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ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設の運転業務契約における標準分析作業に係る人件費について、作業内容等を反映した月額単価を用いるなどして予定価格の積算を適切に行うよう是正改善の処置を求めたもの


科目
ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理費
部局等
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(平成26年12月23日以前は日本環境安全事業株式会社)
契約名
運転業務委託契約11契約
契約の概要
ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設においてポリ塩化ビフェニル廃棄物の無害化処理に必要な操業管理を行わせるもの
契約の相手方
5会社
契約
平成25年4月、26年4月 随意契約
契約額
162億1675万余円(平成25、26両年度)
標準分析作業に係る人件費の積算額
10億7833万余円(平成25、26両年度)
低減できた積算額
3億4870万円(平成25、26両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設の運転業務契約の予定価格の積算について

(平成27年10月15日付け 中間貯蔵・環境安全事業株式会社代表取締役社長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 事業の概要

(1) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理事業

貴会社(平成26年12月23日以前は日本環境安全事業株式会社。以下同じ。)は、環境事業団の解散に伴い、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成15年法律第44号)に基づき、16年4月1日に全額政府出資の特殊会社として設立され、同事業団の業務のうち、ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)、PCBを含む油(以下「PCB油」という。)、PCBが封入された容器等のうち廃棄物となったものなど(以下、これらを合わせて「PCB廃棄物」という。)の無害化処理に係る事業(以下「処理事業」という。)を承継している。

「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年法律第65号。以下「特措法」という。)によれば、その事業活動に伴ってPCB廃棄物を保管する事業者(以下「保管事業者」という。)は、PCB廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならないとされている。

そして、貴会社は、特措法及び特措法の規定により環境省が策定した「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」(以下「基本計画」という。)等に基づいて、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理に資するために、地域ごとに拠点となる処理施設として北海道PCB廃棄物処理施設等5処理施設(注1)を設置し、保管事業者からの委託を受けて、PCB廃棄物の種類ごとに定めた処理料金を徴収して、5処理施設において処理を行っており、26年度の貴会社における処理事業に係る売上高は636億5593万余円となっている。

(注1)
5処理施設  北海道、東京、豊田、大阪、北九州各PCB廃棄物処理施設

(2)処理施設の運転業務契約の概要

5処理施設は、環境事業団又は貴会社が、技術提案書を提出した者の中から契約の相手方として選定した者(以下「プラントメーカー」という。)5者とそれぞれ随意契約を締結して整備したもので、処理施設ごとに各プラントメーカーが開発した技術等が活用されている。そして、処理事業は、周辺住民等から安全性等への配慮が強く求められていることから、処理施設の操業管理には各処理施設に導入された特殊な設備の操作等に精通し、かつ、高度な専門性等を有した技術者等が必要なものである。そこで、貴会社は、16年4月以降、処理事業の実施に当たり、各プラントメーカーが設立した各処理施設においてPCB廃棄物の無害化処理に必要な操業管理等の業務(以下「運転業務」という。)を行うための専門会社(以下「運転会社」という。)5会社との間で、運転業務に係る契約(以下「運転業務契約」という。)をそれぞれ締結している。

運転業務の各工程は、PCB廃棄物からPCB油を抜油する作業、抜油済みのPCB廃棄物を解体及び洗浄する作業、PCB油等を無害化処理する作業、無害化等について分析等を行う作業等で構成されている。このうち、無害化等について分析等を行う作業には、無害化処理したPCB油等が所定の分析項目について基準値以下になっているか分析機器で計測する作業(以下「標準分析作業」といい、標準分析作業に従事する作業員を「標準分析作業員」という。)、無害化等について最終確認や判定を行う作業等がある。

(3)運転業務契約の予定価格の積算

貴会社は、運転業務契約の予定価格の積算に当たり、人件費については、厚生労働省が作成している賃金構造基本統計調査報告(以下「賃金センサス」という。)を用いて算定している。賃金センサスには、産業や企業規模等の種別ごとに所定内給与額(注2)等が一覧表として示されている。

運転業務は、前記のとおり、特殊な設備の操作等に精通し、かつ、高度な専門性等を有した技術者等が必要であることなどから、貴会社は、運転業務の全ての工程に係る作業員の大半がプラントメーカーからの出向等により運転会社の正社員等となることを前提としており、また、プラントメーカーの賃金センサスにおける企業規模の区分が「大企業」(従業員数1000人以上)に該当することなどを考慮して、「製造業を営む大企業」の給与額の表を用いることとしている。そして、貴会社は、上記の表の中から、各工程の作業で必要となる作業員の各職責に応じて、16年程度の経験年数の区分等を選定し、各区分の所定内給与額等に福利厚生費等を加算するなどして月額単価を算定している。

(注2)
所定内給与額  事業所の就業規則等で定められた給与に関する支給条件及び算定方法によって支給された基本給及び超過労働給与額を含まない諸手当

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴会社は、25年9月までにPCB廃棄物の処理体制を全て整えて、基本計画に従って処理事業を進めており、5処理施設における運転業務契約の契約金額は毎年度多額に上っている。一方、貴会社の決算状況をみると、23年度から当期純損益は黒字に転換したものの、より一層の経費の削減が求められている。

そこで、本院は、経済性等の観点から、運転業務契約の予定価格の積算が、実際の作業内容等を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、25、26両年度に締結した運転業務契約計11件(契約金額計162億1675万余円)を対象に、貴会社本社において契約書、仕様書、予定価格調書等の関係書類を確認するとともに、5処理施設において、運転業務の各工程における作業の実態を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、貴会社は、運転業務契約における標準分析作業に係る人件費の積算については、他の工程に係る人件費と同様に、「製造業を営む大企業」の給与額の表の中から、16年程度の経験年数の区分を選定するなどして、月額単価を418,000円から665,000円までと算定し、5処理施設で25年度計5億0158万余円、26年度計5億7675万余円、合計10億7833万余円と積算していた。

しかし、次のことから、作業内容や作業員に求められる能力等を適切に反映した積算とはなっていなかった。

(1) 仕様書で求める作業内容や作業員の能力等について

貴会社は、標準分析作業については、仕様書において、日本工業規格等に準拠した方法で行うこととしており、標準分析作業の具体的な手順を定めた作業標準書等を各運転会社に作成させることとしていた。そして、作業標準書等において、標準分析作業員には、市販されている器具等を用いて、作業標準書等に定めた手順で標準分析作業を行わせることとし、原則として、他の作業を行わせないこととしていた。また、標準分析作業員には、2日間の講義の受講等により取得できる資格を指定しているのみであり、仕様書において、他の工程に従事する作業員に必要としているような特殊な設備の操作や高度な専門性等は求めていなかった。

(2) 実際の作業内容や作業員に求められる能力等について

貴会社は、標準分析作業員については、環境分析等で一般的に使用されたり、簡易に操作できるように改良等されたりなどした分析機器等により標準分析作業を実施させている状況であった。そして、標準分析作業員に対して、標準分析作業以外の作業は行わせてはおらず、また、前記のとおり、標準分析作業の内容は他の工程において必要とされる特殊な設備の操作や高度な専門性等を要しないものであることから、標準分析作業員については、プラントメーカーからの出向者等を必要とせず、運転会社が直接採用等しており、その経験年数が6年以下の者が8割を超えていた。そして、運転会社の従業員数は5会社とも約150人から約270人までとなっており、賃金センサスにおける企業規模の区分は、プラントメーカーが該当する「大企業」(従業員数1000人以上)ではなく、「中企業」(従業員数100人以上999人以下)に該当するものであった。

したがって、運転業務契約における標準分析作業に係る人件費については、他の工程とは異なる作業内容や作業員に求められる能力等を反映して算定した月額単価を用いて積算すべきであると認められる。

上記により、実際の作業内容等を反映して、運転会社の企業規模である「製造業を営む中企業」の給与額の表の中から、6年程度の経験年数の区分を選定するなどして、月額単価を329,000円から495,000円までと算定し、運転業務契約における標準分析作業に係る人件費の積算額を修正計算すると、前記の積算額は25年度計3億5333万余円、26年度計3億7621万余円、合計7億2954万余円となり、25年度約1億4820万円、26年度約2億0050万円、計約3億4870万円低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

運転業務契約における標準分析作業に係る人件費の積算に当たり、作業内容や作業員に求められる能力等を反映することなく、他の工程に従事する作業員に必要とされる能力等を基に経験年数の区分を選定するなどして月額単価を算定している事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴会社において、運転業務契約における標準分析作業に係る人件費の積算に当たり、実際の作業内容等を反映した月額単価を算定するなど、予定価格の積算を適切に行うための検討が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

貴会社は、PCB廃棄物の処理について、基本計画に従って処理事業を行うために、今後も引き続き運転業務契約を締結していくこととしており、これに係る契約金額は多額に上るものと見込まれる。

ついては、貴会社において、運転業務契約における標準分析作業に係る人件費について、実際の作業内容等を反映して算定した月額単価を用いるなどして予定価格の積算を適切に行うよう是正改善の処置を求める。