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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 東日本高速道路株式会社、第9 中日本高速道路株式会社、第10 西日本高速道路株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)―(3)アスファルト舗装工事における路盤材の選定に当たり、鉄鋼スラグ及び溶融スラグに係る事前確認を適切に行うなどして環境にも配慮した経済的な設計を行うよう改善させたもの


会社名
(1)東日本高速道路株式会社
(2)中日本高速道路株式会社
(3)西日本高速道路株式会社
科目
(1)~(3)仕掛道路資産、管理費用
部局等
(1)本社、4支社
(2)本社、4支社
(3)本社、4支社
舗装工事の概要
高速道路の建設工事又は保全工事の一環として、アスファルト舗装を新設したり、打ち換えたりなどする工事
環境にも配慮した経済的な設計を行っていなかった舗装工事に係る契約金額
(1)602億4303万余円(平成23年度〜26年度)
(2)787億2234万余円(平成21年度〜26年度)
(3)931億0011万余円(平成21年度〜26年度)
上記の舗装工事における路盤材の材料費に係る積算額
(1)38億8641万円(背景金額)
(2)37億8079万円(背景金額)
(3)49億4332万円(背景金額)

1 アスファルト舗装の概要

(1)アスファルト舗装の概要

東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、高速道路の建設工事又は保全工事の一環として、アスファルト舗装を新設したり、打ち換えたりなどする工事(以下、これらを合わせて「舗装工事」という。)を実施している。

アスファルト舗装は、表層、基層及び路盤を路床の上に構築するものであり、このうち路盤は、通常、上層路盤と下層路盤とに分けて施工されている。

(2)路盤に使用する材料

舗装設計施工指針(社団法人日本道路協会編)及び舗装施工便覧(社団法人日本道路協会編。以下、これらを合わせて「指針等」という。)によれば、アスファルト舗装における材料の選定に当たっては、設計条件、施工条件等から要求される性能に適合する品質であることを配合設計や適切な試験(以下、これらを「配合試験」という。)により確認することなどとされている。そして、アスファルト舗装の路盤に使用する材料(以下「路盤材」という。)には、新品の砕石及び砂(以下「新品の骨材」という。)等のほか、鉄鋼スラグ(注1)、溶融スラグ(注2)等の建設産業以外から発生する再生資材の積極的な活用も検討することとされている。

(注1)
鉄鋼スラグ  鉄鋼製造工程で副産物として生成される固化物
(注2)
溶融スラグ  ごみ、焼却灰等を溶融固化する施設において、ごみなどの容積を減容等する際に生成されるガラス質の固化物

(3)路盤の設計

3会社は、アスファルト舗装の路盤の設計に当たり、3会社が制定した「設計要領第一集舗装編」によれば、路盤材の設計については、現場条件に合わせて、安定性、耐久性、経済性等が得られるように材料の選定を行うほか、鉄鋼スラグを使用する場合については指針等を参照すること、溶融スラグ等については諸条件を十分考慮した上で材料の選定に当たることとされている。

また、鉄鋼スラグ及び溶融スラグは、一般に新品の骨材と比較して安価なものとなっているが、製鉄所又は溶融固化施設(以下、これらを合わせて「スラグ生成プラント」という。)が施工箇所の近隣に所在していない場合には、別途に運搬費等を考慮する必要があることから、必ずしも経済的とならないこともある。

さらに、鉄鋼スラグ及び溶融スラグについては、スラグ生成プラントごとに粒度、品質等が異なることから、砕石、砂等のいずれの骨材に代えて活用できるかなどを確認する必要がある。

(4)建設産業以外から発生する再生資材の活用に関する国の取組

国は、近年の最終処分場の不足や天然資源の枯渇等の諸問題に対応するために、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)等の制定をはじめ様々な取組を進めてきている。国土交通省は、平成13年に各地方整備局、旧日本道路公団等に対して「舗装の構造に関する技術基準について」(平成13年国土交通省道路局長等通達。以下「舗装基準通達」という。)を発して、建設産業以外から発生する再生資材の活用等リサイクルの推進に努めることとしている。

そして、鉄鋼スラグについては昭和54年に、また、溶融スラグについては平成18年に、それぞれ道路用の路盤材等として活用できる品質、試験方法等に関する日本工業規格(以下「JIS」という。)が制定されている。さらに、環境省は、溶融スラグについてJISが制定されたことなどを受けて、19年に都道府県及び政令市に対して「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用の実施の促進について」(平成19年環境省廃棄物・リサイクル対策部長通知)を発して、溶融スラグの活用を促進するよう助言している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

3会社は、毎年度多数の舗装工事を実施しており、路盤材に係る材料費は多額に上っている。また、3会社は、事業活動により発生する副産物を有効活用するなど環境への負荷を低減する面から3R(注3)の推進に貢献するとしていることから、路盤材については、新品の骨材等に加えて鉄鋼スラグ及び溶融スラグを積極的に活用することが、3Rの推進や経費の節減に寄与することになる。

そこで、本院は、経済性等の観点から、舗装基準通達等の趣旨を踏まえて、路盤材の選定に当たり環境にも配慮した経済的な設計を行っているかなどに着眼して、25年度又は26年度に舗装工事で路盤を施工した契約(契約年度は、21年度から26年度まで)、東会社87件(契約金額計1044億5445万余円)、中会社59件(同計964億5723万余円)、西会社109件(同計1219億6068万余円)、3会社計255件(同計3228億7238万余円)を対象として、3会社の本社及び各支社において、契約書、設計書等の書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(注3)
3R  循環型社会をつくっていく上で基本的な考え方。リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)の頭文字

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

3会社は、前記255件のうち240件(東会社84件、中会社59件、西会社97件)においては、路盤材の選定に当たり、鉄鋼スラグ又は溶融スラグについて過去の使用実績がほとんどなく、また、調達可能な数量が不明確であることなどから、スラグ生成プラントの所在地やそこで生成されるスラグの品質、価格(1m3当たりの単価。以下同じ。)等をあらかじめ把握するなどの調査確認(以下、この調査確認を「事前確認」という。)を行わないまま、新品の骨材を使用することとしていた。そこで、前記の240件について、スラグ生成プラントの所在地、スラグの品質、調達可能性等を調査したところ、188件(東会社54件、中会社51件、西会社83件)においては、スラグ生成プラントが近隣に所在しており、このうち183件(東会社52件(契約金額計602億4303万余円、路盤材計419,302.6m3、路盤材の材料費に係る積算額計38億8641万余円)、中会社51件(同計787億2234万余円、同計565,279.0m3、同計37億8079万余円)、西会社80件(同計931億0011万余円、同計425,451.6m3、同計49億4332万余円)、同合計2320億6549万余円、同合計1,410,033.2m3、同合計126億1052万余円)については、必ずしも必要とする全ての数量を調達できるとは限らないものの、JISに適合する品質の鉄鋼スラグ又は溶融スラグの活用が可能であった。

さらに、25、26両年度における新品の骨材、鉄鋼スラグ及び溶融スラグの価格を調査したところ、新品の砕石の価格(運搬費を含む。)は1,700円から6,000円まで、新品の砂の価格(運搬費を含む。)は1,960円から5,600円までとなっていたのに対して、鉄鋼スラグの価格(運搬費を含む。)は1,400円から4,600円まで、溶融スラグの運搬費を含まない価格は16円から1,922円までとなっており、運搬費を考慮しても、鉄鋼スラグや溶融スラグは新品の骨材よりおおむね安価となっていた。

<事例>

東会社関東支社さいたま工事事務所は、平成25年度から27年度まで、首都圏中央連絡自動車道建設工事の一環として、高速道路の下層路盤等に係る舗装工事を実施している。同事務所は、この工事の路盤材の選定に当たり、地域の条件にかかわらず新品の骨材を使用することとしていたため、新品の砕石(19,938.0m3、運搬費を含む価格2,650円)及び新品の砂(3,518.5m3、同3,750円)として設計していた。

しかし、上記工事の施工箇所には近隣に溶融固化施設が所在し、同施設ではJISに適合し新品の砂に代えて活用できる品質の溶融スラグを25年度に2,803.2m3生成していた。そして、運搬費を含まない溶融スラグの価格160円に施工箇所までの運搬費1,590円を加えても1,750円となることから、溶融スラグは新品の砂より安価となっていた。

このように、路盤材の選定に当たり、大半の契約において鉄鋼スラグ及び溶融スラグに係る事前確認を行わなかったため、新品の骨材との経済比較や配合試験を行わないまま、新品の骨材を使用することとしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、3会社において、路盤材の選定に当たり、鉄鋼スラグ及び溶融スラグに係る事前確認を行って、これらを積極的に活用することにより、環境にも配慮した経済的な設計を行うことに対する認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、27年8月及び9月に関係部署へ通知を発して、路盤材の選定に当たり、鉄鋼スラグ及び溶融スラグについて事前確認を適切に行い、新品の骨材との経済比較や配合試験の結果に基づいて環境にも配慮した経済的な設計を行うこととして、同年9月からこれを適用することとする処置を講じた。