ページトップ
  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第36 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

助成事業における技術研究組合の取扱いを明確にすることにより、技術研究組合に適用される助成率が適切なものとなるよう改善させたもの


科目
(一般勘定)業務経費
部局等
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(平成27年4月1日以降は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)本部
助成の根拠
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号。平成27年4月1日以降は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法)
助成事業者
(事業主体)
1技術研究組合
助成事業
次世代戦略技術実用化開発助成事業
助成事業の概要
産業技術の実用化開発を行う者に対して、当該実用化開発に必要な費用の一部を助成するもの
助成金交付額
1億8650万余円(平成22、23両年度)
「大企業」の助成率を適用した場合の助成金額
1億3987万余円(平成22、23両年度)
上記の助成率を適用した場合に生ずる助成金交付額の開差額
4662万円

1 助成事業の概要

(1)助成事業の概要

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(平成27年4月1日以降は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。以下「機構」という。)は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号。27年4月1日以降は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法)に基づき、産業技術の向上及びその企業化の促進を図り、もって内外の経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保並びに経済及び産業の発展に資することを目的として研究開発等に係る業務を行っている。

機構は、研究開発等に係る業務のうち研究開発要素が高い業務については委託事業で、実用化開発要素が高い業務については助成事業で実施しており、22年度から26年度までの間に、次世代戦略技術実用化開発助成事業等12事業を助成事業として実施している。また、機構はこれらの助成事業の対象を、民間企業のほか、技術研究組合法(昭和36年法律第81号)に基づいて複数の民間企業等が試験研究を協同して実施するために設立した技術研究組合とするなどしている。

(2)助成事業における中小企業の取扱い

中小企業憲章(平成22年6月18日閣議決定)によれば、経済活力の源泉である中小企業が、その力を思う存分に発揮できるよう支援するとして、「資金、人材、海外展開力などの経営資源の確保を支援し、中小企業の持てる力の発揮を促す。その際、経営資源の確保が特に困難であることの多い小規模企業に配意する」などとされている。そして、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)においては、製造業の場合で資本金3億円以下又は従業員300人以下に該当する者が「中小企業者」とされている。

機構は、中小企業の経営資源のぜい弱性に配慮して、前記12事業のうち7事業について、中小企業の助成率を大企業よりも優遇したり、助成対象事業者を中小企業に限定したりしている。

(3)次世代戦略技術実用化開発助成事業の概要

機構は、優れた先端技術シーズ等を実用化に効率的に結実させることを通じて、我が国技術水準の向上及びイノベーションの促進を図るために、優れた技術の実用化開発に対して助成を行うことを目的として、次世代戦略技術実用化開発助成事業を実施している。この助成事業は、イノベーション実用化開発費助成金交付規程(平成18年度規程第56号)等に基づき、機構が産業技術の実用化開発を行う者に対して実用化開発に必要な費用の一部を助成する事業である。22年3月に機構の研究開発推進部が制定した「平成22年度イノベーション推進事業公募要領」(以下「公募要領」という。)によれば、助成対象事業者の要件は、日本において登記されている民間企業、技術研究組合等とされ、助成率については、公募要領において「2/3以内(ただし、大企業は1/2以内)」と規定されているが、技術研究組合の取扱いについては他の助成事業とは異なり特に規定されていない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、技術研究組合に適用される助成率が適切なものとなっているかなどに着眼して、中小企業と大企業とで助成率に差を設けている次世代戦略技術実用化開発助成事業のうち、技術研究組合が助成対象事業者となっている1件(助成金1億8650万余円)を対象として、機構本部において、交付申請書、実績報告書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

機構は、22年5月に、次世代LIC総合技術研究組合(以下「LIC組合」という。)から次世代戦略技術実用化開発助成事業の申請を受けて、次世代リチウムイオンキャパシタの実用化開発に要した費用計2億7975万余円(22年度1億4546万余円、23年度1億3428万余円)に対して、助成金計1億8650万余円(22年度9697万余円、23年度8952万余円)を交付していた。

LIC組合が機構に提出した交付申請書によれば、LIC組合の構成員は、A社(資本金233億余円、従業員数2,470人)、B社(資本金549億余円、従業員数1,099人)及びC社(資本金641億余円、従業員数2,952人)の3社であり、いずれも中小企業基本法に定められている中小企業者に該当しない者であった。そして、機構は、LIC組合は研究のために設立された技術研究組合であり事業を営む民間企業ではないため、公募要領上の「大企業」には該当しないとして助成率を3分の2以内と決定し、これを適用して助成金を算定していた。

しかし、機構が中小企業の経営資源のぜい弱性に着目して助成率に差を設けている趣旨や機構が実施している他の助成事業における技術研究組合の取扱いを勘案すると、大企業のみの3社で構成されているLIC組合には、公募要領上の「大企業」の助成率2分の1以内を適用して助成金を算定すべきであったと認められた。

このように、大企業から構成されている技術研究組合について、民間企業ではないことをもって大企業でないとして、より高い助成率を適用していた事態は、助成率に差を設けた趣旨等からみて適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(助成金交付額の開差額)

LIC組合に対する助成金交付額を「大企業」の助成率2分の1を適用して算定すると、前記の助成金の額1億8650万余円は1億3987万余円となり、4662万余円の開差額が生ずることとなる。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、公募要領の記述が十分でなく、大企業から構成される技術研究組合の取扱いが明確なものになっていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、27年8月に関係部局に対して事務連絡を発して、技術研究組合のうちその構成員の3分の2以上が中小企業者である技術研究組合については中小企業者として取り扱うことなどを明確にして機構内で統一を図るとともに、今後の助成事業等の執行に当たり公募要領等に反映させることとする処置を講じた。