独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人国立青少年教育振興機構法(平成11年法律第167号)に基づき、青少年教育の振興及び健全な青少年の育成を図ることを目的として、子どもの体験活動、読書活動等の普及啓発を図る事業を実施しており、その一環として、絵本作家等による講演会や海外の子どもとの交流活動等の各種イベントを実施している。そして、機構は、イベントの企画、実施及び運営を行うために、実施内容の決定、実施会場の選定及び確保、講演者等の選定及び連絡調整、移動手段や宿泊場所の確保、実施内容に係る機構との連絡調整等の業務(以下「企画運営等業務」という。)を外部に委託している。
機構は、企画運営等業務については、独立行政法人国立青少年教育振興機構会計規程(平成18年規程第3―1号。以下「会計規程」という。)等に基づき、総合評価落札方式による一般競争契約又は公募による随意契約により委託契約(以下「企画運営等業務契約」という。)を締結している。
機構は、企画運営等業務契約を締結するに当たり、契約ごとに、イベントの趣旨、受託者が実施する業務の概要等を定めた仕様書を作成し、入札希望者等に交付して、当該仕様書に基づいて、実施内容等を記載した事業計画書及び入札書を提出させるなどした上で、受託者を決定している。
受託者は、契約書において、事業計画書に基づいて企画運営等業務を実施することとなっている。機構は、上記の仕様書において、「指導業務」「会場設営業務」「旅行宿泊業務」等の業務の区分(以下「費目」という。)を示しており、契約を締結した時点で、費目ごとに見込まれる業務の内容及びそれに要する経費の内訳(以下「見込額」という。)を記載した書類(以下「経費内訳書」といい、事業計画書と合わせて「事業計画書等」という。)を、さらに、企画運営等業務が完了した後に、業務の実施結果やこれに係る経費の額を費目ごとに記載した報告書(以下「完了報告書」という。)を、それぞれ受託者に提出させている。
また、機構は、企画運営等業務が完了した後の委託費の精算について、会計規程等においては特段の定めを設けておらず、仕様書において、上記費目のうち、精算を行う費目(以下「精算対象費目」という。)をあらかじめ指定し、精算対象費目については、完了報告書に記載された業務の実施に要した経費の額(以下「実支出額」という。)を確認した上で、精算を行わない費目(以下「精算対象外費目」という。)については、完了報告書に記載された金額が経費内訳書に記載された見込額と同額となっていることを確認した上で、これらの合計額と契約金額とのいずれか低い額を受託者に支払っている。
そして、機構が平成23年度から25年度までの間に締結した企画運営等業務契約は、3会社等との間で計10件あり、委託費の支払額は計4億6805万余円となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、企画運営等業務契約において、委託費の支払額は実際に行われた業務に見合ったものとなっているかなどに着眼して、前記の10契約を対象として、機構本部において、契約書、事業計画書、完了報告書等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
前記のとおり、機構は、各契約の仕様書において、精算対象費目を指定していた。
そこで、10契約における精算対象費目の指定状況についてみると、次のとおりとなっていた。
3契約(委託費の支払額計6689万余円、精算対象費目計36費目)
5契約(同計3億4667万余円、精算対象費目計19費目及び精算対象外費目計67費目)
2契約(同計5448万余円、精算対象外費目計28費目)
イの5契約においては、交通費、宿泊費等を計上する「旅行宿泊業務」が共通して精算対象費目に指定されていたが、それ以外の費目は、契約ごとに精算対象費目に指定されていたり指定されていなかったりしていた。
前記のとおり、事業計画書等に記載された業務の内容(以下「事業計画書等の内容」という。)は、受託者が契約を締結した時点で見込んだものであることから、これらは業務の進捗に伴って変更される場合がある。
そこで、10契約に係る企画運営等業務の実施状況を確認したところ、受託者は、機構と協議した上で、イベントの実施会場や講演者のほか、会場設営の作業内容、イベントに携わるスタッフの人数等を変更するなどしていて、いずれの契約においても、業務の進捗に伴って事業計画書等の内容を一部変更するなどしていた。
一方、機構は、(1)イの5契約の大半の費目及び(1)ウの2契約の全ての費目を精算対象費目に指定しておらず、これらの費目については精算を行っていなかった。
そして、これらの7契約(委託費の支払額計4億0116万余円、このうち精算対象外費目に係る委託費の支払額計2億5341万余円)のうち、受託者が保管していた証拠書類により実支出額の全額を確認することができた3契約(委託費の支払額計1億0127万余円、このうち精算対象外費目に係る委託費の支払額計8851万余円)についてみたところ、いずれの契約においても、精算対象外費目に係る実支出額の合計額が見込額の合計額を下回っていた。
また、残りの4契約(委託費の支払額計2億9988万余円、このうち精算対象外費目に係る委託費の支払額計1億6489万余円)については、受託者において精算対象外費目に係る証拠書類の一部が保管されていなかったため、実支出額の全額を確認することはできなかったが、完了報告書等によれば、上記の3契約と同様に、事業計画書等の内容を一部変更するなどしていた。
したがって、これらの7契約においては、全ての費目について実支出額を確認した上で、委託費の精算を行うこととする必要があったと認められた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
機構は、平成23年度に、絵本作家による講演会等を全国4か所で実施するために、親子で楽しむ読書と体験の連携事業に係る企画運営等業務を契約金額3926万余円で委託している。そして、機構は、仕様書において示した全ての費目を精算対象費目に指定しておらず、業務が完了した後に、契約金額と同額を受託者に支払っていた。
しかし、本件契約に係る企画運営等業務の実施状況を確認したところ、会場設営の作業が不要になったり、講演者への謝礼等の金額が見込額を下回ったりなどしていたため、実支出額は3314万余円となっており、これに基づき精算を行ったとすれば、委託費の支払額を611万余円節減できたと認められた。
(1)及び(2)のとおり、企画運営等業務契約において、事業計画書等の内容が業務の進捗に伴って変更されるなどしていたのに、実支出額に基づき委託費の精算を行うこととしていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた委託費の支払額)
前記の7契約のうち、実支出額の全額を確認することができた3契約(委託費の支払額計1億0127万余円)について、精算対象外費目を含めた全ての費目を対象として実支出額に基づき精算を行ったとすると支払額は8638万余円となり、上記の1億0127万余円と比べて、支払額を1489万余円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、企画運営等業務については、事業計画書等の内容が業務の進捗に伴って変更されているのに、機構において、実支出額に基づき委託費の精算を行うことについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、26年度に締結した企画運営等業務契約において全ての費目を精算対象費目とし、さらに、27年5月に企画運営等業務の委託に係る事務処理要領を制定して、27年度以降に締結する企画運営等業務契約については、全ての費目について実支出額を確認した上で、当該金額が契約金額を下回る場合には実支出額に基づき委託費の精算を適切に行うこととする処置を講じた。