところ、当該施設は、当初公共用財産である岸壁の一部であったものが、平成19年に、前面の埋立により土地となったことに伴い、野積場の敷地に用途が変更されていた。しかし、公共用財産とされていない野積場の敷地へ用途が変更されたのに、普通財産への区分の変更等は行われず、その後も公共用財産として管理委託され、野積場の敷地として管理及び使用されている事態となっていた。

なお、上記(1)から(3)までの事態について、重複する施設があるため、合計数から重複分を除くと35港湾、93施設(記載価額計194億1962万余円)となる。

表2 (1)から(3)までの各事態に係る港湾数、施設数及び港湾名

検査の結果 港湾数 施設数 港湾名
(1) 管理委託された国有港湾施設が港湾管理者から使用許可を受けずに港湾事業者等に専用使用されていて公共利用の確保がされていない事態 ア 港湾管理者から使用許可を受けずに無断で専用使用されている事態 3 6 釧路港、増毛港、苅田港
イ 港湾管理者から使用許可を受けた範囲を超えて専用使用されている事態 6 20 小樽港、釧路港、紋別港、神戸港、苅田港、大牟田港
(2) 管理委託された国有港湾施設において、特定の港湾事業者等が恒久的な建築物その他の構築物を設置し、継続して長期間にわたり専用使用していて、公共利用の確保がされていない事態 24 46 室蘭港、函館港、釧路港、留萌港、奥尻港、浦河港、焼尻港、天売港、白老港、鹿島港、木更津港、東京港、横浜港、川崎港、横須賀港、伏木富山港、清水港、下関港、岩国港、宇部港、北九州港、苅田港、平良港、中城湾港
(3) 管理委託された国有港湾施設が公共用財産とされていない野積場として管理又は使用されている事態 11 24 伏木富山港、衣浦港、尼崎西宮芦屋港、岩国港、宇部港、苅田港、大牟田港、鹿児島港、大根占港、那覇港、本部港

(是正及び是正改善並びに改善を必要とする事態)

公共用財産として貴省が各港湾管理者に管理委託している国有港湾施設について、使用許可を受けずに専用使用されていて公共利用の確保がされていない事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。また、特定の港湾事業者が長期間にわたり継続的に専用使用していて公共利用の確保がされていない事態、公共用財産とされていない野積場として管理又は使用されている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。

  • ア 港湾管理者において、貴省が管理委託している国有港湾施設は、公共用財産であることから、適切に管理し、港湾事業者等に使用させる場合には、公共利用を確保することが重要であることについての理解が十分でないこと
  • イ 貴省において、地方整備局等及び港湾管理者に対して公共利用の確保等が適切に行われるために必要な処理要領等の周知徹底等が十分でないこと

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置並びに表示する意見

国有港湾施設のうち、公共用財産となる施設については、今後も、港湾法等に基づき、貴省が港湾管理者に管理委託することとなっている。また、港湾施設の整備に伴い、貴省が新たに港湾管理者に公共用財産である国有港湾施設を管理委託することも見込まれる。

ついては、貴省において、これらの公共用財産である国有港湾施設の公共利用の確保等が適切に行われるよう、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに意見を表示する。

  • ア 港湾管理者に対して、使用許可を受けずに専用使用されている施設について是正のために必要な処置を執るよう指示するとともに、公共用財産である国有港湾施設を適切に管理するよう周知すること(会計検査院法第34条による是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めるもの)
  • イ 地方整備局等及び港湾管理者に対して、処理要領等について周知徹底することなどにより、公共用財産である国有港湾施設の管理及び使用が適切に行われるように検討すること(同法第36条による意見を表示するもの)