独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人労働者健康福祉機構法(平成14年法律第171号)に基づき、労働者の福祉の増進に寄与することを目的として、療養施設、リハビリテーション施設等の設置及び運営に係る業務を行っている。
上記施設等のうち、脊髄脊椎疾患患者を対象とした専門病院である総合せき損センター(以下「せき損センター」という。)は、平成25年7月に、カルテを電子化するなどのために、病院情報システム一式の購入契約及び同システムのソフトウェアに係る保守契約(以下、これらの契約を合わせて「システム契約」という。)を計203,700,000円で締結している。
機構における物品の購入等に係る会計事務手続については、独立行政法人労働者健康福祉機構会計規程(平成16年規程第8号。以下「会計規程」という。)等に定められており、契約その他支出の原因となる行為を行う場合には、機構の理事長から示達される予算実施計画の範囲内において行うこととなっている。
本院は、合規性等の観点から、契約に係る会計経理が会計規程等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、システム契約を対象として、機構本部及びせき損センターにおいて、契約書、仕様書、検査調書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、せき損センターは、25年6月に機構本部から独立行政法人労働者健康福祉機構施設整備費補助金を財源とした203,974,000円の予算実施計画の示達を受けて、同年7月1日付けでシステム契約を前記のとおり計203,700,000円で締結して、同月31日に納品書を契約相手方から受領し、同日に検査を行い、8月30日に契約金額全額を支払っていた。
しかし、実際には、せき損センターは、上記の予算実施計画の示達を受けていないにもかかわらず、24年8月にシステム契約の発注を行っていた。そして、25年2月に物品の大半を納入させるとともに、納入を受けた機器等の内容、同システムの保守の開始、契約代金の支払方法等を確認する書面を契約相手方に交付するなどしていた。
したがって、上記のように予算実施計画の示達を受けることなく発注を行うなどしていることは会計規程に違反していて不適正な会計経理となっており、前記の契約金額203,700,000円は不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、せき損センターにおいて会計規程を遵守することの認識が欠けていたこと、機構本部においてせき損センターにおける事業の実施状況の把握及びせき損センターに対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。