東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)は、平成25、26両年度に、「キッド・ステイ妙典保育園(仮称)建設に伴う基盤整備その他工事」を見積合わせ競争契約により、株式会社岩城組と契約額128,307,758円で締結して施行している。
本件工事は、地下鉄東西線妙典駅付近の高架橋下に保育園を建設するための基盤整備工事として、舗装撤去工、高架橋補修工等を行うものである。このうち、舗装撤去工は、保育園建設予定地である既存の駐車場のアスファルト舗装を撤去するものであり、高架橋補修工は、舗装撤去工と同じ場所において、保育園の建設に先立ち、高架橋の下面にコンクリートの劣化を防止するための塗料をあらかじめ塗布するものである。
東京メトロは、本件工事の予定価格の積算に当たり、東京メトロで定めた土木工事積算基準等に基づき、同基準等に示された各種算定式等を電子データ化した積算システム(以下「積算システム」という。)を利用して、舗装撤去工については、労務費、機械器具経費等を積み上げて算出し、高架橋補修工については、労務費、材料費等を積み上げて算出していた。このうち、舗装撤去工については、高架橋下という狭あいな施工条件であることから、バケット容量(山積)が0.13m3の小型のバックホウを使用することとして積算していた。また、高架橋補修工については、使用する塗料等に係る材料費の単価が市販の積算参考資料に掲載されていないことから、業者2社から徴した見積りや同種の工事を参考にするなどして単価を決定し、材料費を積算することとしていた。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、東京メトロ本社において、契約書、予定価格の積算書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、東京メトロは、舗装撤去工の機械器具経費については、バケット容量(山積)が0.13m3の小型のバックホウの機械損料を計上すべきところ、積算システムにおける機械器具の選択を誤ったため、より高額なバケット容量(山積)が1.4m3の大型のバックホウの機械損料を計上するなどしていた。また、高架橋補修工の材料費については、積算システムに単価を入力する際に、前記の同種の工事を参考にするなどした単価よりも誤って高い金額を入力していた。
したがって、正しい機械器具経費及び材料費を用いるなどして本件工事費を修正計算すると、他の項目において積算過小となっていた費用等を考慮しても、諸経費等を含めた工事費の総額は119,019,580円となることから、本件契約額128,307,758円はこれに比べて約920万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、東京メトロにおいて、本件工事の予定価格の積算に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。