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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)国庫補助事業等により実施される工事等において、工事等の実施に直接必要となるものではない保管管理システムのデータ登録に係る費用について、国庫補助金等の対象とならないことを周知することにより、国庫補助金等の交付が適切に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)地域連携道路事業費 等
(平成25年度は、社会資本整備事業特別会計 (治水勘定) (項)河川整備事業費) (道路整備勘定)(項)道路交通安全対策事業費 等
東日本大震災復興特別会計 (組織)国土交通本省
(項)東日本大震災復興事業費
部局等
2県
補助の根拠
河川法(昭和39年法律第167号)、道路法(昭和27年法律第180号)等
補助事業者
(事業主体)
2県
保管管理システムの概要
発注者が電子化された図面等の成果品の検索及び再利用を行うことなどを目的としてデータを登録しておくもの
保管管理費を国庫補助金等の対象経費として計上していた契約件数及びこれらの金額
3,281件 5812万円(平成25、26両年度)
上記に対する国庫補助金等相当額
2986万円

1 保管管理システムの概要等

(1)保管管理システムの概要

国土交通省は、平成7年度以降、公共事業の施工等の各プロセスで発生する書類、図面等の各種情報を電子化し、効率的に交換・共有・連携することなどを目的として、電子入札システム、情報共有システム、保管管理システム等から構成される公共事業支援統合情報システム(以下「CALS/EC」という。)を導入するための取組を行っている。そして、同省は、13年6月に地方公共団体等への導入推進を促すことを目的として、「CALS/EC 地方展開アクションプログラム」を発表していて、都道府県は、電子県庁の実現等の一環として、CALS/ECに対する取組を行っている。

CALS/ECのシステムのうち、保管管理システムは、工事契約又は調査、測量、設計、試験等の業務契約に伴い電子納品された図面等の成果品の中で、利用頻度の高い構造物の諸元等のデータを登録しておくことにより、発注者が電子化された図面等の成果品の検索及び再利用を行うことなどを目的としたものである。

(2)国庫補助金等の交付対象となる経費

国土交通省は、国庫補助金等の交付について、「国土交通省所管補助金等交付規則」(平成12年総理府・建設省令第9号。以下「規則」という。)等に基づき実施している。

そして、都道府県が国庫補助金等の交付申請を行う際の交付対象となる経費(以下「対象経費」という。)は、工事では、規則に基づき定められた「補助事業等に係る工事設計書の作成について」(昭和34年建設省会発第107号)等において示されており、工事の実施に必要な費用となっている。また、業務では、都道府県が、国土交通省が定めた「設計業務等標準積算基準」等を参考に定めた積算基準等において示されており、業務の実施に必要な費用となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

都道府県が国庫補助事業等により工事又は業務を実施するに当たっては、CALS/ECが導入されていて、CALS/ECを使用する際に発生する費用が国庫補助金等の交付対象となっている場合がある。

そこで、本院は、合規性等の観点から、CALS/ECのうち保管管理システムが導入されている場合に、国庫補助事業等により実施される工事又は業務について、工事等の実施に直接必要な費用が国庫補助金等の対象経費として交付申請され、国庫補助金等の交付が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、27道府県(注)が25、26両年度に国庫補助事業等により実施した河川事業、道路事業等に係る契約を対象に、27道府県において、保管管理システムのデータ登録に係る費用について、関係書類を確認するなどして、会計実地検査を行った。

(注)
27道府県  北海道、京都府、秋田、山形、茨城、群馬、埼玉、千葉、新潟、富山、福井、愛知、三重、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、長崎、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

(検査の結果)

検査したところ、27道府県において保管管理システムを導入しているのは、26年4月1日現在、22府県となっていた。このうち、茨城、千葉両県は、工事契約又は業務契約において得た電子成果品のデータについて、県の外郭団体である公社や技術センター(以下「公社等」という。)と協定を締結しておくことにより、保管管理システムに登録させていた(以下、データを保管管理システムに登録する作業を「登録作業」という。)。そして、両県は、登録作業の際に発生する費用(以下「保管管理費」という。)については、個々の契約の請負業者が公社等に支払うこととしていたことから、茨城県では特許使用料に準ずるなどとして、千葉県では電子データとその保管管理は不可分なものであることから品質管理又は出来形管理のためなどに必要な費用として、国庫補助金等の対象経費として交付申請していた(両県における25、26両年度の合計は契約件数3,281件、対象経費として計上していた保管管理費の金額5812万円、国庫補助金等相当額2986万余円)。

しかし、登録作業については、県職員が当該契約終了後に新たな工事又は業務を実施するに当たり、各種説明資料を作成するなどの際に電子データを再利用等するために行うものであることから、両県が国庫補助金等の対象経費として交付申請していた保管管理費は、工事等の実施に直接必要となる費用に該当するものではない。

なお、両県を除く20府県では、職員自らが登録作業を行っていたり、外注により登録作業を行っている場合でも保管管理費については県費で負担していたりなどしていて、国庫補助金等の対象経費として交付申請していなかった。

このように、事業主体において、工事等の実施に直接必要となるものではない保管管理費を国庫補助金等の対象経費として交付申請していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、両県において、国庫補助事業等により工事又は業務を実施するに当たり、国庫補助金等の対象となる経費は工事等の実施に直接必要となる費用であるということに対する理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、27年9月に都道府県に対して事務連絡を発して、保管管理費については、国庫補助事業等の実施に直接必要な費用でないことから、国庫補助金等の対象にならないことを周知して、国庫補助金等の交付が適切に行われるよう処置を講じた。