技術研究本部(平成27年10月1日以降は防衛装備庁。以下「技本」という。)は、各種装備品等の研究開発に必要な科学技術計算等を行う「技本研究開発支援システム」(以下「技本CS」という。)について、毎年度、「防衛省の情報保証に関する訓令」(平成19年防衛省訓令第160号)等に基づき、監査業者に請け負わせるなどしてシステム監査を実施している(図の①参照)。そして、技本は、26年度のシステム監査に当たり技術的な支援が必要であるとして、26年12月に技本CSのシステム監査に対応するための支援業務を、公募による随意契約により契約額5,918,400円で新日鉄住金ソリューションズ株式会社に請け負わせている(以下、この請負契約を「監査対応契約」という。図の②参照。)。
監査対応契約の業務内容は、技本CSに関する各種の設定情報等を提示するなどして監査業者が行うヒアリングに対応したり、監査対象となるサーバ等の機器のデータについてバックアップ作業を行ったり、システム動作スケジュールを確認したり、ぜい弱性に関する監査による技本CSへの影響を防止する措置を講じたりすることなどとなっている。
また、技本は、技本CSの運用管理に当たり、毎年度、技本CSの安定稼動に必要な支援を通年で受けるための契約(以下「運用管理支援契約」という。)を締結しており、26年度については、26年4月に新日鉄住金ソリューションズ株式会社と契約している(図の③参照)。
本院は、経済性等の観点から、監査対応契約の業務内容について必要性の検討が十分に行われているかなどに着眼して、技本において、監査対応契約を対象に、契約書、仕様書等の内容を確認するとともに、監査対応契約以外の技本CSの運用管理に係る契約の業務内容を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
前記のとおり、技本は、技本CSの運用管理に当たり、毎年度、運用管理支援契約を締結していた。
そして、運用管理支援契約の業務内容は、26年3月に技本CSが更新されるまでは利用者からの問合せ対応や端末機器の出納管理等となっていたが、技本CSの更新に合わせて大幅な見直しが行われたことにより、技本が26年4月に新日鉄住金ソリューションズ株式会社と締結した26年度の運用管理支援契約(図の③参照)の業務内容には、技本CSに関する各種の設定情報等の管理、データ等のバックアップ作業、システム動作スケジュールの管理・調整等の業務が追加されるなどしていた。
しかし、技本は、前記のとおり26年12月に新日鉄住金ソリューションズ株式会社と監査対応契約(図の②参照)を締結するに当たって、26年度の運用管理支援契約の業務内容を十分考慮することなく、監査対応契約の業務内容を定めて契約していた。
このため、26年度におけるシステム監査の対応内容を確認したところ、監査対応契約の業務のうち、ぜい弱性に関する監査による技本CSへの影響を防止する措置として新たに監査専用サーバを設定して調整するなどした業務を除いた業務は、運用管理支援契約に基づき、技本CSに関する各種の設定情報等を監査業者に提示したり、バックアップ作業を行ったり、システム動作スケジュールを確認したりすることなどにより、十分に対応が可能な業務と認められた。
したがって、監査対応契約において、新たに監査専用サーバの設定等を行う業務を除く業務については、監査対応契約の業務内容に含める必要がなく、これらを除いて契約額を修正計算すると987,449円となり、本件契約額5,918,400円はこれに比べて約490万円割高となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、技本において、技本CSの更新時に運用管理支援契約の業務内容を大幅に見直したのに、監査対応契約で行う業務の必要性の検討が十分でなかったことなどによると認められる。