独立行政法人農畜産業振興機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)に基づき、農畜産物の安定的な供給を図るための生産者の経営安定対策、農畜産物の需給調整・価格安定対策等に関する事業を実施している。
機構は、上記の事業を実施するために必要な農畜産物の生産及び流通に関する調査、情報収集等のほか、人事管理及び給与支給関係業務等の内部管理業務の効率化等を目的として、各種の情報システムを構築している。そして、情報システムの開発、改修等の業務(以下「開発業務」という。)を行わせるために、一般競争契約により、平成25、26両年度に「人事・給与システム開発委託業務」等21件の請負契約を締結している。
予定価格の算定、契約の締結等の契約に関する諸手続については、各事業等の担当部が、独立行政法人農畜産業振興機構会計規程(平成15年15農畜機第10号)等に基づき行うこととなっている。そして、情報システムの開発業務に係る予定価格については、仕様書等に基づいて算定することとなっており、当該仕様書の作成に当たっては、事前に、情報システムの開発・利用に係る調整等を所掌し、情報システムについて専門的な知見を有する企画調整部システム調整課(以下「システム調整課」という。)から助言を受けることとなっている。
一方、予定価格の算定に当たっては、仕様書の作成の場合とは異なり、システム調整課が関与することにはなっていない。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、情報システムの開発業務に係る請負契約の予定価格の算定が適切に行われているかなどに着眼して、前記21件の契約(契約金額計1億3419万余円)を対象として、機構本部において、契約書、仕様書、予定価格調書等の書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、検査の対象とした前記21件の契約のうち3件の契約に係る予定価格の算定について、次のような事態が見受けられた。
内部管理業務の担当部は、機構が25年度に締結した「人事・給与システム開発委託業務」に係る契約について、現行のシステムの開発業務に要した費用を基に算出した開発費用に、契約締結後に仕様の変更等が生じた場合に要する経費を見込んで、当該開発費用の額に20%を乗じて得た額を加えるなどして、予定価格を5451万余円と算定していた。
しかし、契約締結後に仕様の変更等が生じた場合には変更契約又は別途契約によって対応するものであり、当該仕様の変更等に伴う業務は仕様書に定められていないことから、これに係る経費を予定価格に計上する必要はなかったと認められた。なお、本件契約の締結後、実際に仕様の変更等は生じていなかった。
調査情報業務の担当部は、機構が26年度に締結した「平成26年度畜産物新データベースシステムの改修業務」及び「貿易統計システムの改修」に係る2件の契約について、市販の積算参考資料に掲載されているソフトウェア開発業務の技術者の人件費単価等を基に開発費用を算出し、これに当該開発費用の額に10%を乗じて得た額を諸経費として加えるなどして、予定価格を計1446万余円と算定していた。
しかし、上記の積算参考資料に掲載されている同技術者の人件費単価には諸経費が含まれていることから、別途諸経費を算出してこれを予定価格に計上する必要はなかったと認められた。
このように、情報システムの開発業務に係る請負契約の予定価格の算定に当たり、仕様書に定められていない業務に係る経費を計上していたり、諸経費が含まれている人件費単価等を基に別途算出した諸経費を計上していたりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(低減できた積算額)
前記3契約の予定価格の積算額計6897万余円について、仕様書に定められていない業務に係る経費等を計上しないこととして修正計算すると、計5857万余円となり、積算額を約1040万円低減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、機構において、各担当部に対し、情報システムの開発業務に係る請負契約の予定価格について統一的な算定方法を具体的に示していなかったこと、当該予定価格の算定に当たり情報システムの開発・利用に係る調整等を所掌するシステム調整課との連携を図ることについて周知していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、27年8月に各担当部に対して事務連絡を発して、情報システムの開発業務に係る請負契約の予定価格について統一的な算定方法を具体的に示すとともに、当該予定価格の算定に当たってはシステム調整課から助言を受けるなどして相互の連携を図るよう周知する処置を講じた。