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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第42 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国家備蓄施設における電気需給契約の契約電力について、各施設の過去の最大需要電力を考慮するなどした具体的な算定方法に係る統一的な基準を定めることなどにより、電気需給契約がより経済的なものとなるよう改善させたもの


科目
(石油天然ガス等勘定)受託経費
部局等
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
契約の概要
我が国又は特定の地域において石油の供給が不足する事態に備えて、国の委託を受けている国家備蓄施設の管理を行うために必要となる電気の需給契約
契約の相手方
東北電力株式会社等7社
電気料金の支払額
10備蓄基地 14億2786万余円(平成25年5月~27年4月)
上記のうち節減できた電気料金
5備蓄基地 4252万円

1 国家備蓄施設における電気需給契約の概要

(1)国家備蓄施設の概要

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」という。)は、石油の備蓄の確保等に関する法律(昭和50年法律第96号)及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(平成14年法律第94号)に基づき、我が国への石油の供給が不足する事態及び我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態に備えて、国の委託を受けて、国家備蓄石油及び国家備蓄施設(以下「備蓄基地」という。)を管理している。

備蓄基地は、国家備蓄石油の備蓄に必要な貯蔵施設(土地を含む。)であって国が所有するものをいい、全国に15備蓄基地(注1)が設置されている。

機構は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構業務方法書(平成16年資第2号)に基づき、上記15備蓄基地の管理等に係る業務を更に委託することとして、備蓄基地の操業を目的として設立された会社等(以下「操業会社」という。)に当該業務を委託している。

(注1)
15備蓄基地  むつ小川原、苫小牧東部、白島、福井、上五島、秋田、志布志、串木野、久慈、菊間各国家石油備蓄基地、七尾、福島、神栖、倉敷、波方各国家石油ガス備蓄基地

(2)備蓄基地における電気需給契約の概要

機構は、前記15備蓄基地のうち、無人の離島に所在するなどしていて、電気事業者から直接電気の供給を受けていない白島、福島、神栖、倉敷及び波方の計5備蓄基地を除く10備蓄基地(注2)について、東北電力株式会社等7電気事業者と電気需給契約を締結しており、平成25年5月から27年4月までの間に電気料金計14億2786万余円を支払っている。当該電気料金は、機構が国との間で毎年度締結している備蓄基地の管理に関する契約に基づき、国が負担することとなっている。

電気需給契約は、契約電力が500kW以上になると見込まれる場合には、一般的に、契約期間を1年として電気を使用する者が電気事業者と協議により契約電力を定めている。そして、その電気料金は、契約電力に契約電力1kW当たりの単価を乗じて算出する基本料金と、電力使用量に電力使用量1kWh当たりの単価を乗じて算出する従量料金等から成っている。そして、契約電力を超過して電力を使用した場合には、契約電力を超過した電力に契約電力1kW当たりの単価を乗じた金額の1.5倍に相当する契約超過金を支払うことなどとなっている。

このため、機構は、備蓄基地において過去に使用した最大需要電力(注3)と備蓄基地の運用に必要と見込まれる最大需要電力を操業会社から報告させて契約電力を算定し、原則として一般競争により各電気事業者と電気需給契約を締結している。

(注2)
10備蓄基地  むつ小川原、苫小牧東部、福井、上五島、秋田、志布志、串木野、久慈、菊間、七尾各備蓄基地
(注3)
最大需要電力  30分間の平均需要電力の最大値

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、適切な契約電力により契約を締結しているかに着眼して、前記10備蓄基地の電気需給契約を対象に、機構本部において、契約書、仕様書等の関係書類、契約電力の算定方法等を確認するとともに、1備蓄基地において、備蓄基地の運用に必要と見込まれる最大需要電力の算定方法等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

前記の10備蓄基地における24年度から26年度までの間に締結した電気需給契約について、契約電力と過去の最大需要電力を検査したところ、苫小牧東部等5備蓄基地では、のとおり、契約電力と過去3年間の最大需要電力との差が171kWから464kW(契約電力に対する割合で11.0%から23.2%)と大きくかい離していた。

表 5備蓄基地における契約電力と過去3年間の最大需要電力との比較

備蓄基地名 契約電力
(A)
過去3年間の最大需要電力
(B)
契約電力と過去3年間の最大需要電力の差
(C=A-B)
割合
(C/A)
  kW kW kW
苫小牧東部 2,000 1,536 464 23.2
福井 1,700 1,309 391 23.0
志布志 1,600 1,350 250 15.6
串木野 1,300 1,128 172 13.2
菊間 1,550 1,379 171 11.0

機構は、上記の5備蓄基地の契約電力の算定に当たり、最大需要電力が最も大きくなると見込まれるのが、緊急時に原油を払い出す際に送油ポンプを用いる場合、又は、火災が発生した際に消火用ポンプを用いる場合のいずれかであることから、操業会社から報告を受けた平常時に使用する機器の消費電力と送油ポンプ又は消火用ポンプのうち消費電力が大きい方の定格消費電力とを合算した値を、そのまま契約電力とするなどしていた。

しかし、備蓄基地においては、昭和58年9月の石油の貯蔵の開始以降、緊急時における原油の払出し及び火災(以下「緊急払出し等」という。)が発生していないことを踏まえれば、特に、送油ポンプ及び消火用ポンプの使用電力が大きい備蓄基地においては、緊急払出し等を見込んだ最大需要電力を契約電力とすると、過去の最大需要電力を契約電力とする場合と比べて相当高額な基本料金を支払うことになる。そのため、契約に当たって、緊急払出し等の場合に契約電力を超過した際には契約超過金を当該月分支払うことなどを前提として、過去の最大需要電力を考慮した契約電力とすれば、緊急時の対応に問題を生じることなく基本料金を節減することができることになる。

現に、機構は、久慈備蓄基地について、緊急払出し等の際に必要となると見込まれる電力が4,500kWであったが、契約電力を超過して電力を使用した場合でも備蓄基地の管理等に支障を来さないように電気の供給が行われることを確認した上で、過去の最大需要電力である1,462kWを考慮して契約電力を1,500kWとしていた。

したがって、上記のとおり、機構において、上記5備蓄基地の契約電力の算定に当たり、緊急払出し等の発生頻度を踏まえることなく、緊急払出し等における送油ポンプ又は消火用ポンプの使用を前提とした契約電力で電気需給契約を締結していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた基本料金)

電気需給契約における基本料金について、緊急払出し等の発生頻度を踏まえた上で、各備蓄基地の過去の最大需要電力を考慮するなどして算定した契約電力とすると、前記の5備蓄基地における平成25年5月から27年4月までに支払った基本料金は、計4252万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、契約電力の算定に当たり、緊急払出し等の発生頻度を踏まえた上で、各備蓄基地の過去の最大需要電力を考慮するなどして、電気需給契約をより経済的なものとするための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は27年8月に、各備蓄基地における電気需給契約がより経済的なものとなるよう、各備蓄基地の過去の最大需要電力を考慮するなどした具体的な契約電力の算定方法に係る統一的な基準を定めて、今後締結する電気需給契約から適用することとする処置を講じた。